儀式の始まり
夜の空気は湿った土と何か――古代の、力に染まった何か――の匂いで重く漂っていた。廃墟となった屋敷が彼らの前にそびえ立ち、かつて壮麗だった石壁は今やひび割れ、草木に覆われ、何世紀にもわたる忘れ去られた恐怖の沈黙の証人となっていた。
コルは朽ちかけた建物を見つめながら、両拳を握りしめた。彼はそれを感じた――リサが中にいる。彼女の存在は微かだったが、それでもそこにあった。この場所を包み込む灼熱の闇に、かろうじてしがみついている揺らめく残り火のように。
「さあ、行くぞ」コルは冷たく鋭い声で言った。
彼の隣に立っていたエリザベスが彼の肩に手を置いた。「気をつけろ」と彼女は警告した。「ここは単なる敵の拠点じゃない。罠なんだ」
コルは何も言わなかった。彼はそれを分かっていた。ただ、気にしていなかったのだ。
ブラッドは屋敷に視線を固定したまま、前に出た。「ジェイコブと俺が先に入る」と彼は言った。 「リサの居場所を突き止める。君たち二人で奴らの注意を引くんだ。」
コルは目を細めた。「あそこの中身を甘く見ているな。」
ブラッドは彼の方を向いたが、表情からは読み取れなかった。「いや、違う。だが、奴らが期待しているのは君だ。先に侵入すれば、奴らが仕掛けた罠が全て発動してしまう。影から仕留めよう。」
ジェイコブは負傷しながらも、同意するように頷いた。「俺も彼に同調する。こっそり侵入してリサを見つけ出し、脱出させる。その間、君たちが奴らを忙しくさせておく。」
コルはゆっくりと息を吐き、短く頷いた。「わかった。だが、あまり時間をかけないように。」
彼らの後ろでは、デイン、オリン、ヴァレンが待機していた。
「俺たちは外で待機だ」デインは唸り声を上げた。月光の下で、彼の巨体はより一層威圧的に見えた。「事態が悪化したら、誰もここから生きて出られないようにする。」
オリンはニヤリと笑った。「姉さん、見張っておくから。もし困ったら、すぐに駆けつけるから。」
ヴァレンはただ拳を鳴らした。地獄の鎖は抑制されたエネルギーで唸りを上げた。「奴らは何が起きたのかも分からないだろう。」
計画が整うと、彼らは動き出した。
ブラッドとジェイコブは別れ、二人の姿は影の中に消えていった。コルとエリザベスは正面玄関へと闊歩した。彼らの存在は夜の灯台のように輝いていた。
コルが中に入った瞬間、彼の背後でドアがバタンと閉まった。
低い囁きが空気を満たした。
そして幻想が始まった。
ジェイコブとブラッドは廃墟となった廊下を幽霊のように進んだ。足音もせず、呼吸も抑えていた。
奥へ進むにつれて、悪臭はひどくなっていった。
そして彼らはそれを見つけた。
死体で満たされた部屋。
ジェイコブの胃がひきつった。ハンターたちの体を引き裂かれ、血が古代のルーン文字で壁に塗りつけられていた。目をえぐり取られた者もいれば、心臓をえぐり取られた者もいた。
「奴らは奴らを利用していたんだ」ブラッドは拳を握りしめながら呟いた。「何かのために…何か大きなもののために」
ジェイコブは目で印を見つめた。時間切れが迫っていることを直感が告げていた。
「動かなければ」と彼は言った。
ブラッドは頷き、二人は前進した。
リサは近くにいた。
しかし、他にも何かが近くにいた。
暗闇の中で、彼らを待ち受けている何かが。
コルは剣を振り回し、現実ではない敵を切り裂いた。幻影は容赦なく、彼の周囲の現実を歪めていた。
エリザベスは彼の傍らに立ち、その瞳は神々しい怒りに輝いていた。「奴らは強力だ」と彼女は認めた。「でも、私は打ち破れる」
コルの忍耐は限界に達していた。「じゃあ、早くやれ」
彼女は目を閉じ、力を込めた。
そして。
変化。
新たな存在。
コルが振り返ると、フードをかぶった人影が影から現れた。
「やっと来たか」と、その人影は楽しげな声で言った。
彼らの後ろ、遠くの部屋で、リサが叫んだ。




