ペットの餌じゃないのじゃ作戦(2)
ミアがみんなを連れて城の中庭までやって来ると既に準備が出来ていて、二人のシェフが笑顔で出迎える。
「ミアお嬢ちゃん待ってたぜ。どうよこれ。言われた通りの妖人国の釜土にどんぶりだ」
そう言って出迎えたのは妖人の男グテン。長い鼻が特徴の天狗である。
「グテンのおかげでこの通りよ。ちゃんとイワシの稚魚も新鮮なものを用意したぜ」
そう言って出迎えたのはヒューマンの男カウゴ。体を鍛えている様で、シェフなのに筋肉もりもりのおっちゃんだ。
「おお! 本当に昔の日ほ……昔の本で見た通りの見た目なのじゃ。イワシの稚魚も生きておるし、これなら美味いものが作れるのじゃ。グテンさんにカウゴさん、二人ともありがとうなのじゃ」
「いいって事よ」
「どこで知ったかと思ったが、本で見たのか」
「う、うむ」
(日本で昔使われていた釜土に似てるなんて言えないのじゃ)
ミアは冷や汗をかきながら頷くと、背後でポカーンと口を開けて驚く王族や侍従の面々に顔を向ける。すると、ネモフィラが代表するように前に出て、ミアとシェフの二人を交互に見た。
「ミアは随分とシェフの方々と仲が良いのですね」
「うむ。最近こっそりルニィ達の目を盗んで毎日厨房に行ってるから仲良くなったのじゃ」
「そ、そうですか」
「いや。それよりも、グテンとカウゴってこんな性格だったの? いつも無口で真面目に料理を作ってるだけの印象しかない私としては、そっちの方が驚きなんだけど」
ランタナが冷や汗を流して話すと、それを同意するかのように侍従たちが頷く。しかし、それもその筈だ。ランタナが言ったように、この二人は本当に無口で全くと言っていい程に喋らず、普段は必要最低限以外の事は何も言わなかったりするのだ。こんなにも活き活きと喋って、しかもミアに向けるような笑顔を見た者はいないだろう。
因みに、ミアが目を盗んでと言っているが、実際はそう思ってるだけでバレている。そこはミアの立場を理解したうえで、ずっと自由に出来ないのは息が詰まるだろうとルニィが考えて、見て見ぬふりをしているだけだった。もちろん何かあったらいけないので、クリマーテとヒルグラッセと交代で見張りをしている。だから、この三人はシェフには驚いていなかった。
「はっはっはっ。確かに最初は不愛想だったのじゃ。ウケるのう」
「ウケるって、そりゃないぜミアお嬢。俺達は仕事を真面目に取り組んでいるだけなんだぜ?」
「カカカッ。いじけんなよ相棒。ミアお嬢ちゃんが言ってるのは本当の事じゃねえか」
「すまんすまん。ワシが悪かったのじゃ。それよりも早速始めるのじゃ」
「よしっ。やるぜ」
「カカカッ。流石は相棒。切り替えが早いな」
仲良し過ぎる三人の会話。そんな中で遂に天翼会や王族達の前で料理が始まる。ネモフィラとランタナ達がそれをポカンと眺めていると、水の精霊プリュイが空中に水を生み出して、それに乗って三人の輪の中に入ってい行く。
「アタシもお手伝いするんだぞ」
「精霊さんがお手伝いしてくれるのか? 嬉しいのじゃ」
と言う事で、プリュイが興味津々と目を輝かせて言うので、ミアも目を輝かせて喜んで受け入れた。そしてその様子を大多数の者達がほんわかした表情で眺める。そうして始まった“ちりめんじゃこ”作り。イワシの稚魚を塩茹でして、その後に干す工程があるので、それは魔法で短縮する。しかし、それとは別で、ミアは塩を使わずにイワシの稚魚を茹で始めた。
「あれ? おかしいんだぞ。ミアさんは塩を入れないのか?」
「うむ。ワシは“しらす”を作るのじゃ」
「しらすだぞ?」
しらすはちりめんじゃこと違って塩茹でしていないものである。シェフの二人は人数分を用意したり、魔法を使って干す工程をしたりと忙しくしていたが、ミアは必要な分だけ用意して終了。あっという間に出来上がる。
「後はどんぶりにご飯をよそって、その上にしらすをのせるのじゃ」
「あ! アタシ知ってるんだぞ。妖人の国の特産のお米なんだぞ」
「おお。流石は精霊さんなのじゃ。そうなのじゃ。これはグテンさんの生まれ故郷でとれたお米なのじゃ」
「ホッカホカで美味しそうなんだぞ~」
「うむうむ。そのままでも美味しいけど、しらす丼にして食べると、また違った美味しさがあるのじゃ」
「わああ。楽しみなんだぞ!」
ニッコニコのミアとプリュイ。このほんわか空間の破壊力は恐ろしいもので、この場でそれを見ていた殆どの者が和み癒され微笑んだ。しかし、そんな中、サンビタリアだけがミアをきつく睨んでいた。




