ベタオリ
「今回はベタオリについて教えるさ。今まで牌効率などやってきたけど、それは全部アガるための技術……攻撃することだけだったんさ」
「麻雀には防御もあるんですね!」
「本当は初心者には、もっとアガる経験が必要なんだけどさ。ひらくの才能なら、すでに平気なはずなんさ」
「にゃひぃっ! そ、それほどでもぉ~」
「麻雀はどんなに極めても25%がアガリの上限なんさ。流局なども含めたら、もう少し低いさ」
「単純計算したら4人のゲームで他家が3人いますからね。他のアガる確率が75%です」
「25%しかアガれないなら、残りの75%は何をすればいいのか、わかるかさ?」
「もちろん全力で4メンツ1雀頭を作りにいきます! 4回のうち3回空振りでも、手数を増やせば、もっとアガれます!」
「それが初心者によくある勘違いなんさ。実は残り75%は、手を諦めて防御に回るんさ」
「えぇ!? そうなんですか?」
「厳密にはアガれそうな手だけ、全力でアガリにいくんさ」
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東一局 東家 ドラ5s
配牌
[456m 456p 4555678s 西]
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「ドラ6跳満から……ダブリーなら倍満確定の3-6-9s三面張ですね」
「極端だけど、これは誰でも押す手なんさ。じゃあ次のこれは……」
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東一局 東家 ドラ5s
配牌
[124m 25p 1479s 西北白發中]
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「天国と地獄みたいになってます……」
「この手を仕上げようと、全力を尽くす打ち手は滅多にいないんさ。毎局で与えられる手と、ツモの良し悪しは違うんさ。その中で自分は『押す』のか『引く』のかを決めないといけないんさ」
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東一局 東家 ドラ5s 6巡目
西家からの先制リーチ
手牌
[55m 12356789p 56s 西][ツモ牌 7s]
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「ドラ2で高め一気通貫まで見える手が聴牌。これは当然追っ掛けリーチさ」
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東一局 西家 ドラ5s 6巡目
東家からの先制リーチ
手牌
[13457m 278p 3349s 發][ツモ牌 4p]
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「一方これは、とてもじゃないがいけないんさ」
「勝負にもなっていませんね」
「大事なのは、ここさ! こんなとき一体どうすればいいのかが大切なんさ」
「それ私もちょうど知りたかったです!」
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ベタオリのやり方
①リーチ者の現物を切る
東一局 西家 ドラ5s 6巡目
東家からの先制リーチ
手牌
[13457m 278p 3349s 發][ツモ牌 4p]
この場面で見るのは、リーチ者の捨て牌。
東家の捨て牌
[南 發 1m 9s 2p 3s]
手牌のうち[發、1m、9s、2p、3s]が現物。
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「自分が捨てた牌では、絶対にロンアガリできないさ。振聴を利用して、同じ牌を切るんさ。このとき一番危険な、3sから連打するんさ」
「必ず中張牌からなんですか?」
「いいや、状況によるんさ。例えばリーチ者以外の捨て牌に[3s]があれば、それは二人への安牌。後の押しに備え『リーチ者だけに通っている牌』から落としていくんさ」
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東家からリーチを受けた状態。
捨て牌
[南 發 1m 9s 2p 3s]
ここで南家のツモ番。
打、4s。
南家の捨て牌
[西 東 9p 8m 3s 4s]
自身の手牌
[13457m 278p 3349s 發][ツモ牌 4p]
たった今捨てられた[4s]は安全だが、後の南家への安牌にもなる。[3s]も現物のため[34s]の打順が後になる。
残りの[發 1m 9s 2p]4枚の中で、一番危険な[2p]から先打つ。
――――――――――
「最初はピンと来ないし、安牌探しも難しいと思うんさ。だからまずはリーチ者の現物から切っていくことが肝心さ」
「主にどんな状況では、オリたほうがいいんですか?」
「簡単にいうと『リーチを受けた段階で二向聴以下』だったり『形も打点も悪い場合』さ。あとは自身が勝負にならないと感じたときさ」
「押すにも引くにも、経験が必要ですね……でも、よくわかりました!」
「ふふふっ、本当にわかったか……問題を出してみるさ」
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【問題】
ベタオリせよ!
東一局 西家 ドラ5s 6巡目
東家からの先制リーチ
東家の捨て牌
[北 1m 9s 3m 6s 5p]
手牌
[1135m 4457p 5689s 北][ツモ牌 4m]
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「えっと……北でしょうか?」
「ハズレさ。なぜひらくが北を打とうとしたのか、あたしにはわかるさ。345mで1メンツができたから、北を払って様子見としたんさ」
「はい、その通りです」
「それはベタオリとは別の技術なんさ。この手を進行しようとすれば宣言牌5pの跨ぎ筋、本命の4-7pを打つことになるかもしれないんさ。そこに辿り着くまでにさえ、何個も危険牌を持ってくるかもしれないんさ」
「欲を出した時点で、私のベタオリは失敗していたんですね」
「気概は買わなくはないけど……さすがにこの手はキツいさ。正解は5pさ。他家に鳴かれても構わないから、危険度の高い牌を先に打つんさ」
「今度こそ、わかりました! 判断がついた場合には実行してみます!」
「ベタオリについては、あたしも迷うときは多々あるさ。それを実戦で使いこなせるか……見せてもらうさぁ!」
ナオが雀リングを起動する。
「セットアップ! 雀牌!!」
麻雀が再開する――
【ポイントマッチ】
東四局 ドラ8s
南家 ナオ 7P
西家 ふうろ 6P
北家 ひらく 6P
東家 ひめる 8P
ひらく 配牌
[7m 1569p 11779s 南西發]
ドラ0。七対子の四向聴。
酷い配牌だ。バラバラ過ぎて、通常手よりも七対子のほうが近い。
牌理を切り開く。
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[7m 1569p 11779s 南西發][ツモ牌 1m]
打、5p。
[17m 169p 11779s 南西發][ツモ牌 2p]
打、6p。
[17m 129p 11779s 南西發][ツモ牌 南]
打、7m。
[1m 129p 11779s 南南西發][ツモ牌 7m]
打、7m。
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[1m 129p 11779s 南南西發][ツモ牌 8m]
打、2p。
三向聴。18m、19p、9s、西、發。7種21枚が有効牌である。
……まったく伸びない……。
「リーチ!」
ナオからの先制リーチ。
打、7s。
後手を踏んだ。
この手牌では、勝負にならない。
……ベタオリしかない……!
退路を切り開く。
まずはナオの河を見る。
ナオの捨て牌
[東 南 1s 3p 7s]
[1m 19p 【1177】9s 【南南】西發][ツモ牌 2m]
1s、7s、南のうちで、後の他家に危険な7sを先打つ。
打、7s。
さらに次巡に、7sを連打。
ナオのツモ。
打、4p。
ツモ。
[12m 169p 119s 南南西發][ツモ牌 4p]
打、4p。
ナオへの合わせ打ち。
他家の捨て牌にも気を配り、安牌を切っていく。
「ツモ!」
ナオ、倒牌。
[12344m 567p 34666s][ツモ牌 2s]
「リーチ、ツモは-2Pオールさぁ!」
東一局 ドラ2p
東家 ナオ 7P
南家 ふうろ 4P
西家 ひらく 4P
北家 ひめる 6P
ひらく 手牌
[123467m 36678p 36s]
ドラ0。三向聴。
有効牌は多数。
確定メンツ、123m、678s。メンツ候補、667m。
3メンツの3ブロック構成。面前手が主体となる。
ツモ。
[123667m 36678p 36s][ツモ牌 9s]
ツモ切り、9s。
引きが悪い。ターツの形成にすら、苦戦を強いられている。
「リーチ!」
ナオからの先制リーチ。
打、4m。
後手を踏んだ。
未だに三向聴な上に、メンツすらも不確定。これも勝負にならない。
もう一度、ベタオリ。
退路を切り開く。
ナオの捨て牌
[西 北 1p 東 7p 6p 3s 4m]
[123667m 3【667】8p 【3】6s][ツモ牌 【1p】]
6p、7p、3s、1pが現物。
6p連打と行きたいが、ひめるも6pを捨てている。
ここは3sからいく。
次巡。打、7p。
「ポン!」
ふうろが[777→p]と仕掛けてくる。
一副露。
打、8p。
ひらくに打順が回ってくる。
ツモ。
[123667m 【1】3【668】p 6s【西】][ツモ牌 7m]
打、1p。
ふうろにも通る、8pを温存する。
ナオのツモ。
打、3m。
「チー!」
ふうろが再び[←345m]と仕掛けてくる。
二副露。
打、3s。
ツモ。
[12【3】6677m 3【668】p 6s【西】][ツモ牌 【北】]
打、3m。
ナオが切った、3mから捨てる。
「ツモ!」
ふうろ、倒牌。
[2235p 456s][777→p][←345m][ツモ牌 4p]
「ツモは-1Pオールだね!」
東二局 ドラ6m
北家 ナオ 6P
東家 ふうろ 4P
南家 ひらく 3P
西家 ひめる 5P
ひらく 手牌
[45667m 2456p 2345s][ツモ牌 7s]
打、2p。
ドラ3。一向聴。
確定メンツ、456m、456p。メンツ候補、67m、2345。
5メンツの5ブロック構成。面前手が主体となる。
絶好の牌姿。攻勢に回るときがやってきた。雀頭を確立させ、好形リーチを打ちにいく。
「リーチ」
ひめるからの先制リーチ。
打、4s。
後手に回る。
だが今局は引かない。
ツモ。
[45667m 456p 23457s][ツモ牌 5s]
「リーチ!」
打、7s。
5-8m待ち聴牌。
リーチ、断么九、平和、ドラ4。7翻は跳満。
追いついた。
捲り合いに突入する。
ひめるのツモ。
打、1s。
ひらくのツモ。
打、3s。
ひめる、ツモ。
打、7m。
ひらく、ツモ。
開牌。
八萬!
「ツモ!」
倒牌。
[45667m 456p 23455s][ツモ牌 8m]
「リーチ、ツモは-2Pオールです!」
ナオ 4P
ふうろ 2P
ひらく 3P
ひめる 3P
――東三局
―― 中断 ――
「早速ベタオリも活用していた様子だったさ。アガリ諦める……簡単なように見えて、意外に難しい行為なんさ」
「メンツやターツを崩してでも、手牌の進行を止める……時には諦める精神力も、ベタオリに必要な技術なんですね」




