第26話 告発の報い
第26話 告発の報い
■ヨコイ・サトシ 視点
警視庁の取調室。記者としての誇りと責任を背負ってきたヨコイ・サトシは、今、自らの“報道”が招いた帰結と向き合っていた。
「あなたは、自分たちの報道が、記者家族を標的にされることを予測できなかったと?」
刑事の問いに、ヨコイは言葉を選んで答えた。
「予測はしていました。報道に“代償”はつきものです。私は、それを“覚悟”として受け入れていました」
それは言い訳ではなかった。だが、理解される言葉でもなかった。
■カナエ(記者の娘) 視点
病院の一室。点滴を受けながら横たわる少女カナエが、母の手を握っていた。
「……ママ、ユナちゃんの言ってたこと、少しだけわかる気がする。……でも、誰も止めてくれなかったよね。パパのしてたこと」
母は何も言えず、ただ涙を流していた。
■ユナ(過去映像) 視点
画面には、かつてアップされた動画の一節が再生されていた。
《記者の身内が死亡したから? かわいそう? ……でも、私の父がメディアに殺されたとき、誰が悲しんでくれた?》
《“悲しむ権利”なんて、ないよ。あんたらが壊した側なら、壊される覚悟をしなよ》
それは怒りではなく、“返答”だった。問われることのなかった“痛み”への、唯一の報い。
■SNS反応
【報道に責任はないのか?】【これが現代の“報い”か】【殺すつもりじゃなくても、殺せる時代】
だが同時に、反発の声も大きかった。
【ユナもまた加害者じゃないか】【これ以上の晒しに意味はあるのか】【壊し合いを止める勇気が必要だ】
■レイナ 視点
その夜、レイナはユナのノートを開いた。
——「報道が壊したもの。その全てを、壊し返すことはできない」
——「でも、“終わりにする責任”は誰かが取らなきゃいけない。それが、私の役割なら、受け入れる」
レイナはノートを閉じ、ユナの代わりに小さく囁いた。
「もう、十分だよ……ユナ」
■告発の余波
翌日、ブンゲイ社には複数の調査委員会が入り、過去の報道の“編集プロセス”が再検証され始めた。
同時に、情報バラエティのコメンテーターたちが“ユナの死”に触れる場面が増え、かつての無関心が“言及”へと変わっていった。
■ヒラタ・ジュンペイ 視点(沈黙のコメンテーター)
テレビを見つめながら、ヒラタはぽつりとつぶやいた。
「……言葉で殺したなら、言葉で生き返らせられるのか。そう訊かれてる気がするな、あの子に」
そして、ペンを手に取った。
■動画配信:YUNA/REVENGE“最終章”
自動投稿された最終動画の最後に、こう記されていた。
——「報道が命を奪ったのなら、その命で社会を照らしてやる。それが、私にできる“最後の復讐”だから」
■ナレーション
正義を語る者たちが、黙り込むとき。
その沈黙は、ひとつの命によって、ようやく“意味”を持ち始める。
報いは、もはや“復讐”ではなく——“問い”そのものとなって、社会に突きつけられた。
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