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第25話 正義の終焉

第25話 正義の終焉

■ユナ 視点


午後六時。都内弁護士会館の会見室に、静寂が張り詰めていた。


正面に設けられた卓上マイク。その前に立つタカタ・ユナの姿は、静かで、しかし凛としていた。隣には弁護士・ウメダ・ショウ。背後にはレイナ、そしてモリヤマ・ケンジの姿もあった。


報道関係者、弁護士、カメラマン。会見場の空気は、過去最高の緊張感に包まれていた。


ユナはゆっくりと深呼吸をし、口を開いた。


「私は今日、ここで“報道の正義”という言葉に、終止符を打ちにきました」


■記者会見の発言


「報道は、本来“事実を伝える手段”です。でも、現実では“数字のための見出し”に堕ちました。父の命は、その犠牲になった」


「私は、記者に代わって責任を取らせたかった。沈黙したコメンテーターたちに“沈黙で返す”ことを選びました」


「それが、“復讐”であり、“再定義された正義”だと思っていた」


彼女は一瞬、視線を伏せ、続けた。


「でも、わかりました。正義という名の下で、私は誰かを“裁く人間”になっていた」


「“報道”が父を壊したように、“私”もまた、誰かを壊していた」


「だから、私はここで“正義”をやめます」


■報道陣のざわめき


場内に軽いどよめきが走る。その中で、ユナは静かに文書を差し出した。


タイトル:《報道倫理に対する市民告発と、今後の行動終結宣言》


その内容は、衝撃的だった。


——「私は、報道によって人生を壊された一市民です」


——「同じだけの苦しみを報道側に返すことが、私にできる唯一の抵抗でした」


——「しかし私は、壊された側としての責任を、“報道とは違う方法”で取ります」


——「正義の終焉は、私の終焉であっていい」


■控室での対話


会見を終え、控室に戻ったユナに、レイナが涙を浮かべてすがりつく。


「やめて……もう十分やった。正義も、復讐も、もうあなたの中にしか残ってないよ。だから、お願いだから“生きて”よ……!」


ウメダも、歯を食いしばって言う。


「ユナさん、ここまでやった。“生きて”責任を取り続ける。それが、本当の意味の“正義”だ」


だが、ユナはかすかに首を振る。


「違う……私がこのまま生きてしまったら、“壊された側”の痛みを誰も理解しない」


■レイナ 視点


夜の帰り道、レイナはユナのノートを見返していた。


——「父が“逃げる自由”をくれたのなら、私は“責任を負う覚悟”でその遺志を継ぐ」


——「正義とは、誰かを救う力であってほしい。でも今の私は、“壊す力”としてしか使えていない」


——「ならば、その矛盾ごと、私が終わらせる」


レイナは、ノートを抱き締めるように閉じた。


「正義を“終わらせる”って……その中に、自分まで入れる必要はなかったのに」


■動画配信:《正義を終わらせに来ました》


タイトルに込められた意味。それは、ユナ自身の命で終結させるという決意だった。


配信は、録画されていたものだった。


「私はこれまで、“同じ痛み”を“返す”ことで、正義を語ってきました」


「でもそれは、“裁く側に回った”だけだった」


「だから、ここでやめます。“正義を掲げて人を裁く”ことを。私が、終わります」


■ユナ 最後の独白


ラスト、ユナは静かにノートにペンを走らせる。


——「正義は、終わるべきです。でなければ、人は永遠に人を殺し続けるから」


——「沈黙もまた、言葉です。だから私は、黙って終わる」


画面はフェードアウトし、最後に黒い画面に文字が浮かぶ。


《すべての“報道の犠牲者”に捧ぐ》



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