第5話 迷宮内に存在する極秘資料?
三人が男性の先導で歩き始めると、迷宮の関係者専用出入口が見えてくる。すると、ルリが面白くなさそうな表情で声を上げる。
「なんじゃ、どこに連れていくかと思えば……関係者用の入り口ではないか」
「お前な……そもそも一般人は立ち入り禁止なんだから、文句を言うことじゃないだろ」
「ぶー。迷宮なんじゃから、もっと隠し扉とか秘密の通路とかあってもよいのじゃ」
瑛士から苦言を呈されたルリが頬を膨らませ、不貞腐れていた時だった。前を歩く男性が申し訳なさそうに話しかける。
「ルリ様、すみません……隠し通路というか一般には公開されていない搬入路があるにはあるんですが……専用のセキュリティカードが必要となるんですよ。まあ、我々のような警備をしている者だから知っていることもありますが……」
「な、なんじゃと! 迷宮の秘密を知り尽くしておるとはすごいのじゃ!」
話を聞いていたルリが、目を輝かせて喰い付く。その様子に気をよくしたのか、饒舌に話し始める男性。
「ルリ様にお褒め頂けて光栄です! 警備員の特権と言いますか……施錠や怪しい人物が入り込んでいないかなど確認するため、ある程度のところまでは入れるんですよね。会社から支給されている社員証が半分マスターキーのようなものでして」
「ほうほう! それはすごいのじゃ! 例えばどんなところに入れるのじゃ?」
「そうですね……基本的には一階層と二階層の一部にはなりますが、各店舗等のバックヤードや管理組合が使用していた倉庫と会議室とかですね」
男性が発した言葉を聞いて、瑛士と音羽の目が鋭く光ると小声で話し出す。
「管理組合が使用していた倉庫だと……」
「ちょっと気になるわ。おそらく前団体だと思うけど、何か面白い資料が眠っていそうじゃない?」
「たしかにな……ちょっと探りを入れてみるか?」
顔を合わせると小さく頷く二人。すると、意気揚々と話す男性に瑛士が声をかける。
「すみません、ちょっとお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「あ、はい。大丈夫ですよ。何か気になる事でもありましたか?」
「ええ、先ほどのお話で出た管理組合が使用していた倉庫の件なのですが……今は使われていないのでしょうか?」
言葉を選びながら瑛士が問いかけると、男性は少し間を開けてから話し始める。
「詳しいことはわからないのですが、管理団体が変わった今でもその場所は手付かずだったと思います」
「なるほど……ありがとうございます。ちなみに倉庫を見ることは……難しいですよね?」
瑛士が気になっていたことに踏み込んで聞くと、男性は苦笑いを浮かべながら答える。
「そうですね……ルリ様の関係者であればと言いたいところなのですが、さすがに難しいかなと思います。関係者専用のフロアというのもあるのですが、倉庫自体に何重ものセキュリティがかかっていると聞きました。自分も一度だけ同行させていただいたことがありますが、入退室がかなりめんどくさいなという印象でしたね」
「ですよね、機密情報とかも保管されていそうですし」
少し残念そうな声で瑛士が話すと、ルリが少し苛立ったように声を上げる。
「こら、ご主人! 下僕が困るようなことを言うのではないのじゃ」
「へいへい、すみませんでしたー」
「む? なんかバカにされているようでムカつくのじゃ!」
気のない返事を返す瑛士を見て、声を荒げるルリ。すると、前を歩いていた男性が突然立ち止まり、三人に声をかけてきた。
「到着しました! こちらに来ていただけますか?」
声を聞いた瑛士たちが男性の前に集まるが、目の前にあるのは草に覆われた迷宮の外壁だった。
「どこに到着したというのじゃ? 関係者入口からは離れておるし、目の前にあるのは迷宮の外壁じゃぞ」
「そう言うと思ってました。ちょっとお待ちくださいね……」
怪訝そうな顔で話しかけるルリを見て、笑みを浮かべた男性がポケットから社員証を取り出す。そして迷宮の壁にかざすと、縦に入った継ぎ目が淡く光り出した。
「な、なんじゃ? 急に外壁が光りはじめたのじゃ!」
驚いたルリが呆然としていると、光を放っていた継ぎ目が音を立てながら左右に開き始める。するとソファーとテーブルが置かれた、応接室のような場所が現れる。
「な、なんじゃこれは……」
「驚かせてすみません。関係者が取引先と打ち合わせをするための応接室になります……っと言っても、誰も使わないのですが」
苦笑いを浮かべた男性が、右手で頬をかきながら話すが驚いた三人には聞こえていなかった。
「驚いたな……まさか迷宮にこんな場所があるなんて……」
「ほんとよ。でもここであればゆっくり話すにはもってこいよね」
「そうだな。いろいろ聞きたいこともあるし……邪魔される心配もなさそうだ」
瑛士と音羽が感心した様子で話していると、室内からルリのはしゃぐ声が聞こえてきた。
「二人とも何をしておるのじゃ! 早くこっちに来るのじゃ! このソファーはとんでもないぞ? ふかふかで飛び跳ねても優しく包み込んでくれるのじゃ!」
「あ! ルリ! 勝手に入るんじゃねーよ! それになんで飛び跳ねて遊んでるんだ!」
ソファーの上で飛び跳ねているルリを見て、瑛士が駆け寄っていく。その様子を見送った音羽が、男性に近寄って小声で話しかける。
「こんな素敵な場所を用意して下さってありがとうございます……遮音性もありそうですし、よほど聞かれたくないことがあるとお見受けしますが、違いますか?」
問いかけられた男性の表情が一瞬強張るのを音羽は見逃さなかった。
「ええ……隠すようなことでもありませんが、おそらく他の人に話しても信じて頂けないと思いまして……」
先ほどまでの笑顔とは一転し、暗い表情で答える男性。
彼が瑛士たちに相談したい内容とは――どんなことなのだろうか?
最後に――【神崎からのお願い】
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