転生
目を覚ますと。私は柔らかな布に沈み込んでいた。
天井を仰ぐと、見慣れない漆喰の装飾が視界に広がる。
薄い天蓋の布越しに射し込む光が非現実であると錯覚させる。
ここが異世界、、、?
目にチカチカと光が差し込んでくる。
、、、いや、眩しいな。
光の正体は直射日光かと思いきや、純金と思われる装飾品に反射した光のようだった。
「バー、ぶー(目が悪くなりそうだわ)」
声に出したはずなのだが、口からは喃語しか出てこない。
「うー?(なんで?)」
「あらあら、お腹空きました?」
どうやら私の周りに人がいたらしい。
女給の格好をしたその人は私の疑問に答えるように返事をした。
そして私を軽々と持ち上げると体をゆする。
異世界では成人している人を抱っこする習慣があるのかと驚かされたが、その誤解はすぐに解けることとなった。
持ち上げられた際、壁にかけてある鏡が目に入る。
「ば、ばぶー!!」
目の前に映っているのは目の前にいる女給に抱かれた1歳にも満たない女の子だった。
髪は黄金のように煌いていて、瞳はサファイアのように引き寄せられるものがある。
いや、かわいいな。
この場合自画自賛になるのだろうか。
いや。それにしてもかわいいな。
短い手足をばたつかせてみる。
多少の動かしずらさはあるものの私の意思通りに動く。
やっぱり私なんだ。
「あ、お嬢様暴れないでください。危ないですよ!」
女給はそう言って私を元いた場所へ戻した。
その時、コツン、コツンと静寂を裂く規則的な足音が、ゆっくりと近づいてくる。
やがて扉の前で止まり、軋む音を立てて開いた。
差し込む光の中、女性の影がゆっくりと伸びる。
二十代半ばほどだろうか。宝石のように輝くグリーンアイ、黄金の糸のようなブロンド。
完璧な造形なのに、表情は欠片もない。まるで美しい人形だった。
思わず見惚れてしまったその瞬間、彼女の唇が僅かに動いた。
「あぁ、生まれてこなければよかったのに」
冷たく、突き放すような声。
頬をぱんと叩かれたような衝撃を感じた。
あぁ、またか。
そう思わずには言われなかった。
女性はそれ以上何も言わず、静かに踵を返して部屋を後にした。
異世界に来て早々、行き先に黒い影を落とされた気がして、頭を抱えようとした。が、手が短くて思うように届かなかった。




