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マナーとは程遠い聖女

「ミア様ってリスみたいに食べるのですね」

「そうなのです。可愛いでしょう? ほっこりしてしまいます」

「はい。とっても」


 ネモフィラの寝室にて只今絶賛お茶会中。この場にはミアだけでなくリベイアもお呼ばれしていて、三人で仲良くお茶の時間を楽しんでいる。今は丁度ミアがクッキーをもぐもぐしていて、リスのように頬を膨《ふく》らませている所だった。

 さて、そんなミアだが口の中の物を全てごっくんすると、自分の話題をリベイアの話題に変えようと口を開いた。


「ところで、リベイアも試用入園に呼ばれたんじゃな」

「あ。はい。試用入園は各国で各年齢を三人ずつ参加との事で、ツェーデン様が是非私にと招待状を持って来て下さいました」

「リベイアが一緒に来てくれるのは嬉しいのですけど、サンビタリアお姉様が何か良くない事を考えているとしか思えません」

「流石にそれはないじゃろ。リベイアはサンビタリア殿下の派閥の娘じゃし、単純に自分の派閥の者を参加者の中に入れたかっただけだと思うのじゃ」

「あれ? ミア様はまだ知らないのですか?」

「む?」


 まだ知らないのかと聞かれてミアは首を傾げる。一体全体なんの事だろうと、直ぐにネモフィラに視線を向けると、ネモフィラは何故かニコニコと嬉しそう。


「実は私のパパ……あ。お父様がミア様の派閥に加入したのです。と言っても、表向きはまだサンビタリア殿下の派閥のままなので、サンビタリア殿下はそれを知らないのですけど」

「なるほどな……のじゃあ!? なんじゃそれ!?」

「レムナケーテ侯爵もミアの魅力に気がついたのです。リベイアが誘拐されたあの事件も、実はレムナケーテ侯爵がミアの派閥に入ったからこそ、罪が軽くなって不問となったそうですよ。この事を知っているのは、今はここにいるわたくし達とお父様とお母様とランタナお兄様と一部の侍従だけです」

「本当にミア様には感謝しているんです。お父様も以前より優しく私に接してくれますし、お母様も私やお父様を助けてくれたミア様ならと認めてくれました」


 リベイアが本当に嬉しそうに話してくれたけど、ミアの心境は複雑だった。何故なら、自分の派閥が着々と拡大しているからだ。メイクーが自分の派閥を作ったのは既に周知の事実で知っていたけど、まさか人が増えるなんて思わなかった。それに、派閥なんてあっても引きこもり計画にとって百害あって一利なし。表に立たされて引っ張りだこになり、大変な日々が約束されたようなもの。まだ城に来てひと月も経っていないけど、派閥と言うものがどう言うものなのかは、ネモフィラやランタナを見ていればミアにだってそれくらいは分かった。だから、ミアは顔を真っ青にして震えた。


「ミア様……?」

「な、なんでも無いのじゃ。父上と仲良くなれて良かったのう」

「はい。昨日もミア様のお話でついつい夜の遅い時間まで盛り上がってしまいました」

「ほ、ほお。ワシの話で……もっと別の話題で、例えば婚約者のランタナ殿下の話で盛り上がった方が良いのじゃ」

「ランタナ様のお話ですか? それは少し恥ずかしいです」


 リベイアが頬を染めて恥ずかしそうに俯《うつむ》く。


「ウブじゃのう」

「最近のリベイアはランタナお兄様ととても仲が良くて嬉しいです。将来は義理とは言え姉妹になるのですもの。わたくし達もずっと仲良くしましょうね」

「もちろんです。ネモフィラ様」

「うむうむ。ところで天翼学園児童部の試用入園期間は三ヶ月と言う事じゃが、その間は家に帰れず寮住まいだと聞く。何かしでかせば一発退園で家に帰されると言う事らしいのじゃが、帰されるだけで済むとは思えんのじゃ。それで聞きたいのじゃが、ワシは向こうに行っても大丈夫じゃろうか?」

「ミア様なら何も問題はないと存じますけど……」

「わたくしもそう思います。でも、帰されるだけでは済まないとは、どう言う事ですか?」

「ワシもまだ想像の中だけの話じゃけど、そこで粗相をしてしまった子は天翼学園の敷地に二度と足を踏み入れる事が出来ぬ気がしてのう。ワシ自身は貴族のマナーが未だに完璧にはなっておらぬ。この様な状態で大丈夫なのかと思ったのじゃ」

「そう言う事ですか。でも、試用入園までは一ヶ月ありますし、ミアなら大丈夫です。それに試用入園でそこまで厳しくはしないのではないでしょうか?」

「私もネモフィラ様のお考えに同意です」

「ぬぬう。でも、そうじゃなあ。女は覚悟が大事なのじゃ。ワシも覚悟を決めて、この一ヶ月でマナーを完璧にマスターしてやるのじゃ!」


 ミアは椅子の上に立ち上がって高らかに宣言して片腕を上げた。そう言うとこだぞ。と、マナーについて言ってやりたいが、今この場でそれを注意する者はいない。ネモフィラもリベイアもニコニコしながらミアの宣言を拍手していて、やはりこう言う所は二人ともお子様だった。しかし、近くで給仕をしているルニィが何か言いたそうな顔をしているので、きっとお茶会が終わった後にでも注意してくれるだろう。ルニィはアホなミアの侍従にして最後の砦とも言える良識ある侍女長だ。アホな主人にマナーを覚えてもらう為にも頑張ってほしいものだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 貴族の礼儀作法の基準がいかに馬鹿げているかを知らなければ、この学校は馬鹿げていると言えます。
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