仲良しな主従
「ミア。ここにいたのですね」
ミアとリベイアが桜の木の下で作戦会議をしていると、そこにフィーラが現れる。フィーラの姿を見た途端にリベイアが少し顔を強張らせて緊張気味になったけど、ミアはいつも通りに可愛らしい笑顔を向けた。
「おお。フィーラなのじゃ。ドレスが似合っていて随分と綺麗になったもんじゃなあ。ワシを捜しておったのか?」
ミアが自然と褒めるのでネモフィラはパアッと花を咲かせるように喜ぶ。だけど、それも直ぐに頬を膨らませたふくれっ面になり、ちょっと可愛げのある睨みをミアに向けた。
「捜していました。せっかくメイクーにドレスを着つけてもらって一番に見て貰おうと部屋に行きましたのに、ミアったらいないんですもの。ね? メイクー」
「はい。ネモフィラ様の仰る通りです。私も一番にミア様のドレス姿を拝みたかったです」
「はっはっはっ。お主等面白いのう。話の内容がかみ合ってないのじゃ」
「もう。メイクーの気持ちも分からなくはないけど、ミアに笑われて……あれ? ミアはドレスを着なかったのですか?」
「うむ。ワシはヒラヒラは苦手なのじゃ」
「そうなのですね。残念です……」
「はい。残念です……」
ネモフィラとメイクーが本当に残念そうに顔を俯かせると、それまで黙っていたリベイアが「あの」と声を出す。すると、漸くそこで気がついたのか、ネモフィラが少し驚いた顔でリベイアに視線を向けた。
「ご挨拶が遅くなってしまい申し訳ございません。今日はお招き頂いてありがとう存じます。ネモフィラ様」
「来てくれて嬉しいです、リベイア」
「む? リベイアを誘ったのはランタナではなくフィーラなのじゃ? 普通は婚約者のランタナが誘うと思うのじゃが」
「ランタナお兄様が、私が誘っても断られるかもしれないだろう? とか言って、わたくしに誘ってほしいと頼んできたのです」
「なんじゃそれ。情けないのう」
「ミアもそう思うでしょう? でも、ランタナお兄様にはいつも優しくして頂いているので、わたくしも一肌脱いだのです。あ、それよりも、二人はここで何をしていたのですか?」
質問を受けるとミアがリベイアを見て、リベイアが頷いた。ミアはそれを喋っていいと言う答えだと判断する。
「リベイアとランタナをラブラブにする作戦を考えていたのじゃ」
「ランタナお兄様とリベイアがラブラブ……え? リベイアはお兄様が嫌いでは無いのですか?」
「そ、それは誤解と言いますか……。私に勇気が足りていないだけなのです」
「勇気……ですか」
リベイアのランタナに対する態度をいつも間近で見ていたフィーラにとって、これはあまりにも予想外な展開だった。だから、目を大きく開いて驚き戸惑っていたのだけど、そんなフィーラを見てミアが「ツンデレと言うやつじゃな」なんて言うものだから余計に混乱して戸惑いが増す。しかし、それを側で見て聞いていたメイクーは「なるほどですね」と納得していた。
何はともあれだ。リベイアがランタナに実は惚れているが自分の立場の都合上で仲良くなれなくて、その事を相談しようと言う話は、いつの間にかラブラブ作戦に変わっている。そして、そのラブラブ作戦にはネモフィラとメイクーも加入する事が決定した。
そんなわけで四人はあーでもないこーでもないと話し続けていたが、いつの間にかパーティーが終わる時間になっていた。気が付けば、帰り支度をする貴族の従者たちの姿や、城の出口に向かう貴族たちが現れ始めた。
「もうこんな時間なのじゃ。続きは明日なのじゃ」
「ミア、明日は予定がギッシリ詰まってますよ」
「む? そう言えばフィーラの兄上と姉上が帰って来たから、明日は午後からの家族会議にワシも呼ばれておったのう。朝は勉強があって外出が出来ぬし、仕方が無いのじゃ。それなら明後日はどうじゃ?」
「明後日は……予定は無かった筈です。そうですよね? メイクー」
「はい。ネモフィラ様。もし予定があってもミア様の為に予定を全部無かった事にしましょう」
「それは流石に駄目ですよ」
メイクーの問題発言にネモフィラが苦笑して答えると、リベイアはそれを不思議そうに見る。
「お噂には聞いていたのですけど、ネモフィラ様は侍従の方とも本当に仲良くお話なさるのですね」
「え? 可笑しいでしょうか?」
「いいえ。とても良い事だと私は存じます」
「うむうむ。仲良しが一番なのじゃ」
ミアがそう言ってニコニコな笑顔になると、ネモフィラとリベイアも笑顔になる。だけど、メイクーだけは「しまった」と言いたげな顔で、勤務中の誰かが見ている前で公私混同してしまった事に反省した。




