表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第一章 TS転生聖女はのじゃロリじじい
18/999

タンポポ庭園の事件簿(7)

「そ、それは本当なのかい? ミア」

「うむ」

「なんと言う事だ。こんな事が……」

「娘が本当に申し訳ございませんでした! 私も娘と共にどのような罰も受ける覚悟が出来ております!」


 犯人が八歳のセルナーデだと知り、国王とランタナは驚愕きょうがくして怒りが何処かへ消えてしまう。侍従たちも耳を疑い、驚いて目を見開いていた。因みにメイクーはまだ療養中。


「セルナーデの部屋の中は幼い女子おなごのパンツで満たされておった。ですのじゃ」

「なら、ネモフィラの下着も見つかったのかい?」

「そんなもの探しとらんわ。ネモフィラ殿下も変態に盗まれたパンツなぞ、戻ってきても穿きたいなんて思わんじゃろう」

「それもそうか」

「それにしても、どうしたものか」


 国王がセルナーデに視線を移し、セルナーデは体を硬直させて顔を真っ青にさせながら目を泳がせる。


「まだ年端もいかぬ八歳の少女の犯行なのじゃ。親である村長が責任を取ればよい。それから責任の方法は被害者に盗んだパンツの返品では無く、お詫びの品か金を渡せばよかろう。それでも納得できない者がおるなら、話し合いでどうするか決めるべきじゃろうなあ。ですのじゃ」

「ふむ。それが妥当か」

「いいのですか? 八歳であれば私よりも一つ上です。自分で責任を負うべきでは?」

「よいのだ。ランタナ、お前の言いたい事は理解出来る。私は幼いお前に様々な責任を負わせている。しかし、それはお前が王族で王太子候補の一人だからだ。この娘にお前と同じものを求めるべきではないのだ」

(王太子候補? はて? この国の王太子は長男のアンスリウム殿下であった筈じゃが……)


 ミアの疑問は一先ず置いておき、ランタナは少し考えてから仕方が無いと国王の言葉に納得した。だけど、に落ちない事もあるようで、セルナーデの体を上から下まで見て眉を潜める。


「一つ、確認して良い?」 

「は、はい」

「見たところ、君は魔力が高いわけでも、魔法に長けているわけでもないんだろう? もしそうならとっくに噂が私達の耳まで届いている筈だし、そうでなくてもグラベマルク伯爵が報告している筈だ。こうして改めて見ても普通の女の子にしか見えない。そんな君がどうやって下着を盗んだのかな?」

「これを使いました」


 セルナーデが手の平を上にして何も無い空間から緑色の手袋を出現させる。もちろん商人から買った魔装ウェポンである【貪欲な右手(オープンハンド)】だ。

 セルナーデが魔装ウェポンを出現させると、ミアや先に事情を聞いていた村長以外の全員が驚いた。


「そ、それは……っ!」

「はい。魔装ウェポンです」


 魔装ウェポンと聞いて、周囲が「そんな馬鹿な」と動揺を見せるが、当然だ。魔装ウェポンとは、天翼会が管理している天翼学園に入学しなければ、絶対に手に入らない在校生や卒業生の証。学園は十一歳からしか入学出来ず、まだ八歳である村長の娘が持っている筈が無い物。商人から買った事を知らない者たちには、あり得ないとしか言えない代物である。


「個々人の能力スキルや魔法の属性で姿や力を変化させる天翼会の兵器。学園に入学しなければ手に入らない筈だ。何故君がそれを持っているんだ?」

「しょ、商人から買いました」

「商人……? 国王陛下、知っていましたか?」

「いや。そんな情報は初めて聞いた。セルナーデよ、詳しく説明してくれるか?」

「は、はい。旅の商人が掘り出し物があるって……。だから、お小遣いを全部使って買ったのです」

「馬鹿な!? 旅の商人だと!? この事は天翼会に報告しなければならないな。ランタナ、今直ぐ村を出るぞ」

「は!」


 国王が険しい顔で歩き出し、ランタナも真剣な面持ちで後に続く。魔装ウェポンの存在はそれ程に急を要するもので、最早パンツがどうのと言ってられない状況だった。


「へ、陛下! 娘の――」

「今はそれどころでは無い! その件は保留とし、後日連絡を入れる!」


 国王が若干の苛立ちを見せ、村長は顔を真っ青にしてかたまってしまった。すると、ミアが村長の服をちょっとだけ引っ張って振り向かせ、とても穏やかな笑みを見せる。


「すまぬな、村長。それから色々とありがとうなのじゃ。お礼と言ってはなんじゃが、後でワシがフォローしておくので、そこまで悪いようにはさせん。安心するのじゃ」

「ミア様……。しかし、国王陛下のあのご様子。こう言っては失礼ですが、王族でもない公爵令嬢の貴女の言葉を聞き入れてくれるでしょうか?」

「はっはっはっ。大丈夫じゃ。多分どうにかなるのじゃ」

「た、多分ですか……」


 ミアが笑い、村長は肩を落とす。だけど、不思議と安心が出来たようで、村長は控えめな笑みを見せた。


「ミア様ありがとうございます。どうかよろしくお願い致します」

「うむ」


 ミアが笑顔で頷くと村長も柔らかく微笑み、タイミングが良いのか悪いのか温かく爽やかな風が吹きぬける。そしてその風はミアのスカートをめくり、未だにパンツを穿かない下半身を周囲に見せ、村長の顔が真っ青になってしまう。せっかくノーパンの事を忘れていた侍従たちも再び頭を抱えて、セルナーデが真っ白になって涙を流した。そしてセルナーデのその顔は何故か感動に満ち溢れていて、それを見たミアは思わず呟く。


「なんか気持ち悪いのじゃ」


 ミアは今回ばかりはセルナーデの変態ぶりに気がついて、パンツを穿こうと決意したのだが、正直遅すぎて手遅れである。




◇◇◇




 タンポポ庭園が美しく、多くの人に観光地として知られる村がある。そんな村には少し変わった噂が流れていて、観光客はその噂を聞くと耳を疑い皆が「まさか」と失笑する。


『心身が清らかな聖女様は、欲望に囚われた少女にその身を見せて改心させた』


 世界中の人々から待ち望まれている聖女に対して、あまりにも罰当たりでくだらない噂だと、世間から向けられたのは怒りの声……では無かった。そこまでしないと客寄せが出来ないのかと、村はあわれみの目を向けられた。しかし、それでもこの噂は何故か消える事無く流れ続け、いつしか本物だと言われる事になるのだけど、それはまた別のお話……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] もちろん、これは彼女の伝説の一部になります。 これは、このミステリアスな商人を確立する楽しい方法であり、将来のトラブルに備えて繰り返されるプロット要素です。 よくできています.
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ