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カードの貴公子

1年決闘の火蓋が切って落とされてから半年が経過した。

高杉は一度もデュエルをしていなかった。その理由としては、ただ単に面倒だったからという事があげられる。

参加証が5枚以上持っていないと次のラウンドにすすむことはできないのだが、高杉のデュエルモチベーションは限りなくゼロに近かった。

高杉はデュエルにそこまで情熱をもっていたわけでもない。高杉に行動理由が特になかったのだ。

村野と加藤も同様だ。

そんな彼らのやる気を起こさせるにはある人物の登場を待たねばならなかった。

「くっそお!負けたぁ!!」

デュエルに負けた高橋雄平は両拳を机にたたきつけて、教室中に無念をほとばしらせた。高橋雄平をやぶったのは木村サトルという男子。

木村サトルはデュエルの天才だ。バンダイ時代からの古参兵であり、一度も負けた事のなく『カードの貴公子』の異名をもつ。

身長170センチに常にオールバックという風貌から同年代のデュエリストからは特に警戒されているのだ。

そんな恐れられている相手と知りながら挑んだ高橋雄平の勇気も中々のものである。

「おー、おー、やってるやってる」

その様子を高杉信也は自分の椅子に腰掛けながら、ダラーっとした態度で見ていた。

「けっ、カードの貴公子だが何だが知らねえが、大した強さじゃねえだろ?言っとくが俺も遊戯王始めて以来無敗だ。あの竹田にも勝ったことあるぜ」

周りからもてはやされる木村が気に入らないのか、カードの貴公子にマウントを取りに行く高杉。

すると、木村の取り巻きの1人が高杉にこう言い放った。

「そう言う高杉はこの大会で一度も戦ってもないじゃないか!木村はすでに参加証4枚揃えているのだぞ。高杉とは格が違うんだよ」

そう言われて闘争心に火がついた高杉。

「上等だ!木村ァ!今すぐ俺とデュエルだ!!」

高杉に指を突きつけられて宣戦布告を受けた木村。

木村は「いいだろう」と了承した。

デュエル開始。

先攻は高杉。

「シーカーメンを攻撃表示!伏せカードを1枚出してターンエンドだ」

高杉に対する木村のカードとは・・・!

「俺のターン、ドロー。白い泥棒を攻撃表示で召喚」

白い泥棒は攻撃力1000。シーカーメンの攻撃力1100にはわずかに及ばない。

「なんだなんだぁ?木村。お前数字すら分からねえのかぁ??」

挑発する高杉を完全無視しながら、木村は手札から新たにカードを場に出した。

「装備魔法、秘術の書を発動する。魔法使い族である白い泥棒に装備。これで白い泥棒の攻撃力1300となる」

げぇっ、とうめき声を高杉はあげた。

「白い泥棒でシーカーメンを攻撃!これで高杉はその差200ポイントのダメージに加え、白い泥棒の特殊能力を受ける事になる」

「なんだそいつは」

「白い泥棒が相手にダメージを与えた時、相手は自分の手札をランダムに1枚墓場に捨てなければならない」

「・・・なんだと」

「俺は・・・高杉から見て右から2番目のカードを指定する。そのカードを墓場に捨ててもらおう」

「くっ・・・」

墓地へ捨てられたのは、戦士抹殺の魔法カード。場の戦士族を全滅させられるカードだ。

木村は続ける。

「そして、カードを1枚伏せてターン終了だ」

たった1ターンで木村のレベルの高さを思い知らされた高杉。

木村は特殊能力を持つが攻撃力の低い白い泥棒の打点を補うサポート魔法を使い攻撃した。

そして、今もおそらく白い泥棒を守るための罠を伏せた。奴は次の相手ターンで何らの妨害を行うつもりだろう。

「次は俺の番だな、ドロー」

カードの貴公子という異名をもつまでの奴が伏せたカードだ。攻撃力1000以上のモンスターを破壊する罠「落とし穴」の可能性が高い。

落とし穴はその性能ゆえに制限カード、(デッキに1枚までしか入れる事が出来ないカード)に指定されていた。

そのような制限カードを1ターン目で引いてたとは考えにくい。

が、もし仮にあの伏せが「落とし穴」の場合、モンスターを召喚すれば破壊されて、ふたたび白い泥棒の効果を発動させかねない。

これ以上手札を失う事に恐怖を感じた高杉はモンスターを裏守備でセットして、エンド宣言をした。

ここは確実な手段を取ろう、高杉はそう思ったのだ。

「ふっ・・・」と木村は鼻で笑った。

「てめぇっ、何がおかしい!」

「俺の場の白い泥棒はそれほど攻撃力が高くない。だのに裏守備で出してきたって事は、守備が高いカードか、伏せを警戒したか、白い泥棒に勝てるカードはないか」

「うぐっ」

「守備が高いという事はまずないと思う。守備が高いカードを引いていたなら1ターン目でシーカーメンなんて攻撃表示で出すわけない」

木村の読みが始まった。反論する高杉。

「このターンのドローで引いたかもしれないじゃないか!」

「それは違うね。お前がドローしたのを見てたが、お前が守備で出したのは初期手札として引いた中のカードだ。お前がさっき引いたカードはまだ手札にある」

見抜かれていた。高杉がさっき引いたカードは高杉から見て手札の右端に位置していた。

「お前は初めの手札の中で最も強いシーカーメンを出した。そして今はシーカーメンに次ぐ能力値のカードか、伏せ警戒での守備だろ」

そのとおりであった。高杉はモンスターを攻撃で出して、強化魔法を使えば白い泥棒を倒せた。しかし、落とし穴を警戒して守備で様子見したのだ。

「シーカーメンの守備は1300。ならばそれ以上の数値のカードを出せば戦闘破壊できる可能性が高い」

木村は手札のカードに手をかけた。

「ならば・・・このカードでバトル!ホーリー・ドール!攻撃力は1600!すかさず攻撃だ!いけホーリー・ドール!」

高杉の恐竜人は破壊された。

「ふっ・・・恐竜人か。もしかしたら手札に今、体温の上昇を握っているが、伏せが落とし穴と警戒して出したのだな」

そのとおりだ。

「しかし、もしそうなら、恐竜人は手札に温存しておくべきだが、あえてそれを出したということは他に壁となるカードが手札にないのだな」

ショックだった。高杉は木村に全ての思考を見透かされているのだと悟った。

果たして高杉はカードの貴公子、木村に勝利できるのか?

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