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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
幕間㉒

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閑話㉒ー7 翠の大冒険②

 立ち込めていた土煙が収まると、翠の視界に飛び込んできたのは想像を絶する光景だった。先ほどまであった岩山やモンスターは消え去り、すべてが瓦礫と化したフロアの姿が露わになる。


「……えーっと、これはいったいどういうことだろう?」


 予想をはるかに超える惨状を目の当たりにし、額から大量の汗が流れ落ちる翠。


「一瞬でフロアを()()させるなんて、とんでもないモンスターが潜んでいたんだね! うん、きっとそうなんだ!」


 自分に言い聞かせるように声を上げるが、虚しくフロア内に響き渡っていた。


「ど、どうしよう……このままじゃ絶対に怒られる……」


 慌てた翠が顔を左右に動かして真っ青になっていると、背後から微かに声が聞こえてくる。


「なんかすごい振動と爆発じゃなかったか?」

「うむ、どうやら三階層みたいじゃな」

「なにか大きな異変が起こっているかもしれないわ。早く見に行った方がいいんじゃない?」


 どんどん近づいてくる声に全身から血の気が引き始める翠。


「やばいやばいやばいやばい……見つかったら大変なことになっちゃう……早く隠れないと!」


 翠が慌てて周囲を見渡すが、完全に砕け散ったフロアに隠れるような場所は見当たらない。焦る気持ちが加速する中、先ほど聞こえた声がどんどん近づいてくる。


「と、とにかくここから脱出しないと! そ、そうだ! 四階層へ逃げ込んじゃえばいいんだ!」


 名案を思い付いたように翠の顔が一気に晴れやかになる。そして、勢いよく地面を駆け出し、三階層の出口に向けて脱兎のごとく駆け出していく。幸いなことにフロアを更地にしてしまったおかげで、走りやすくなっていた。


「ふふふ。岩も無くなって、邪魔するモンスターもいないからすごく快適だね。でも、遊んでもらえないのは少し寂しいけど……今は早く逃げないと、()()捕まっちゃうから!」


 翠の脳裏に浮かんだのは、鬼の形相で怒っているルナの姿だった。


「ご主人様たちはきっと笑って許してくれると思うけど、ルナさんは絶対怒るだろうし……ほとぼりが冷めるまで、隠れているのが正解だよね」


 ルナが聞いたら『誰のせいだと思っているんだ!』と言われかねないセリフを呟きながら駆け出していく。するとすぐに三階層の出口に到着し、その勢いのまま通路を駆け抜けていく。


「この勢いのまま行けば、すぐに四階層にも到着しそう……って、ストップ!」


 薄暗い通路の途中で急ブレーキをかけて立ち止まる。そこにあったのは、さきほどから探していた休憩スペースだった。


「なんだ! こんなところにあったんだ! さてと……たしかどこかにおやつがあったはず」


 以前瑛士と来たときにおやつを食べたことを思い出し、笑顔で中に入っていく。すると、翠の動きに反応し、室内が一気に明るくなる。


「わ! 急に明るくなるからビックリした! でも、これならおやつを探しやすくなるから助かる」


 意気揚々と進み始めると、一番奥にあるシャワールームの前に到着する。そして、扉を足で引っ掻いて開けようと試みるが、固く閉ざされたままだった。


「むー! 全然開かないし!」


 苛立った翠が全身の毛を逆立てていたが、急に何かを思い出したかのように大人しくなる。


「あ、そういえば水が出る部屋の扉がこんな形をしていたような……閉じ込められたら嫌だし、あっちを探そっと」


 興味を失った翠が室内を物色し始めると、見覚えのあるビニール袋を発見する。


「あ! これはおやつの袋だ!」


 ついに発見した翠が意気揚々と駆け寄ると、笑顔から一気に鬼の形相へ変わって声を上げる。


「ムキ―! 誰だ、おやつを食べつくしたのは! 隠していたはずのものまで、全部なくなっているし!」


 駆け寄った先に落ちていたのは、食べつくされたお菓子の残骸だった。しかし、翠は気が付いていなかった。瑛士たちとここを訪れた後はずっと迷宮が封鎖されていたということに……


「四階層のモンスターのしわざに違いない! 許せない……せっかく楽しみにしていたのに!」


 おやつの袋についた歯形を眺め、怒りに震える翠。


「そうか……これは挑戦状なんだ? いいよ、受けて立とうじゃない……食べ物の恨みは怖いということを身をもって教えてあげなきゃね……」


 不敵な笑みを浮かべた翠が顔を上げると、休憩スペースを後にして四階層に向かって歩き始める。



「えー! 迷宮のモンスターって自分のいるフロアから出ることができないの?」


 しばらく後、合流したルナから真実を教えられた翠が大声を上げて驚く。そして、大きなため息を吐きながら、項垂れて呟く。


「はぁ……一番のとばっちりを喰らった四階層のモンスターたち、ご愁傷様だったな。まあ、瑛士のやつは翠の落ち込みようを何か勘違いしているし、結果オーライでいいのかもな」


 瑛士の腕に抱かれて落ち込む翠を眺めながら、視線をフロアの片隅へ向けるルナ。


(タイミングを見て処理だけしておくか)


 目を細めたルナは瑛士たちの後を追いかけるように、五階層へ向かって駆けていく。

 この直後、再び四階層で爆発が起こるのだが……真相は闇の中だった。

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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