第3話 切り裂いた先にいたのは?
「みんな、少し下がっていてね……ちょっと何が起きるか予想できないから」
刀を構えた音羽が正面を睨みつけたまま、後ろに控える二人に声を掛ける。
「わかった。ルリ、防御結界を張れるか?」
「は? 防御結界じゃな、わかったのじゃ」
瑛士の問いかけを聞き、慌ててタブレットを出現させると手早く操作を始めるルリ。数秒ほど格闘すると、二人と音羽の体を纏うように緑色に輝くオーラが出現する。
「これで大丈夫なのじゃ。通常の防御結界では動きが制限されてしまうから、対象者のじゃまにならないタイプを選んだのじゃ」
ルリの説明を聞いた音羽が、口元を釣り上げながら話しかける。
「さすがルリちゃん、私まで気にかけてくれて嬉しいわ。これで心置きなく全力で技を出しても大丈夫よね?」
「もちろんなのじゃ! わらわの結界は少々の衝撃で破れるようなものではないのじゃ!」
問いかけを聞いたルリは、胸を張って自信満々に答える。その言葉を聞いた音羽は前を向いたまま、小さく息を吐くとゆっくり目を閉じて構えを取るとその場の空気が一気に張り詰める。
「ルリ。ドヤるのはいいが、少し後ろに離れたほうがいいぞ」
空気が変わったことを感じ取った瑛士は、未だ胸を張ってドヤ顔をしているルリに声をかける。
「む? ご主人はわらわの結界が耐えられないとでも思っておるのか?」
「そうじゃない。お前の結界がどれほど強力か身を持って知っているが、音羽の近くにいると危ないぞって話だ」
「なぜじゃ? 音羽お姉ちゃんが全力の一撃を出すのであれば、近くで見ておかねばならぬじゃろ?」
言葉を聞いたルリが少し苛立ったように返事をする。すると、瑛士はため息を吐きながら話しかける。
「あのな……近くで見るのは構わないが、後で文句言うなよ?」
「何を言っておるのじゃ? わらわの実力を過小評価するのではないぞ!」
「まあ、お前がいいって言うなら好きにしろ……俺は下がらせてもらうからな」
言っても聞かないルリに呆れた瑛士が、諦めたような表情で後ろに下がっていく。彼の様子を見たルリは笑みを浮かべ、小馬鹿にしたように呟く。
「ふふふ、ご主人は心配性じゃのう。こんなチャンスはそうそう訪れないからのう」
笑みを浮かべたルリが腕を組み、目の前で構えを取る音羽を見つめる。すると音羽が呼吸を整えると目を開き、柄に右手をかけて声を上げる。
「世界を隔てる見えぬ壁よーー我が刃よ、切り裂け! 虚空一閃!」
言い終えると同時に刀を振り抜くと、空間の中央に一筋の閃光が走る。しかし、その光もすぐに消えてしまい、先程と変わらない景色が広がっていた。
「ど、どうしたんじゃ……何も変化がないとは、音羽お姉ちゃんでも無理じゃったということか……」
変化のない様子を見たルリが思わず言葉を漏らした時、音羽がゆっくり鞘に刀を収めながら話しかける。
「ルリちゃん、終わったわよ。あ、そうそう……もう少し離れていたほうがいいかも」
「へ? 何を言っておるのじゃ?」
意図する意味がわからずルリが聞き返した時だった。鞘に納めた刀の音が響き渡ると同時に目の前の景色が上下左右に動き始めた。
「え? な、なんで空間が四分割になるのじゃ? というか景色は刀で切れるものじゃったのか?」
目の前で起きている現象に理解が追いつかず、混乱したルリが声を上げた時だった。左手に刀を持った音羽が、彼女の前に立ちふさがるように現れる。
「音羽お姉ちゃん! いつの間に現れたのじゃ?」
「ルリちゃん、落ち着いてね……いいと言うまで目を開けちゃダメだからね」
「わ、わかったのじゃ……」
声色は落ち着いていたが、どこか重みのある雰囲気を感じて素直に従うルリ。その様子を確認すると、音羽が口を開く。
「さてと、私にケンカを売るとは面白いことをしてくれるわ。でも、これで終わりよ……爆」
言い終えると同時に四分割された空間の中央にまばゆい閃光が走り、爆発音が響き渡る。そして、ガラスが割れるような音とともに、目の前に広がる景色が砕け散ると凄まじい爆風が三人に襲いかかる。
「な、何が起こったのじゃ!」
音羽が前に立っていても防ぎきれないほどの爆風が襲いかかる。悲痛な叫びを上げ、立っていることがままならなくなったルリは四つん這いになってしまう。
「ルリちゃん、もうすぐ収まるから……ちょっと踏ん張っていてね」
後ろを振り返った音羽が優しく声を掛けるが、必死に堪えるルリにはほぼ聞こえていなかった。
「な、なんという衝撃なのじゃ……結界をはっているのに目を開けることすらできんのじゃ!」
悲痛な叫び声を上げるルリに対し、背後から近づいてきた瑛士が声を掛ける。
「……ルリ、しっかりしろ。もう目を開けてもいいんじゃないか?」
「その声はご主人なのか? 何を言っておるのじゃ! こんな嵐の中なのじゃぞ」
「えーっと……ルリさん、落ち着いて話を聞いてほしいのだが……もうとっくに収まってるぞ?」
「へ? どういうことじゃ?」
瑛士の話を聞いたルリが恐る恐る目を開けて顔を上げると、笑いをこらえた音羽と瑛士が見下ろしていた。
「ルリちゃん……もう大丈夫だからね……」
「お前な……嵐はとっくに収まってるのに必死すぎだろ、くくっ」
一瞬何が起こったのかわからないルリが二人の顔を交互に見ると、一気に顔が赤くなる。
「にゃ―! どういうことにゃのじゃ! わらわが必死に堪えていたのはなんだったのじゃ!」
茹でダコのように顔を真っ赤にしたルリが両手を振り回して、声を上げた時だった。
「あ! ルリ様たちこんなところにいたんですね! 会えて良かったです……」
背後から聞き覚えのある声が聞こえると同時にルリの顔が強張る。
彼女たちに声をかけてきた人物は誰なのか?
最後に――【神崎からのお願い】
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