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ステータスウインドウ無双。異世界で最もスマートな使い方  作者: うーぱー
第11章:世界の危機! 邪悪なる陰謀が進んでいた!
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73話。殺戮魔王の復活。俺はなすすべなく敗北する

 俺は直上に跳躍。

 天井を蹴ってスボスラの方へ跳ぶ。


 だが――。


「くくくっ!」


 バキイインッ!


 壇上にあった鉱石が破裂した。

 中から人影が現れたと思った直後、俺はそいつに蹴られて、天井にたたきつけられていた。


 バキイッ!

 ベキベキベキッ!


 俺の体が、まるで漫画のように大の字になって分厚い岩盤に埋まっていく。


「ぐふっ……!」


 ど、どういうことだ。

 カウンターなんかじゃない。

 何者かがレベル72の俺の全力の蹴りを、はじき返した!


 俺は天井にめりこんだ状態で壇上を見下ろす。


 そこにいたのは、スボスラと……。


 誰だ?


 小汚い全裸の男だ。

 小汚いというか、そんな言葉があるかどうかしらんが、大汚い。

 いや、あいつのために、大汚いという言葉を作っても良いかもしれない。


 髪の毛は膝丈だ。ボサボサでふけまみれなのが、天井からでも分かるほど汚い。


 服の残骸らしきぼろ切れが首の周りに引っかかっていて、右側の肩にだけ少しかかっているが、すぐにもちぎれ落ちそうだ。

 股間は丸出しだ。


 肌は異臭が天井まで届きそうなほど汚い。汗や老廃化した表皮がこびりついて黒ずみ、それがめくれた箇所もあり、全身がまだらになっている。


 顔はよく見えない。でも、口を開いてよだれをたらしていることは分かった。


「く、くき、くけけけっ。こ、こひっ、こひひひ……」


「おお。我が愛する息子イーサーよ。見違えたぞ」


「イーサーだと?! どういうことだ、スボスラ!」


「アーサーよ。この地でモンスターをあまり見かけなかっただろう」


「ああ」


「イーサーに喰わせたのだよ」


「は?」


 壇の下から布を持った人物が上がっていき、イーサーの体を拭き始めた。


「くくくっ。飯にして食わせたわけではないぞ。何千、何万ものモンスターを食わせていたら、クソでこの地下空洞は埋まっているな。くっくっくっ」


 スボスラは上機嫌で語っている。

 俺は情報収集のため黙って話を聞く。


 というか、体が天井の岩盤にめりこんでいて動けない。

 俺のパワーで無理して動いて崩落したら、近くにいるシャルロットや、獣人の子供が危ない。


 まずは大人しくするしかない……。


 スボスラは壇上にあった鉱石の残骸に触れる。


「時の牢獄結晶……」


 時の牢獄結晶?!

 その名前だけで、なんか「時間が止まったところで修行する」魔道具の気がする。

 それか、「何もない空間で1億年耐える代わりに、力や金を手に入れる」みたいな。


「これにイーサーを放りこみ、さらに近隣のモンスターを弱いものから順に投入していった。イーサーは時の牢獄で、1000年、戦い続けた! エキサーヌ領のモンスターはほとんど食い尽くしてしまっただろう!」


「なん、だと……」


「そして完成したのだ。我が新たな肉体にふさわしき、究極の生命体が!」


「うげっ……」


 スボスラはイーサーに口づけをした。

 離れた位置で良かった。近くで見たくない、キモい光景だ。


 スボスラの小太り肉体は倒れた。それっきり動かなくなる。


 代わりにイーサーが笑いだす。


「くっくっくっ。我が新しき肉体! レベル上限開放スキルが作り出した、究極の体だ! 永遠の奴隷の誕生だ! ふはーっ! はっ! はっ! はっ! はっ! 力がみなぎってくるぞ!」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……。


 謎の音が鳴り、地下空洞が揺れる。

 スボスラ、いや、イーサー、じゃなくて、ハンバーグみたいな名前の魔王の力で、大地が震えているんだ。


「貴様に絶望を与えてやろう。ステータスオープン」


 ブュゥン……。


 俺の目の前にステータスウインドウが出現した。



 名前:スボスラ・ヴァバラーグ

 職業:殺戮魔王

 年齢:343

 レベル:251

 HP:34571

 MP:45720

 攻撃力:3524

 防御力:2028

 すばやさ:12450

 スキル:レベル上限開放 / 限界(レベル99)を越えて成長できる

 累積経験値:+++++/ 次のレベルまで:*****



 なんだ、この数値。

 規格外の俺を越えてやがる。


「くくくっ。はーっはっはっはっ! 時の牢獄と、レベル上限解放スキルを組みあわせてつくった、最強のステータス! 恐れおののけ! 世界は再び、この殺戮魔王ヴァバラーグを恐れるのだ。ステータスウインドウを見ているのは、アーサー、貴様だけではない! 主要な都市の上空にも、同じ物が出現している! これが世界への宣戦布告だ! 世界よ恐怖しろ! 愚民どもよ怯えろ! 闇の者どもよ、喜べ! 我が再び世界を支配するぞ! さあ、殺戮の始まりだ! はーっはっはっはっ!」


 ゴゴゴゴゴゴゴ……。


 ドサッ……。


 ドサッ……。


 地下空洞にいた奴隷兵士が次々と倒れていく。


「最強の肉体を手に入れた今、もはや奴隷兵士は不要。くっくっくっ。奴隷化スキルを解除したとたん、我が闇のオーラに気圧されて、もは虫の息。くっくっくっ。はーっはっはっはっ! 先ずはアーステール家。次にリュミエールとノワールだ。憎き王族どもをひとり残らず皆殺しだ! はーっはっはっはっ!」


「そうはさせん!」


 下の方から、決然とした声が響き渡った。


 俺がぶち破った穴ではなく、扉を開け、堂々とシャルロットが入ってくる。


「殺戮魔王ヴァバラーグ! 貴様の好きにはさせん!」


「シャル! 駄目だ! こいつは俺より強い!」


「分かっている! 恐怖で足が震えそうだ。だが、ここは退けん! 殺戮魔王を地上に解き放てば、何万、何十万もの人々が死ぬ。そのようなことはさせん!」


「駄目だ! 逃げるんだ!」


 今すぐ、穴から出て、シャルロットの前に立ちたい……!


 だが、背中に感じる重みや、周囲の圧で分かる。

 俺がこの穴から出た瞬間に、地下空洞は崩落する。

 シャルロットを護ることはできるかもしれないが、獣人の子供が助からない。


 それに、地下空洞にいる数百人の奴隷は、魔王に操られているだけの哀れな被害者だ。埋めて見殺しにするわけにはいけない!


 ここで、魔王をなんとかするしかない!

 だが、動けないのにどうやって。


 俺の光のステータスウインドウは、魔王の闇のステータスウインドウには敵わない……!


 どうしたらいいんだ!

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