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第十一話「“絆”・“繋がり”・“ネクサス”」

【5月11日 月曜日】


「よっ、秋山少尉」

「渕上!。久々だな」


 フランスの前線拠点で再開した渕上と秋山は再会を喜びながらグータッチを交わした。


「噂は聞いてるよ。大活躍らしいじゃないか」

「秋山少尉もな。癖者揃いのメンバーを纏め上げてるそうじゃないか」

「階級付けの癖、変わらないな〜」

「これでもオフでは階級呼びしなくなったんだぜ?」


 秋山は笑みを浮かべながら渕上との会話を楽しんだ。だが、此処は前線。そんな悠長な事は許してくれなかった。


「渕上、ブリーフィングを始めるわよ」

「秋山、ブリーフィングだ」

「じゃあな渕上」

「おう」


 渕上は今野に、秋山は黒田に、それぞれ呼ばれ、別れた。

 今野らと合流した渕上はタブレット端末を開くと今野の話に耳を傾けた。


「作戦の内容は、ドーバー海峡の強行偵察よ」

「ドーバー海峡....」

「フランス軍は近々イギリス奪還作戦を決行の予定よ。その足掛かりとして今回、第四独立遊撃部隊と合同でドーバー海峡を偵察する事になったわ」

「・・・」


 隊全体に重たい空気が走った。

 “ドーバー海峡”。そこは死の海とも呼ばれる場所だった。偵察に行った部隊の2割が戻ってくれば良い方、全滅はほぼ当たり前。そんな海峡だった。

 生存者の証言は、“海中からビームが放たれた”や“有り得ない角度からビームを撃たれた”など曖昧且つ信憑性に欠けるモノばかりだった。


「まっ、海峡まで辿り着ければ良い方だろう。そこに到達するまでには、分厚い防衛戦を突破しなきゃしけないんだからな」


 芹沢の発言に今野は頷いて返した。


「今回も隊を2つに分けるわ。グループAはPROJECT.FのグループAと、グループBはPROJECT.FのグループBと、それぞれフタ方向からドーバー海峡を目指すわ」


(秋山との共同戦線か〜。血が騒ぐな)


 内心そう思った渕上は軽く拳を握った。それを見て居た加瀬は静かに渕上の肩に手を置いた。


「戦友との共闘だからって気合い入れ過ぎるなよ」

「あっ、はい」

「お前はいつも通りやれば良い」


 そう言うと加瀬は渕上の肩を軽く叩いた。


「芹沢も言った通り、戦況は海峡に辿り着ければ良いって状況よ。無理に気合い入れず、自然体でいきましょう」


 全員が同時に返事を返すと今野は解散と出撃準備を命じた。




『油断するなよ。俺達が向かうのは“死の海”だ』

『辿り着ければの話だろ?。もう少し気楽に行こうぜ』


 秋山の警告に畔木が冷静にそう返すのを聞いて居た渕上は微かに笑みを浮かべた。


「秋山。もしあれだったらこっちの指示も出して貰って構わないぜ」

『了解だ。昔を思い出すな』

「状況はだいぶ違うけどな」


 無線の向こう側で苦笑いを浮かべる秋山。そんな秋山に茅野は優しく声を掛けた。


『いつも通りやれば大丈夫ですよ。和樹なら、私達なら大丈夫です』

『だな。まっ、いつもと同じだ。敵倒して前に進めば良いんだからな』

『そうですよ。今回は渕上さん達も居ますし、問題ありませんよ』

『慢心はするなよ。フランス戦線はそんなに甘くない』


 横から口を挟む森川。だがそれを言いたかったのは加瀬や酒井も同じだった。

 再び隊全体に重たい空気が伸し掛かる中、雨宮から通信が入った。


『敵部隊接近。数....200近いです』

『おいでなすったな〜』

「第一陣のお出ましか。どうする秋山?」

『狙撃で数を減らしてくれ。それ以外は俺の合図を待て』

「りょーかい」


 渕上は機体制御をパドに任せると天井から降りて来たライフル型コントローラーを両手で構えた。

 数に怯む事なくトリガーを引き続ける渕上。だが流石の渕上も、狙撃で蹴散らすには数が多く、イータ自体も素早かった。


(意外とすばっしこいな。まっ、計算のうちではあるがな)


 そう思う渕上。すると秋山は機内で目を見開いた。


(今だ)


『グループB、総員突入!。右翼から叩く!。加瀬少尉と倉又少尉は、左翼から頼みます』

『了解!』

『了解した』


(加瀬と倉又を左翼に回したか。なら、)


 渕上はパドに機体左回頭を指示すると左翼のイータ人型機動兵器群を優先して叩いた。


(流石渕上。わかってるな)


『全機、フェイズ1!』


 秋山の合図で3つに分かれるPROJECT.FグループB。秋山機が只管戦場を掻き乱し、他の四機がエレメントを組み、互いの背中を護りながら撹乱されたイータの人型機動兵器を次々と撃墜していくのを見て居た渕上は思わず口角を挙げた。


(俺より隊長してんな。強くなったな彼奴も)


 そう思いながらトリガーを引き、次々とイータ人型機動兵器を撃墜していく渕上。だが戦局は渕上らの思い通りには進まなかった。秋山らの攻勢を前に勝算が薄いと感じたイータ人型機動兵器群は次々と加瀬機・倉又機の方にターゲットを変えといった。


(そんなら)


『各員散開!。前と後ろからイータ人型機動兵器を叩け』


(そう来るか。なら、)


「パド、右回頭。機体前進」

「リョーカイ・リョーカイ」


 狙撃体勢を維持しながら前進する渕上機。渕上は秋山らの背後を狙うイータ人型機動兵器を撃墜し始めた。


(流石だな。こっちがやって欲しい事言わなくてもやってくれるぜ)


 渕上の対応を前に秋山は思わず口角を挙げた。

 言葉にせずとも通じ合える【“絆”・“繋がり”・“ネクサス”】から来る連携が彼らの武器でもあった。

 ある程度機体を前進させた渕上はライフル型コントローラーを収納するとスラスターダイヤルレバーを操作してスラスター出力に制限を掛けると、操縦桿を握り、機体を前進させるとライフルモードに切り替わったラーミナビームスナイパーライフルIIで次々とイータ人型機動兵器を撃墜していった。


(秋山達の背中は俺が護る)


(背中は預けたぜ相棒)


 秋山機・茅野機・畔木機がイータ人型機動兵器群の背後から攻勢を掛ける中、森川機・酒井機は前方から攻勢を仕掛け、加瀬機・倉又機を援護した。

 茅野や畔木も後ろは気にしない。何故なら渕上が背後をカバーしてくれている事を知っているから。

 そんな連携を見せる中、200近く居たイータ人型機動兵器群は殲滅された。


「ふぅ」

『助かったぜ。俺の思い通りに動いてくれて』

「お前と何回死戦を潜り抜けたと思ってる」


 そう言うと渕上は再びスラスターダイヤルレバーを操作するとスラスター出力の制限を解除し、秋山機に続いた。


(その機体、かなりアップグレードされてるな。進化してるのはパイロットだけじゃないって事か)


 秋山は静かにそう思うと視線を前に戻した。

 5分ほど前に進むと、再び無線がなった。


『敵、第二波接近。500近いです』

『いきなり倍の戦力』

「湯水みたいに湧かせるな。そんな戦力一体何処に?」


 そう言いながら表情を鋭くする渕上。だが秋山の決断は早かった。


『数で押すしか能がない奴らが。だったらその挑発に乗ってやろうじゃないか!。中央を突破する。続け!』


(そう来たか。なら、)


「秋山隊の真下から行くぞ。倉又を先頭に俺が右、加瀬は左だ。撃墜するより近付けさせない事を第一に撃ちまくれ」

『ッ、了解』

『そう言う戦術か。....了解した』


 秋山隊が飛行形態のままスラスターを最大出力で吹かすと渕上隊もそれに続く様にスラスターを最大出力で吹かした。

 イータ人型機動兵器群との距離が短距離に入った頃、秋山機はラーミナツインビームサブマシンガンを撃ちまくった。それに合わせる様に倉又機もラーミナツインビームサブマシンガンを、加瀬機は大型ツインレールガン下部のラーミナビームマシンガンを、渕上機はライフルモードのラーミナビームスナイパーライフルII下部のラーミナビームマシンガンを撃ちまくった。


「秋山隊の突破を援護出来ればそれで良い。俺達も遅れるなよ」


 イータ人型機動兵器群のど真ん中を突破する秋山隊と渕上隊。イータは動揺したのか或いは馬鹿馬鹿しく思ったのか、まともに撃って来なかった。


「倉又、加瀬。合図したら左に急速旋回」


(渕上隊は左に行くか。なら、俺達は)


 弾幕を張りながらイータ人型機動兵器群の中央を突破した両隊。すると渕上の合図で渕上隊は左へ、秋山隊は右へ急速旋回するとそれぞれイータ人型機動兵器群の背後を突いた。


『撃ちまくれッ!』


「当てまくれ!」


 人型形態に変形した秋山隊は一斉にマイクロミサイルを撃つと誘導弾の弾幕でイータ人型機動兵器を蹴散らした。

 一方で渕上らは正確な射撃で次々とイータ人型機動兵器を撃墜していった。

 同じ戦法をしたにも関わらず、後詰のやり方は隊によって違った。


『各員背後に警戒しながら戦え。此処からは持久戦だ』


 真っ二つに分かれたイータ人型機動兵器群を前に、渕上は操縦桿を握り直した。


『渕上。倉又と俺は勝手に動く。そっちは本気でやれ』

「了解だ」


「(エンゲージ)」


「行くぞヴェヒター」


 渕上の呼び掛けに応える様に、ヴェヒターは一瞬カメラアイを発光させた。

 スラスターダイヤルレバーを操作し、出力を抑えた上で自分の手足身体の様に機体を操る渕上。そんな渕上機撃墜しようと群がるイータ人型機動兵器。それを渕上とヴェヒターは次々と撃墜していった。


(良い仕上がりだ晴翔さん。これならいける!)


 渕上は操縦桿を微かに強く握った。

 ブースターポットとスラスターポットの恩恵を巧みに生かして戦う渕上機。時に後ろを振り向く事なく後ろに居るイータ人型機動兵器を撃ち落とす様は後ろにも目が付いていると言わなければ説明が付かない芸当だった。


「少し数が多いな」

『(我々を集中的に狙っている様だな。気を付けろ)』

「だったら好都合だ。目を瞑っても当てられるぜ」


 渕上機はイータ人型機動兵器を只管撃ち落とした。

 丁度その頃、手元に居るイータ人型機動兵器を片付けた加瀬と倉又は渕上機の方を向いた。


『・・・どうします?』

「彼奴に任せよう」

『でも、150以上居ますよ』

「今の俺達が突っ込んでも、邪魔になるだけだ」

『了解』


(長期戦になるんだ。此処で無理に突っ込んで消耗するのは、渕上も望んでないだろ)


 静かにそう思った加瀬は倉又機と共に第三波に備えた。

 その頃渕上は、


(クッソ。過去最多の大群だな。だが、加瀬や倉又が突っ込んで来ないのは好都合だ。・・・にしてもこの大群、流石に部が悪いな)


 大群を裁く渕上の脳裏に“ラーミナドライブオーバーロード”というシナリオが思い浮かぶ中、渕上は微かにキルペースを落とした。


『(こっちは大丈夫だぞ)』

「俺が心配なんだよ」


(回転の上限、聞いておけばよかったな。あと、メーター的な奴も欲しいかも)


 渕上の脳内を悪いシナリオが支配しようとする中、秋山はチラッと渕上機の方を向いた。


(まぁ彼奴なら大丈夫だろ。あの様子、エンゲージタイムを使ってる筈だ。無理に刺激して、リズムを狂わせない方が良い)


 渕上の“味方が突っ込んで来ない事は好都合”という考えを読み解いた秋山はイータ人型機動兵器群を片付けると自分の隊員に第三波に備える様伝えた。茅野と畔木は納得したが、森川と酒井は不満があった。


『100機以上居るぞ。良いのか?』

「良いんだ。あの機体にはラーミナドライブが搭載されてる」

『ラーミナドライブ?』

『護衛艦に搭載されてるラーミナを増幅させ高濃度かさせる機械の事ね。まさかそんなレアな試作機の戦いを、この目で観れるとはね』


 森川に説明しがてら興味を表に出す酒井。しかし森川はイマイチピンと来なかった。


「まっ、訓練生の時から1人で60〜80機を余裕で相手してた様な奴だ。問題ありませんよ」


 そうこう言ってるうちに、渕上を取り囲むイータ人型機動兵器は100を切って居た。

 後ろから狙うイータ人型機動兵器を振り向く事なく銃口だけ向けて撃ち抜くを当たり前の様にやる渕上。その芸当を可能としているのは、機体の声の補助あっての事だった。


「本当に大丈夫なんだな。だったら遠慮なく行くぞ」

『(その調子だ)』


 そして、言葉を交わさなくとも仲間と分かり合える【“絆”・“繋がり”・“ネクサス”】から来る支えも渕上が全力を出せる要因の一つだった。他にもあるとすれば、松田がチューンしたからという“安心感”と“信頼”もあった。

 他のパイロットを魅了する芸当ながも無駄も隙もない戦いを繰り広げた渕上はイータ人型機動兵器を全滅させた。

 渕上を中心に集結した一行はドーバー海峡に向けて機体を飛ばした。


『そのまま北東に3キロでドーバー海峡です』

「・・・」


 雨宮のオペレートを聞いて居た渕上は妙にピリピリする空気を前に表情を鋭く、険しくして居た。


「....ッ!」


 何かを感じ取ると同時に脳に電流の様なモノが流れたのを感じ取った渕上はすぐさま行動を起こした。


「コハク、バリアアサルト、フレンドリースタンバイ」


 両肩と脚部上部に搭載されたバリアアサルトが瞬時に展開されると友軍機と渕上機の周りを浮遊した。その瞬間、加瀬機と倉又機付近に展開して居たバリアアサルトがラーミナビームシールドを展開、ラーミナビームを防いだ。


『なんだ?』

『一体何処から?』

『此方では何も捉えてません』

「・・・」


 渕上は鋭い表情で身体を硬直させると何かに勘付いたのち操縦桿を動かし、トリガーを引いた。

 渕上機のライフルから発した閃光が何かに当たると何かが爆散した。


「小型偵察ドローンか」

『お前、一体どうやって?』

「直感8割・予測2割」


 秋山にそう返した渕上はセンサーでも捉える事が出来ない小型ドローンをなんとか捉えるとトリガーを引き、次々と破壊していった。


『小型ドローンにビーム兵器か。厄介だな』

『捉えられない。どうすれば....』

『此処は渕上に任せよう』


 倉又にそう返した加瀬は表情を鋭くすると軽く舌打ちをした。


(報告書にあったあり得ない方向からの攻撃って、これか)


 そう思う加瀬を他所に、渕上は小型ドローンを破壊していった。


『分析結果出ました。ビームは出力は低いものの貫通性が高く、コクピットを狙えば中の人間を負傷させれる程度の威力はあります。当たり何処ろが悪ければ....』

「まさにリベラシオンキラーか」


 肉眼で見えても照準センサーは捉える事が出来ない上に小型なだけあって動きも素早い。普通なら破壊は無理な筈だが、渕上は平然とやってのけた。そして周りも、渕上の邪魔をしない様、敢えて攻撃せず、回避優先で立ち回った。


「全部落としたか?」

『わかりません。此方では、捉える事が出来ませんので』


 目をキョロキョロさせながらモニター越しにドローンを探す渕上。さっきまであったピリピリした空気が無くなった事とドローンを確認出来ない渕上はコハクにバリアアサルトの回収を指示した。


「全部落としたみたいだな。先に進もう」

『ったく、どんな芸当だよ』


 渕上は秋山に何も返す事なくただただ苦笑いを浮かべた。


『ドーバー海峡です』

「見えた。“死の海”だ」

『なんとか到達出来たな』


 渕上と秋山は同時に息を吐いた。

 イータの防衛線を突破して、あとは海峡の状況を探るだけ。そう思って居た渕上は目を見開いた。


「コハク!バリアアサルト、フレンドリースタンバイ!」


 再度バリアアサルトを展開する渕上機。その瞬間、無数のビームが海中から彼らを襲った。

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