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ステータスウインドウ無双。異世界で最もスマートな使い方  作者: うーぱー
第6章:生意気なバカップルをざまぁする
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28話。逃げてきた2頭の馬に乗っていた人間がイキりだした

 背に人間を乗せた馬が2頭逃げてきた。


 背後の決着を知らないから、まだ馬は恐怖している。落ち着かせて止めてあげよう。


「サフィ。あの馬を止める。馬の正面には立たないで。街道から出て」


「みゃ」


 馬は目が顔の横にあるから、広い範囲を見渡せる反面、正面の視界が限られている。だから、真正面に立つと衝突の危険がある。


 基本的に肉食獣は正面の獲物を狙うために、目が顔の前についている。猫とかライオンとか。正面に2つの目は、距離感を掴みやすい配置と言える。


 馬やカピバラのような襲われる側の草食獣は、目が顔の横についていて視野が広くなっている。危険な猛獣が近づいてきたら、いち早く気づくことができる。その一方で、正面があまり見えていない。


 動物園や牧場で餌やり体験をすると、人間は草食獣の口の前に餌を差しだすが、動物はそれが見えていない可能性がある。人間の手が見えないから、間違えて指をかむ恐れがある。


 草食獣には臆病な動物が多いので、彼らから見えづらい正面からではなく、横方向から近づくと警戒されにくい。触れあいや餌やりは、横からだ。


 とはいえ、真っ正面から走ってくる馬に進路を譲ると、止めることができない。恐怖で暴走しかけているから、早く止めてあげたい。

 馬は暴走しすぎたりストレスを感じすぎたりすると、死んでしまうこともある。


 俺は敢えて街道のど真ん中に立ち、2頭の中央に陣取る。


「ステータスオープン。弱く点滅!」


 ポスターのような巨大なステータスウインドウを出し、驚かさない程度に光量を絞ってゆっくり点滅させ、馬に俺の存在をアピールする。


 正面の障害物に気づいた馬が、全力疾走(ギャロップ)から速歩(トロット)に緩める。


 俺は後方に歩きながら馬と歩調を合わせ、優しく声をかける。


「大丈夫だ。くまもんは退治した。もう安全だよ。どーう。どう。どーう、どう」


 馬に安心感を与えるに、俺は穏やかに声をかける。


「みゃあみゃあ」


 サフィも何か言っている。(うみゃ)語だろうか。


 馬は勢いを落としていき常歩になり、やがて脚を止めた。


「よーしよし。賢い子だ。もう大丈夫だぞ」


 さいわいなことにアーサーは貴族の息子として乗馬経験がある。

 実家には馬の世話係がいたが、アーサーも世話を手伝っていた。馬にはなれている。


「ブルルルル」


(うみゃ)がありがとうって言ってるみゃ」


 俺はサフィと一緒に馬の頭をやさしく()でる。


「可愛いなあ。よしよし」


「可愛いみゃあ。よしよし」


 俺たちが馬を可愛がっていると――。


「この、馬鹿馬!」


 ガッ!


 馬の背中に乗っていた人間が、いきなり馬の後頭部を殴りやがった。


「いきなり暴走しやがって! 僕やキャスリンの服が泥だらけになったじゃないか! この馬鹿!」


 男が再び腕を振り上げる。


「やめろ! ステータスオープン!」


「ぐわあああああああああっ! 目があああああっ! うわっ、ぎゃあああっ!」


 ドサッ!


 顔を押さえながら仰け反った男は、落馬した。足が鞍の(あぶみ)に引っかかったままなので、男は下半身が浮いた半吊り状態になる。


「きゃあ! マーク! なんてことするのよ、この乱暴者!」


 もう1頭の馬に乗っていた女が(わめ)いた。

 馬が悲しそうな顔で、耳をぺたーんと下げる。


「あのなあ。お前ら。馬が逃げてくれたおかげで、熊モンに殺されずに済んだんだぞ。足場が悪いんだし、熊モンは多分だけど短距離なら馬より速いぞ」


「知らないわよ! 買ってもらったばかりのお気に入りの服が泥だらけよ! 泥地を走るなんて馬鹿よ! すれ違った白馬の女が、私たちの進路を妨害したのよ! 参事会役員(※)のパパに言いつけてやる!」


 ※:都市の政治を担う偉い人。現代日本だと、市議会議員に近い。参事会役員は裁判権や徴税権も持つため、議員より権力が強いと言える。また、選挙で選ばれたわけではなく、金持ちやギルドの長など、権力者がその地位に就く。


「そ、そうだ! 僕もパパに言いつけてやる! 僕のパパはニュールンベージュの衣料品問屋のボスなんだからな! ぼさっとしてないで、早く俺の足を(あぶみ)から外せ! この馬鹿!」


「お、おう……。つまり、おふたりはニュールンベージュのお偉いさんの子どもってわけね」


 俺、そこの元領主の息子だし、次の領主になるかもしれないんだが……。

 いや、まあ現状だとただの職業不詳の無職だが。

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