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MBTI勇者〜同じストーリーで勇者の性格が変わったら〜  作者: 亀丸物産


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第5話 異世界に転生した俺、勇者になる(ENTP / 討論者 ver)

 佐藤悠、二十八歳。

元・企画開発部のアイデアマンにして、口喧嘩で負けたことがない天性の屁理屈王。

トラックに跳ねられ、白い空間で女神から「勇者として魔王を討伐してください」と言われた瞬間、俺の脳内に悪戯心が芽生えた。


「ちょっと待って女神様。『魔王を倒す』って、誰が決めたルール?」


「え?」


「そもそも魔王って何? なんで魔王なの? 魔族側から見たら、人間のほうが侵略者って可能性は?」


「え、えっと……」


「あ、いいね。その顔。どうやら誰もそこを考えてなかったみたいだ」


 チート能力? 最高の「遊び道具」を手に入れた俺は、爆笑しながら異世界へダイブした。

     

 森で突進してきた巨大な狼に対し、俺は武器を構えるどころか手を振った。


「やあポチ! 突然だけど、俺を食うより『森の生態系の頂点として俺とビジネスパートナーになる』方が得だと思わないか?」


 狼が「ハァ?」と固まった隙に、俺はチート能力で超豪華な特製肉フードを生成して差し出した。

胃袋を掴まれた狼は、即座に俺の下僕(愛犬)となった。


「契約成立だな、ポチ」


「グルル」


「報酬は毎日三食。業務内容は護衛と道案内。福利厚生として昼寝も認めよう」


狼は尻尾を振った。


「……お前、交渉成立するの早すぎない?」


ペンダントを見せびらかしてド派手に王城へ乗り込んだ俺は、玉座の間で顔をしかめる国王と、美しい王女エレナの前に立った。


「勇者よ、魔王を倒してくれるな?」


「断る! ……と言いたいところだけど、条件次第だな。ねえ王女様、魔王を討伐したら俺と結婚させられる約束とか勝手に結ばれてない? 俺は自分で恋愛対象を選びたいタイプなんだけど」


 「えっ!?」と赤面するエレナ。周りの近衛兵や仲間たち――剣士レオン、忍者ミア、魔法使いリリアが「不敬だぞ!」と色めき立つ。


「まあまあ落ち着けって! 形式にとらわれた旅なんて退屈だろ? 俺のパーティーに入れば、世界で一番面白い景色を見せてやるよ!」


 呆然とするエレナは、クスッと笑って口を開いた。


「……ふふ、こんなに常識を壊してくれる方は初めてです。喜んでお供します、悠様!」

     

 俺たちの旅は、常識破壊の連続だった。


「悠! 隣の村が魔物に襲われてるわ! 戦わなきゃ!」


「甘いなリリア。敵を倒すだけが解決策か?」


 俺は村を襲っていた魔物(オークの群れ)の前に躍り出ると、大音量で叫んだ。


「お前ら! 人間を襲って奪う生活と、俺のプロデュースで『異世界激辛グルメ村』を開拓して観光収入で生活するの、どっちがサステナブルだと思う!?」


「人間に料理を売るだと? 我らオークの誇りを――」


「じゃあ質問。今の生活、楽しい?」


「……」


「毎日人間を襲って、食料を奪って、冒険者に追われる。結構大変じゃない?」


「……」


「だったら一週間だけ試してみようぜ。嫌なら元に戻せばいい」


 オークたちは顔を見合わせた。

結果、オークたちは改心して名物シェフとなり、村は観光地化して大儲けした。


「悠様……本当にすごいです。争わずに誰もが幸せになるなんて……」


 野営の夜、エレナが感心したようにスープを渡してくる。


「だろ? 定義に囚われちゃダメなんだよ。『敵=倒すもの』って思考停止が一番つまらない。エレナもさ、王女の枠にハマるのやめたら?」


「私の枠……ですか?」


「そう。王女だからこうしなきゃ、じゃなくて、エレナ自身がどうしたいかだろ。俺は君の『王女の仮面』の下にある、いたずらっ子な素顔の方が好きだけどね」


「……っ! もう、悠様はいつもそうやって私の心を揺さぶるんですから……」


 顔を真っ赤にするエレナを見て、俺はニヤリと笑った。

     

 魔王城、玉座の間。


「よく来たな、勇者よ――」


「やあ魔王! ぶっちゃけさ、なんで世界滅ぼしたいの? 暇なの?」


 魔王が重厚な口上を述べようとしたのをあっさり遮り、俺は玉座の階段に腰掛けた。


「な、なんだ貴様は!? 我は人間を滅ぼし、魔族の安寧を――」


「あー、領土問題とリソース不足ね! わかるよ。でもさ、人間を滅ぼしたら『魔法具の貿易』も『娯楽の輸入』もできなくなって結果的に衰退しない? そこで提案なんだけど――『魔導ハイテク産業特区』作らない?」


「……は?」


「魔族の魔導技術と人間の生産技術を組み合わせる。魔力結晶を大量生産して輸出。ついでに魔道具も作る。観光もやろう」


「そんなことが可能なのか?」


「さあ?」


「さあ!?」


「でも、できたら面白そうだろ?俺のチート知識と魔族の魔導技術を合わせれば、新しいエネルギー産業が作れる。戦争するより100倍儲かるぜ? 」


 魔王はポカンとしながら勇者から提案資料を受け取り、読み進めるうちに「……ホントにこれで魔力結晶が量産できるのか?」と目を輝かせ始めた。


「だろ!? 戦うのバカバカしくなっただろ! というわけで和平条約締結ね!」


 仲間たちも魔王軍も全員「……これで終わり!?」とズッコケた。

武力行使ゼロ。所要時間、プレゼン含めて15分。歴史上最も平和な魔王戦が終結した。

     

 それから一年。

人間と魔族が共存し、新しい文化とエンタメが爆発的に発展した世界で、俺は王城の庭園にいた。


「悠」


 ドレスを脱ぎ捨て、動きやすい冒険者風の服を着たエレナがやってくる。


「私は……あなたが好きです!」


 彼女は悪戯っぽく、けれどまっすぐな瞳で笑った。


「勇者としてではなく、退屈だった私の世界をひっくり返してくれた……世界で一番破天荒で大好きな男の人として、あなたを愛しています!」


 俺は一瞬驚き、すぐに大笑いした。


「参ったな」


 俺は笑った。


「世界をひっくり返して、魔王とも友達になって、やることは全部やったと思ってたのに」


 エレナを見る。


「まだ一つだけ、全然飽きないものが残ってた」


「……何ですか?」


「君だよ、エレナ」


 俺はエレナの腰を引き寄せ、そのまま額にキスをした。


「合格だよエレナ。俺の人生という退屈しのぎに、一生付き合ってもらうぜ?」


「ふふ、望むところです!」


 こうして俺は――。


 既存の常識を疑い。

敵だった魔族すら仲間に引き込み。

戦うことなく、世界の未来をひっくり返した。

そして――

どんな未来が待っているのか。

その答えを一緒に探したいと思える、最高の相棒を手に入れた。

ENTP(討論者)

・特徴:独創的、知識欲、常識打破

・活躍スタイル:テンプレを笑い飛ばすトリックスター。事業提案(プレゼン)で魔王と和平条約を締結。

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