優秀な侍従たち
「早速原因を突き止めるわよ」
サンビタリアが少女の服が消失した原因を探そうとすると、ミアが「これが原因じゃろうな」と荷物置き場から何か……誰かが設置した魔装を取り出した。
その動きには迷いが無く、真っ直ぐと手を伸ばして取り出したので、サンビタリアは驚いてミアを凝視した。だけど、スミレは驚かなかった。何故なら、先程ミアから魔装の残留した魔力が分かると聞いていたからだ。
「青くてフワフワした毛並みのボール……なの? ミアちゃんが片手でギリギリ持てるサイズなんて、思っていたよりも大きい魔装なの。私はてっきりノミサイズの小型魔装と思ってたなのよ」
「……ぬぬう。案外スミレ先生の言った事は当たっておるかもしれんのじゃ」
「どう言う事なの?」
「確かに原因はこの魔装だと思うのじゃが……」
ミアはそう言って見つけた魔装をスミレに差し出す。スミレは受け取ると、何かに気がついて眉根を下げた。
「既に魔装としての機能を停止しているなの。つまりこれは魔装から生成されたものか、一部に過ぎないか、ダミーの可能性もあるなの」
「うむ。しかし、厄介な事に他に残っておる魔力は感じられぬ。スミレ先生、つかぬ事を聞くが、使い捨ての魔装なんてあるのかのう?」
「無いなの」
「やはりそうか。そんな話、ワシも聞いた事が無いのじゃ」
ミアとスミレが話し合っていると、それを見ていたサンビタリアは歯を食いしばりミアを睨みつけた。
「魔装の残留魔力? ミア。まさか、スミレ先生に虚偽を言って騙しているのではなくて? 見損なったわ。魔装使用時に発生した魔力の残留は、私どころかクレラ先生でも分からない程の繊細なものよ。五歳のあなたが分かるわけないじゃない」
「ぬう? ワシは騙してなんかないのじゃ」
「どうだか。そうやって良い子ぶって人を騙して、周囲を味方につけるのがあなたのやり方だものね。どうせ犯人が残したその魔装だって、たまたま手を伸ばした先にあっただけでしょう?」
「そんな事無いのじゃ。今のもミミミを――」
「ふん。あなたと話していても時間の無駄よ。そのうさぎのぬいぐるみと遊んでいればいいわ」
うさぎのぬいぐるみとはミアの魔装であるミミミの事なのだけど、今は動きを止めてミアに抱かれているので勘違いされている。と言うか、ミアは魔装を人前で出す事が基本無いので、サンビタリアはミミミが魔装だと気が付いていなかった。
「サンビタリア。一つ聞いて良いなの?」
「はい。もちろんです。なんですか?」
「さっきから聞いてて気分が悪くなる事ばっかり言ってるなの。二人の関係は私には分からないけど、言葉を選んで言うべきなの」
「それは……」
「一応言っておくけど、これは立場だとかそう言う話では無いなの。人としての問題なのよ」
「……でも、私は王族として――」
「人払い完了しました~」
不意に聞こえた声。振り向くと、クリマーテがミアにニコニコと笑顔を見せていて、その背後にルニィがジト目でクリマーテを睨んでいた。そしてよく見れば、ヒルグラッセやサンビタリアの侍従が一人もいない。
「人払いなのじゃ……? っあ」
ミアは大事な事に漸く気がついた。
「サンビタリア殿下の侍従の前だったのじゃ!」
そう。普通に気にせず話をしていたし、なんなら本来なら分からない魔装の残留魔力を辿って犯人の魔装を発見している。正体を隠すと言っているのにこのありさまである。しかし、ミアの侍従は優秀だった。
ミアの侍従はサンビタリアが登場すると、知らぬ間にサンビタリアの侍従を部屋から追い出し、ミアの秘密を護り抜いたのだ。アホなミアと違い、なんともまあ優秀な侍従たち。ヒルグラッセの姿が見えないのは、誰も通さないように部屋の前で立っているからだ。
サンビタリアも自分の侍従が追い出されたのを知り、更に機嫌を悪くする。しかし、スミレに指摘されて直ぐと言うのもあり、サンビタリアはミアの侍従たちを睨むだけで口出しはしなかった。だけど、それはあくまで追い出した事への不満。サンビタリアは眉根を吊り上げて、ミアを睨み見た。
「ミア。仮に本当に魔装の残留魔力を読み取れるとして、それでもあなた程度では私には勝てない事を教えてあげるわ」
「う、うむ……?」
勝気なサンビタリアにミアが冷や汗を流し、サンビタリアが目の前に魔装を出現させる。その姿は合計三つの宙に浮かぶ正三角錐。ゆっくりクルクルと回転しながらサンビタリアの周囲を舞い、その内の一つが発見した魔装に近づいて、サンビタリアが微笑を浮かべる。
「さて、始めましょうか。私の三見聞」




