38
それからは大分忙しくなった。地方にいる他の王子様たちはそれぞれ降伏し、貴族たちも逃げる者や降伏する者や色々だった。結局悪いことをしてたっていう証拠は全部王様にしかなかった。たしかに協力してた貴族とか王子たちも悪いから、ちゃんとそれぞれに罰が与えられた。フィリップも例に漏れずというやつで、今は田舎でひっそりと暮らしているという。俺にはもう執着しなくなったか不安だったけど、アランがもう大丈夫だ、と笑っていたから大丈夫なんだろう。
そしてそれらのことを仕切ったのはもちろんアランで、アランはイレドの復興に尽力し、みんなに認められて王様になった。アランはアルシュタルのセドの秘密を守るため、イレドでは死んだことにされていたんだけど、遠いところへ留学してて戻ってきたことになった。もちろん春もアランについてイレドに行って貧しい人たちの病気を治してあげて手伝っている。
セドは自分の生い立ちを公表して第二王子に戻った。ただいま絶賛王様になるための勉強中である。なにせ第一王子は王様になる気がないみたいだから、
「みんなに認められるようになってから王様にならないと!」
ってセドは頑張っている。
俺は、まぁ、その、将来お妃?になる訳だから、その立場に恥じないようなマナーから外交まで様々なことを勉強してる。俺ここに来てから勉強してばっかだな…
そして!今日は久しぶりに春に会えるパーティーの日!今年は復興の証にイレドで開催されて、王であるアランのお披露目会のようなものらしい。
「なんかすごく視線を感じる…僕は怜とゆっくりしたいからアランはセドと話しててよ」
「俺のせいか?」
挨拶回りも終わってようやく春と話せるようになったけど、春の言うように注目が集まってるように思う。
「そりゃあこのパーティーの主役はアランだからそうだろ」
「みんな天使と女神を拝みに来たんじゃないのか?」
「なにそれ」
あ、そうだった。春は知らないようだが、俺はここにくる前にセドにすごく言い聞かされてきた。なんでも戦場にいた人たちから広がり、俺と春が女神と天使と呼ばれ噂になっていたためアランとセドは必死に俺たちを隠したが、今回ばかりはそうもいかないから気をつけろって。
春の天使はわかるけど、俺が女神って…と言ったらセドは当たり前のように怜は女神だろう?って言ってくるからこっちがおかしいのかと思ってしまった。最近セドは素直に言葉を伝えようと頑張ってるからこっちが大変だ。別に嫌ってことはないけど…
「じゃあ部屋で飲み直すか。この場はもういなくても大丈夫だろう」
「え、いいの?」
「ああ。俺がいては遠慮して楽しめない人もいるだろうからな」
「やった!」
そう言ってアランの腕をぎゅっと握って楽しそうにする春と、恥ずかしがりながらも春を嬉しそうに見つめるアランを見ていると、この世界に来れて、春が幸せそうで良かったなと思う。
そして俺が顔を見上げた先には微笑みながら手を差し出してくれるセドがいた。この人に出会えて良かった!そう心から思いながらその手を取った。
これにて完結となります。最後までお付き合いいただきありがとうございました!




