↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MBTI勇者〜同じストーリーで勇者の性格が変わったら〜  作者: 亀丸物産


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/18

第6話 異世界に転生した俺、勇者になる(INFJ / 提唱者 ver)

 佐藤悠、二十八歳。

人の感情の機微や、言外の痛みに敏感すぎる性分だった。

トラックに跳ねられ、白い空間で女神から「勇者として魔王を討伐してほしい」と言われた時、俺が感じたのは栄誉ではなく、胸を締め付けるような切なさだった。


「女神様……魔王が世界を滅ぼそうとする理由を、あなたはご存知なのですか? 誰かを傷つけず、対話によって救う道はないのでしょうか」

「えっ……? 魔王は邪悪な存在です。倒すしかありません……」

「……分かりました。ですが俺は、奪うためではなく、悲しみの連鎖を断ち切るために力を使います」


 与えられたチート能力を、他者を守り、癒すための誓いとして受け止め、俺は異世界へ降り立った。

     

 森で襲いかかってきた巨大な狼。その瞳の奥にある脅えを見抜いた俺は、武器を構えなかった。


「大丈夫だ。お前を傷つけはしない」


 チート級の波動魔法を『包容の光』へと変え、穏やかに差し出す。

狼の殺気はスッと消え、傷ついた足を俺に委ねるように、静かに身を寄せた。

首のペンダントを隠し、静かに街へ入った俺だったが、他者の苦しみを放っておけない性分が災い(幸い)し、行く先々で病や争いを解決していった。結果、その慈愛の噂は瞬く間に広がり、王城へ招かれることとなった。


「よくぞ来た、勇者よ」


 玉座の間。国王の傍らに立つ金髪の少女――王女エレナエレナは笑っていた。

けれど、笑顔なのに指先だけがわずかに震えている。


「初めまして、エレナ様。……無理をしていませんか?」


「え?」


「笑っているのに、少しだけ苦しそうに見えました」


 思いがけない言葉に、エレナの青い瞳が大粒の涙で潤む。

剣士レオン、忍者ミア、魔法使いリリア。仲間たちもまた、俺の静かだが揺るぎない覚悟を感じ取り、深く頷いた。


「悠様……あなたとなら、本当の平和を見つけられる気がします」

     

 俺たちの旅は、傷ついた世界を巡る「対話と救済の旅」だった。


「悠! 隣の村が魔物に襲われているわ!」


「彼らは村を襲いたいわけじゃないんだ、リリア」


「じゃあ何なの?」


「森の食料が枯れている。だから村まで降りてきたんだ。なら、人間だけが食料を独占する必要もないだろう」


 俺は前線に立ち、チート能力で広大な領域に豊かな実りをもたらす聖域を展開した。食料が確保できたことで戦う意味を失った魔物たちは静かに森へと帰り、村人たちは涙を流して感謝した。

野営の夜。焚き火の爆ぜる音を聞きながら、エレナが俺の隣にそっと腰かける。


「悠様は……どうしてそこまで他人に優しくできるのですか? ご自分が傷つくかもしれないのに」

「誰かが耐えている痛みを知りながら、見過ごす方が苦しいからです。エレナ、この旅が終わったら、俺は誰もが理解し合える居場所を作りたい」

「……素敵な夢ですね。ですが、誰かを救う人にも、救われる場所が必要なのではありませんか?」


悠は言葉を失った。


「……そんな考え方、したことありませんでした」


 エレナは俺の手の上に、自分の温かい手を静かに重ねた。

     

 魔王城、玉座の間。


「よく来たな、勇者よ――我が命を奪いに来たか」

「いいえ、魔王。俺はあなたを『理解』しに来ました」


 俺は剣を抜き破り、ただ一歩踏み出した。


「な……何を言っている!? 我は闇だ! 世界を滅ぼす災厄だぞ!我は……人間を憎んでいるんだ」


「はい」


「何度も和平を求めた。だが、奴らは我らを恐れ、拒絶した」


「はい」


「だから我は、人間を滅ぼすと決めた!」


「……それでも」


俺は魔王をまっすぐ見つめた。


「本当は、誰かに分かってほしかったんじゃないですか?あなたは長きにわたり、人間たちの憎悪と拒絶を一人で受け止めてきたのでしょう。その孤独が、あなたを魔王に変えた」


 俺のチート能力――あらゆる心象を透過し、魂を包み込む『全調和の光』が玉座の間を満たしていく。


「馬鹿な……温かい……こんな光、我が許すはずが……」

「もう苦しまなくていい。あなたの痛みを、俺が分かち合います」


 光の中で、魔王の禍々しい姿が解け、一人の寂しげな魂へと還っていく。

戦いではなく、受け入れることによる救済。魔王は涙を流しながら、静かに永い眠りについた。

     

 それから一年。

憎しみの連鎖が立ち切られ、生きとし生けるものが調和する世界で、俺は王城の庭園にいた。


「悠」


 ドレス姿のエレナが、まっすぐな歩みで俺のもとへやってくる。


「私は……あなたが好きです」


 彼女の眼差しは、澄み切った空のように優しかった。


「強いからでも、世界を救った勇者だからでもありません。誰の痛みも突っぱねず、私の心の奥底まで包み込んでくれた……佐藤悠という人の優しさと魂を、心から愛しています」


 俺は彼女の手を優しく包み込み、引き寄せて抱きしめた。


「エレナ。俺の描く理想の世界には、最初から君の笑顔が必要だったんだ」


「私の……?」


「うん。旅の途中で君が笑っていると、俺は『この世界を守りたい』と思えた」


「……悠様」


「だから、これからも隣で笑っていてほしい」


 こうして俺は――。

信念と慈愛の心で世界と向き合い。

対話と理解によって魔王の孤独を救い。

そして――世界で最も深く心を通わせ合える最愛の伴侶を手に入れた。

INFJ(提唱者)

・特徴:理想主義、深い洞察、慈愛

・活躍スタイル:相手の痛みや孤独を見抜く。「全調和の光」で魔王の心を包み込み、対話で救済。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。