第八十一話 発見
新選組にて、安藤 ジュンヤとリュウスケが一番隊に入り 侍デビューをする話と、俺の全人生とうしての宝物の手掛かりを見つけます。
時代は幕末、200年以上続いた徳川幕府も 外圧に屈し、武士の世も刀の時代も終わろうとしていた。そんな時代に京の都で、歴史と伝統を大事にし、 尚且つ 新しいモノをも生み出し、新しい時代にも対応しようとする侍の集団がいた。その名も、新選組。そんな新選組のトップに当たる 局長に、いつの世にあっても なんだかんだ活躍する、皆さんもご存知であろう中年の漢 北野 武。新選組のNo.2 副長に、歳の頃 14~15歳とと思われる俺 土方歳三。一番隊 隊長に、歳の頃 19~20歳ぐらいと思われる、もはや無敵の三段突きの名手 斎藤一。一番隊 隊員に、歳の頃 俺と同じく14~15歳と思われる、天才 沖田総司。同じく 最近、一番隊 隊員になったのが、歳の頃 11~12歳の新選組の元気印 安藤 ジュンヤに、歳の頃10~11歳の口の聞けない リュウスケ。四番隊 隊長に、『天然理心流』の師範で、侍というよりも 武士を絵に描いたような中年の漢 近藤勇。四番隊のNo.2 副隊長に、いつも無口だが よく死人の出る四番隊において、斬られる前に斬るを実践してくれて、ちゃんと生きて帰って来てくれる 歳の頃20歳ぐらいの野口君。新選組 最後の隊、主に後方支援を目的とする 末広がりの八番隊に、槍の使い手で 沖田を大切にして見守り続けている井上源三郎。同じく八番隊に、源爺と縁があり 新選組の唯一の女性、美貌と才能を併せ持つ 安藤 ユウコさん。他に新選組では学問も教えていて、その先生として北野 勝君が頑張っている。
新選組 一番隊に、安藤 ジュンヤに リュウスケが加わり、一番隊の闘い方や仕事の引き継ぎをする。
ただし、安藤 ジュンヤは「一番隊、一番隊!一番強い一番隊!」と浮かれているので、俺は しっかり引き継ぎをしなければと、気を引き締める。
「じゃ斎藤さん。いつも通り、斎藤さんは左側 俺は右側で、沖田は前か後ろで、安藤 ジュンヤとリュウスケに、一番隊がどう戦ってきたか、手本を見せよう。引き継ぎが終わりしだい、俺は一番隊を抜けて 門番と副長職、それから銃火砲部門の強化をするよ」と俺。
「かしこまりました。ジュンヤにリュウスケ、斬らなきゃ 斬られるからな」と斎藤さん。
「はい!」と安藤 ジュンヤ。リュウスケも、頷く。
俺が右側 斎藤さんが左側 沖田が自由で、ジュンヤにリュウスケは後方に居る。京の都にあった斎藤屋敷は無くなったが、京の都の人々にとって、新選組は好意的に受け止められているので、何かあれば 俺や斎藤さん、そして北野局長の耳にも、情報は入る。なので、もたらされた情報が本物で、正確かを確認し あとは斬るか斬らないか?現場の各自の判断で決めている。
見習いを卒業し、一番隊入りしたジュンヤにリュウスケは、初の侍デビューなので、本日は後ろから攻め込まれないよう注意しながら、俺や斎藤さんがどう戦っているかを、しっかり見学だ。
一番隊は、基本 自由なので、敵のアジトに踏み込む際も、俺だったら「この戸板、建て付けが悪りぃな」と戸板を外し、戸板で暴れてから 刀を抜く。
斎藤さんは、無言で入り「御用改めかもしれないぞ」と言いながら、居合いと三段突きで、一気に相手を屠る。
この様に、一番隊は 四番隊と違って、形式張って「御用改めである」と名乗ってから、踏み込みはしない。そんな事を一番隊がしていたら、いくら一番隊が一番強くても、いくら命があっても足りない。
そして新選組が、賊や敵を斬ったあとは、相手がどこの藩の者か分かれば、敵や賊が生きてようが死んでようが脱藩浪士であろうが、その者の藩邸へ行き 藩邸の門番と門を前蹴りで壊し、命代金を支払わせる。沖田は藩邸の蔵へ忍び込んで、値打ちのある物を手にいれるし、斎藤さんは情報を仕入れる。
俺だけは「死にたい順番に、かかって来い」と、無駄に暴れている。こういうところも、鬼の副長と呼ばれるようになった要因だ。その他、死体の処理だけは、処分代としてお金を出し、会津藩に処理してもらっている。
一番隊として いつもの様に暴れても、闘っても 安藤 ジュンヤもリュウスケも、目をキラキラさせるだけで、問題もなさそうだし大丈夫そうだ。さすが、実戦でこそ力を発揮する『天然理心流』の道場で、鍛え抜かれただけの事はある。
本日の一番隊としての任務は終わったので、俺は立ち寄りたかった場所、確かめたかっことを確かめる事にした。そこは、新選組の月に一度の顔見せ行進の時も通るし、一番隊としても何度も通った民家の前で、いつも小さな少女が1人でいる。
「じゃあ、ジュンヤもリュウスケも 充分に闘えるし、一番隊に入っても 強さにも問題ないので、一番隊としては充分だ。あとジュンヤに、俺からお願いなんだけど、前方の民家に 1人で佇んでいる女の子がいるだろ?」と俺。
「はい」と安藤 ジュンヤ。
「その女の子の名前が、カナではないか確かめてくれないか?俺や斎藤さんは、今日は散々 人を斬り、返り血も浴び 汚れてしまって、この世で最も純粋な少女に、こんな状態では話しかけてはいけない。名前を聞き出せればいいのだけど、出来るか ジュンヤ?」と俺。
「出来ますよ、そのくらい。僕はもう見習いを卒業して、一番強い 一番隊に入った安藤 ジュンヤなんですからね。カナって名前か、聞いてくるだけなんて 使いっ走りのうちにも入りません。それでは、聞きに行ってきます」と安藤 ジュンヤ。まだ あどけない少女の元へと行く。
「トシさん、哀姫ですかね?」と斎藤さん。
「だろうな。どうりで、江戸中 探し回っても 居ないわけだ。京に居たのか」と俺。
すると、その少女の元から 笑顔の安藤 ジュンヤが、戻って来た。
「トシさーん!トシさんの言ってたとうり、カナという名前でした。漢字は、知らないそうです」とジュンヤ。
「出来した、ジュンヤ!本日の一番手柄だ。あのカナっていう名の子が、俺の宝物なんだ。今日のところは、返り血で汚れちまって穢れちまって帰るしかないけど、俺の宝物が見つかるなんて、大収穫だ。ありがとうな、安藤 ジュンヤ!」と俺。
「うわーい!トシさんに、初めて 褒められた」と嬉しそうな、安藤 ジュンヤ。
「じゃ斎藤さん、一番隊にジュンヤとリュウスケが入ったし、基本的には俺は一番隊を卒業するよ。いつか俺が、人を斬らずに済んだ日に、俺1人でカナに会いに行くよ。もう居場所は、記憶したからね」と俺。
「人を斬らない日か…。そういえば、そんな日ないですね。かしこまりました」と斎藤さん。
「じゃ帰るぞ」と俺。
新選組の屯所へ着くと、心配顔の北野 武局長が居た。そして「安藤 ジュンヤ先輩に、リュウスケ!ちゃんと生きて帰って来てくれた」と、呟き 胸を撫で下ろしている。
「北野局長、今日の一番手柄は、安藤 ジュンヤだよ。おかげで、俺の宝物が見つかった」と俺。
「トシさんも 斎藤さんも、あれだけ活躍して 人を斬ったのに、後ろで見てただけの僕が、一番手柄なんですか?」と訝しげな、ジュンヤ。
「ああ。確かに今日は、ジュンヤが一番手柄だ。副長が探し求めていた存在を、見つけたからな。何も、糞野郎を斬ることだけが、手柄ではないからね」と斎藤さん。
「まあ 何はともあれ、一番強い一番隊 その分、一番危険な一番隊の任務で、安藤 ジュンヤ先輩もリュウスケ君も、傷一つ追わず 生きて帰って来てくれた。おいらとしては、それだけで充分だ」と北野 武局長が、真顔で言う。
「そんじゃ、飯 風呂 睡眠」と俺。
八番隊の源爺や、安藤 ユウコさんの準備で、ジュンヤやリュウスケの一人前になったのを祝って、また新選組は宴会をし、日が暮れた。
《安藤 ジュンヤに、リュウスケか。今頃、何をしているのかな?ジュンヤもリュウスケも、新選組の頃だけじゃなく、俺にとっては最後の最後の人生、2回目の東 清二としての人生にも、相変わらず まともな親のいない子として、東京サレジオ学園という児童養護施設で、再会した。サレジオの頃は、お互い前世の記憶なんてなく、俺にとっては ジュンヤもリュウスケも後輩だったが、新選組の頃には、口の聞けなかったリュウスケが、口が聞けるようになっていたという、変化と進化があった。しかし まぁ、2017/06/11今現在の俺は、何者にもなれず ただただ、どんどん条件と状態が悪くなっていく中、相変わらず 生き地獄をのたうち回っている。じゃあ、両方とは言わない。俺の宝物 ピノコ・ナディア・哀姫が会いに来てくれるか、禁止がとっくに解除された筈の 俺の念能力よ、帰って来てくれ。両方とは言わない、せめて其のどちらかよ叶え!》
こうして 安藤 ジュンヤにリュウスケが、新選組 一番隊の仲間入りをした。そして、まだ人を斬らず 汚れていない安藤 ジュンヤの手柄で、俺の全ての人生を通しての宝物を見つけることが出来た。あとは、俺が人を斬らず 汚れなかった日に、勇気を出して 話しかけるだけだ。次回の話は、俺の宝物との遭遇と、何故 俺の宝物なのかについての話です。以上。
読んで頂き、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!