純なる正義
戦隊はCHOONYの怪人達に対して容赦ない攻撃を与えた。
街の被害の拡大も考えずだ。
CHOONY側も街の反発が多いのではないかと当社は考えていた。
しかし、戦隊のリーダーが反則的なまでのカリスマを持っていたせいで戦隊に対する批判は
殆ど出なかった。
悪を倒すためなら何をやっても許される正義の戦隊。
CHOONYにとっては悪夢のような存在の誕生であった。
また、戦隊は覆面ヒーローに対しても攻撃を行った。
「生温い正義しか持たない覆面ヒーローの存在が悪の組織の存在を助長している」
それが彼らの大義名分であった。
覆面ヒーローは抵抗らしい抵抗をせずに脱落。
それ以降、戦隊とリボーンズヒーローの抗争に移行した。
CHOONYはただ暴れるだけの弱小怪人を散発的に出現させる傍らで、
隠れ蓑の会社の財力を用いて戦隊の情報収集に専念した。
判明したのは戦隊のメンバー全員が高校生。
全員がリーダーを慕う者達で構成されていた。
リーダーは陸上で全国制覇を成し遂げ、生徒会長までやっている傑物。
おまけに雑誌モデルもやっているという人物であった。
そして実家はヒーロー相手に装備開発も行っている大企業の創業者一族。
学生の視点で見ると完全無欠の存在であった。
「またメンバーが増えたって報告があるな。女らしいけど」
「これ以上増やされると今後はこちらも複数の怪人の同時出撃で対抗せざるを得ませんな」
「それって余計街の被害大きくならねえか?せっかく会社が大きくなってんだし
損害受けるのも嫌だな」
「最近は連中が表立って徴収しているヒーロー活動費の額も大きくなっておりますしな」
「あんな連中にくれてやるのも癪だけど、こっちも地域密着型のカンパニーを
謳っちまってるからな。最低限はくれてやらねえと不味いだろ」
戦隊のリーダーは自身の知名度を利用し地元企業相手に活動費と称して寄付を募っていた。
その対象としてCHOONYの会社も含まれていたのである。
自分達が原因とはいえ、隠れ蓑にしている会社まで怪しまれると厄介という事で、
ケイオスバーグは渋々寄付の形で活動費を協賛していた。
まさに踏んだり蹴ったりである。
そんな状況が続いてくると総統としてのケイオスバーグに一つの考えが浮かんでくる。
あの頃の方が全然良かった。
あの覆面ヒーローと戦っていた頃の方が面白かった。
CHOONYは総力を挙げて覆面ヒーローの情報を集めた。
正体については全くと言っていいほど収穫がなかった。
しかし驚愕の事実が判明した。
覆面ヒーローの噂は古くから一部では伝えられており、
幕末に出現しただの米軍の空襲を一人で守り抜いただのGHQが真相解明に乗り出して
頓挫しただのと眉唾物の情報で溢れていたのである。
俺達ってそんなヤバイ奴と戦ってたの?
冷や汗を流しながらも自分達が戦ってきたヒーローと情報にあったヒーローの落差に
一つの仮説を立てる。
チート性能の古代兵器型変身装置を身に纏って戦う素人。
しかもまだ未成年。
なんというか戦い方が幼く青臭いのだ。
戦闘員の集団に対し遮二無二突っ込む。
きっちり止めを刺さず去る。
油断が過ぎる場合が多い。
「仮説が正しいとして、だ。同じ学生なのに連中とは大分差があるな」
だが、とケイオスバーグは呟く。
「俺には奴のあの青臭さが酷く眩しい」