表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第一章 TS転生聖女はのじゃロリじじい
6/999

聖女が誕生する日(2)

 この世界には変わった風習が幾つかあるが、その一つが【お披露目会】と言うものである。お披露目会とは、“春”“夏”“秋”“冬”の季節ごとに行われる子供達を祝う行事の事で、それは必ず五歳になる季節に参加しなければならない。

 例えば、この世界では春の月は“の月”“うしの月”“とらの月”と言われているのだが、この三つの月のいずれかで産まれた子供は、五歳になる年の春の月の最後の日にお披露目会に参加をするのだ。そしてそれは夏と秋と冬も同様で、必ず季節のお披露目会に参加が義務付けられている。

 さて、そんなお披露目会だが、その中で一つ大きなもよおしがある。それは、魔力を検査して計り、魔法の属性を調べると言うもの。

 この世界には魔法が存在しているわけだが、個人個人で使用可能な魔法の属性が違っている。そしてそれがお披露目会に参加する事で、使用許可を得るのである。もちろん早い子であれば、検査するまでも無く魔法を使えるが、国の許可を得ない限りは使用を禁止されている。と言っても、それは公共の場でのみで、所謂いわゆる車の免許の様なもの。自分の土地の敷地内であれば使用は認められているのだ。尚、ミアが蘇生魔法をお披露目会前に王女の前で使ってしまっているが、特に問題にはならないだろう。何故なら、正体不明な少年が助けた事になっているし、身バレしても聖女として罪から除外されるからだ。

 少し話がズレてしまったが、詰まる所お披露目会とは国が子供を一人の国民として認める為の行事であり、誕生日を祝い歓迎する場なのだ。そしてそのお披露目会が、この日の晩に行われようとしていた。




◇◇◇




 村外れの丘の上でジェティとの話を終えると、ミアは肩を落としてトボトボと歩いていた。その原因はやはり王女の事だ。別れ際にジェティから聞いた話によると、今晩行われるお披露目会に王族が出席する事が決まっていて、ミアはそのお披露目会に出席する主役の一人なので顔を合わせる事になってしまう。


(何故じゃ? 何故なのじゃ? 今まで王族がこんな辺境奥地にある村の平民のお披露目会に参加するなど、聞いた事が無いぞ? あれか? 無礼な態度をしたワシを処刑する為に捜しておるのか?)


 ミアは心の中でそんな事を呟きながら、しょんぼりした顔で空を仰ぐ。空は気持ちの良い青空が広がっていて今日も平和だ。平和じゃないのはミアの心境だけだった。しかし、そんな心境も直ぐに無くなる。空を仰いだミアは、ふと、村の様子がいつもと違う事に気がついた。

 ここ、ダンデ村は農村なだけあって田畑が非常に多く、基本人通りは少ない田舎村。だけど、今日はやけに人がいる。しかもそれは村人では無く、何処から来たのか見た事も無い貴族ばかり。貴族たちが日傘を侍従に持たせて、村のあちこちで観光中だったのだ。そんな貴族が目に映る範囲で少なくとも二十人は超えていた。


「お貴族様が何故こんな田舎におるのじゃ……?」


 ミアは独り言ちで疑問を呟いたが、それに答える者はいない。しかし、答える者がいなくとも、理由なんて直ぐに分かる。


「王族を見に来たんじゃな……」


 再び独り言ちを呟くミアの答えは正解だった。チェラズスフロウレスの王族は普段人前に出ない。と言うのも勿論あるが、第三王女のネモフィラは国民たちからの人気が非常に高いのだ。そのネモフィラがこの村に来ていると言うのは既に知られていて、あらゆる地方から一目見たいと貴族たちが村まで押し寄せていた。と言っても、ネモフィラは既にこの村にいない。だけど、それを知っているわけも無いので、村に貴族がたくさんいるわけだ。


「確か今回の王族のお披露目会の見物は、表沙汰ではお披露目会を終えた王女様を国民に紹介する為とジェティの奴が言っておったな」

(どうせ真の狙いはワシを見つけ出して処刑する為じゃろうが……)


 独り言ちを呟いた直後に心の声で呟くミア。その顔は曇っていて、肩も思いっきり下がっている。と言うか、国民にネモフィラを紹介する為にこの村以外の町や村にも王族は行っていて、各地のお披露目会を見物しているので処刑がどうのは全く関係が無い。

 マイナスな事ばかり考え出してしまったミアは、そんな単純な事にも気づいていなかった。そもそも王族からのミア……と言うよりは、謎の少年への印象は好印象だが、それこそミアが知る由もない事。


「ぬぬう。せっかく前世で出来なかったワシの夢が、この世界で出来ると思ったんじゃが……。お披露目会を欠席出来んもんかのう? 母上に聞いてみるのじゃ」


 出来ません。と言う話は置いておいて、ミアの夢。それはジェティにも言っていた“のんびりと過ごしたい”と言うもの。と言うのも、これには海よりも浅い理由がある。


「前世では足腰が弱くなる八十まで働いて、仕事を辞めた後は余生を楽しむつもりが、こけて頭を打って死んでしまったからのう。だから、二度目の人生は前世で出来なかったスローライフを味わいたいのじゃ」


 と言うわけで、これがミアが前世で死んだ理由で夢の理由。ミアの前世の最後は本当にただの事故。足腰が弱くなってつまづいて、こけた時にコンクリートの角に頭を強くぶつけて亡くなった。なんともまあ不幸な事故である。あえて言うなら、この事故に関わったのが前世のミア本人だけなので、誰が悪いと言うものが一つもないのが救いと言える事。と、まあ、そう言うわけなので、ミアは今世ではのんびりと過ごしたい。それも、出来れば引きこもる勢いでだ。


「うむ。決めたぞ。帰ったら、母上にお披露目会の欠席を申し出て、王族から逃げるのじゃ」


 お披露目会の参加は義務なので出来ません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ