第七十九話 撤収
京の都で 京の人々の為にも機能していた斎藤屋敷が、クソ大和田のいちゃもんで、無くなろうとしています。斎藤さん、諦めないで…。
時代は幕末、長く鎖国をしてきた徳川幕府も、外圧に屈し 鎖国をしていたから平和だった江戸時代も、武士の世も 終わろうとしていた。志しのある若者は、天皇のいる京に集まり 活動していた。ただし、ただ現状に満足をしていない輩も、京の都で暗躍し それを取り締まる者として、会津藩の綾野という者が京都守護職になり、治安維持にあたっていた。そんな中、火中の栗を拾い 徳川幕府に味方し、京都守護職にも味方する 侍の集団が、京の壬生に存在した。その名も、新選組。読んで字のごとく、侍として 新しく選ばれた者たちだ。そんな新選組の局長に、いつもふざけては冗談を言い、皆を笑わす中年の漢 北野 武。新選組 副長に、未だ少年で 良くも悪くも、鬼の副長呼ばわりされている俺 土方歳三。一番頑張る一番強い 一番隊 隊長に、過去に渋川剛気にも ジャイアント馬場にも、これ程強い男は存在しないだろうと言わしめた男 斎藤一。一番隊 隊員に、未だ少年の世界最速のスピードスター 天才、沖田総司。死に番という仕組みで、よく死人の出る四番隊 隊長に、『天然理心流』の師範で、武骨で豪快な中年の漢 近藤勇。四番隊 副隊長に、無口で 死に番も、何のそので切り抜ける 野口君。出来たばかりの後方支援を目的とする 新選組 最後の隊、末広がりの八番隊に、井上源三郎と、二十歳そこそこの美貌と才能を持ち合わせた女性 安藤 ユウコさん。他に、まだガキンチョで 其れでも侍を目指して精進し、もうすぐ見習い卒業の2人 安藤 ジュンヤに、口の聞けないリュウスケが居て、そんな子供らに学問を教える先生として、北野 勝君が頑張っている。
京の都にある斎藤屋敷。諜報や情報収集、果ては会津地方産の米や日本酒の売買、そして大金を稼げるだけじゃなく、人も幸せにするビジネスが行われている場所だ。斎藤さんが建て、動かしている 新選組にとっても俺にとっても、とても有り難い屋敷だ。そんな斎藤屋敷が、クソ大和田の目に留まった。
【クソ大和田とは、数千年前から何度も生まれ変わる俺とは対照的に、寿命もなく同じ身体で記憶もそのままで、俺とお互いの存在を完全に 消すか消されるかの戦いをしている男だ。称号は不幸の王様で、行くとこ行くとこ不幸にさせていく。クソ大和田の念能力のエネルギー源が、幸せな人間を不幸にし、その落差を自分の念能力の動力源にするというものだ。そんな男は勿論、世界中から嫌われ鼻つまみ者だが、この後 会津藩 筆頭家老として登場してくる詐欺師 クソ高倉健が、結果として いつもクソ大和田にとって利になる事をする。詐欺師 クソ高倉健は、俺と俺の側の人間たちに甚大な被害を出し、クソ大和田と大和田の側の人間たちに多大な利益をもたらし、自分の待遇や状況 状態を良くしてきた男だ。例えば この頃だと、会津藩 筆頭家老という風にね。そして 不幸の王様 クソ大和田が、斎藤屋敷に いちゃもんを付けに来た】
俺と斎藤さんが、いつも通り新選組の玄関に二つある座椅子に座っていると、ノコノコとクソ大和田が姿を現わす。
其れに気づいた俺は「大和田っ怒!新選組の敷地内に入ったら、素っ首 叩き斬るからな」と警告する。
「待て!今日は、交渉に来た。武器も、持っていない。大和田は、武器を持たない」と大和田は、のたうつ。
「お前が念能力を持っていて、いつでも 此方に害をなそうとしている事を、俺は知ってるんだけどな」と俺。
「イヤッ待て!念能力なんて、たいていの大人は持っている。今日は、家についての問題で来たんだ」とクソ大和田。
「家か…。斎藤屋敷の事か?」と、不機嫌そうに斎藤さんが聞く。
「そうだ、それだ。ここに家がありながら、他にも家があるなんて おかしな話だろう?」とクソ大和田。
「別に家が二つあったって、何の問題も ねえじゃねえか」と俺。
「例えばオレが、その何たら屋敷に、殴り込みに行ったり 火をつけてもいいんだぞ。それに、鬼のひじかたに もう一人、お前らだって 叩けば埃が出る身だろ」とクソ大和田。
「別に、叩かれても問題ねえよ。俺たちは、侍だからな。其れと、鬼の土方 鬼の副長って、半分以上は お前が言いふらし 宣伝している事を、俺は知ってるんだけどな」と俺。
「待て!それはそうだけど、今日は家の話についてだ。その何たら屋敷は、オレがもらうことにした。それか お前ら壬生狼が、ここから出ていくか?好きな方を選べ」とクソ大和田。
「副長、まだ新選組は、此処に居ますよね?」と斎藤さん。
「ああ。ただ、別にクソ大和田の言うことなんて、俺たちが聞く必要もないんだぞ。俺たちは、大和田の側の人間でもないし、クソ大和田は敵だしな。なんだったら、俺がこの場で 叩き斬るぞ。そういうことが出来るのも、侍の特権で 俺たちが侍を目指した、理由の一つだからな」と俺。
「待て、お前はダメだ。お前は、有言実行の男だ。今オレは、何たら屋敷の持ち主と話しているんだ」と大和田。
「副長、じゃあ 斎藤屋敷は、解体します。副長の刀が、クソ大和田の血で汚れるのも穢れるのも、嫌なので」と斎藤さん。
「確かに、大和田は この耳で聞いた!何たら屋敷を、解体すると!」とクソ大和田。
「斎藤さんが其れで良いなら、其れで良いけど 諦めることだけが、道ではないからな。じゃあ斎藤屋敷で働いてる者に、退職金を出して自由の身にして、出入りしている業者にも もう斎藤屋敷は無くなって機能しないから、他を当たるように伝えといてくれ。被害が、最小限になるようにな」と俺。
「かしこまりました」と斎藤さん。
「あと会津地方産の米と日本酒は、新選組にとって生命線なので、それはこれからも手に入るように、手配しといてくれ」と俺。
「かしこまりました」と斎藤さん。斎藤さんは、斎藤屋敷の解体と解散へ向かった。
「これで、何たら屋敷から出る利益は、オレのものだな」とクソ大和田。
「斎藤屋敷は解体するし 解散もするので、もう利益なんか出ねえよ」と俺。
すると北野局長が帰って来て「大和田っ怒!この辺、うろつくんじゃねえと言っただろ」と怒鳴る。
「わかってる。今日は、充分な成果があった。大和田は、帰る!」と言って、クソ大和田は、帰って行った。
「土方殿、また大和田がやって来たのか。おいらが居ない間に、何かあったかい?」と北野局長。
「うん、新選組にとって、資金源でも情報源でもあった斎藤屋敷の、解体と解散が決まったよ。情報はともかく、金には これから新選組は、困るようになるな。もともと斎藤屋敷は、斎藤さんが創ったものだし、クソ大和田に いちゃもん付けられたとはいえ、斎藤さんが判断したから しょうがないな」と俺。
「おいらの居ない間に、そんなことが…。おいら、局長なのに 何も出来ていない…」
「まあ、いいさ。幸い会津地方産の米と日本酒は、今まで通り手に入るように斎藤さんに頼んでおいたから、食うには困らない。其れで、何とかやっていこう」と俺。
「おうっ、米と酒は手に入るんだな。じゃあ金の方は、おいらが何とかするよ」と北野局長。
「改めまして、北野 武局長。俺たちは侍だから、お金に対しては、キレイじゃないといけないからな」と俺。
「改めまして…。ひえーっ、おっかねえ。了解した。武士は食わねど高楊枝作戦でいこう」と北野局長。
京の都で、京の都に住む人たちの為にもなっていた斎藤屋敷が、今まさに無くなろうとしていた。
《2017/05/26今現在の2回目の東 清二として、最後の最後の人生、寿命を迎えれば 本当の自分 ドン・リュシフェルに成れる俺は、想定していた以上の最低最悪の人生を送っている。全宇宙の支配者 クソ大和田が、俺が寿命を迎え 本当の自分にたどり着くのも恐れ、尚且つ 念能力を俺が手に入れられないように画策した。小学生時分、俺はあちこちに送られ 其れでも環境に適応してきた。ただし最後の行き先、福岡行きが鬼門だった。福岡に送られる前に居た 創価小学校で結果を出し、交渉の末 天使のみが持つ事を許される、真実の目を再び取り戻すことが出来た。大馬鹿な俺は、これであとは寿命を迎えるまで真実の目を持っていられると思っていた。福岡にジャイアンとジャイ子が夫婦になり、極道である仲間全員の念能力を其れもタダで売り払う、クソ澤野夫婦が待ち受けていたとも知らずに。俺はスポーツ以外で駆け引きなんかしないのに、クソ澤野夫婦は駆け引きを繰り返し、真実の目も俺の人生も、よりにもよって俺の宝物 ピノコ・ナディア・哀姫の人生まで、クソ大和田に其れもタダで、売り払いやがった。そして、せめて起こる起こると言われている、関東大震災だけは防ごうと東京へ帰って来た俺は、未だに生き地獄をのたうち回っている。哀姫、もう大丈夫だから会いに来てくれ。俺の念能力よ!とっとと帰って来い!》
こうして、斎藤屋敷は解体され、斎藤さんは屋敷から、撤収した。その事によって、新選組の資金繰りが悪化して 金欠になったり、せっかく京の都の人の為に機能していた斎藤屋敷が機能しなくなり、多くの人が不利益を被ることになる。諦めが肝心な時もあるけど、諦めなくてもよかった。まぁ、何とかするけどね。次回の話は、新選組の一番隊での、俺や斎藤さんや沖田の活躍についての話です。さて、どうなることやら。以上。
読んで頂き、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!