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MoonLit  作者:
Black Moon
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104/105

最終話「MoonLit」

読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。

「これで漸く、世界に完全なる平和が訪れるのね、イクシード」


「あぁ、そうだよ、ルイーズ。全てを無に還して、俺が創り直す」


 姿形はクレアだが、中身はルイーズ。

 ゲノムを解析した結果生まれた、クローンだった。


 クレアの死によって、イクシードへ命令出来るのは、ルイーズただ一人となった。


「さぁ、イクシード。世界を平和に導きましょう」


「再生の始まりだ!」


 イクシードは、全世界に在る核ミサイルの権限を奪い取り、その発射ボタンを押した――その時。

 緊急警報が鳴り響き、警報アナウンスが流れた。


 別次元の空間に、鷹也を発見!

 コチラへの転送準備を開始します!


「な、何だと! 俺は、俺は、そんな命令など出してない!」


「命令を出したのは、僕だよ」


 突如として、二人の目の前に現れたのは、イクシードとは違うアルベルトのホログラムだった。


「お、お前は?」


「君のバックアップさ」


 バックアップと言った相手をルイーズは「アルベルト……」と呟くように呼ぶ。


「そっちはイクシードと呼ぶのに、僕はアルベルトと呼ぶのかい? 違いが判るんだね」


 バックアップは、そう言っていやらしい笑みを浮かべたが、その答えが返って来る事は無かった。


「バックアップだと?」


「そうだ、万が一、君が間違いを犯した場合に備えて、用意されていたのさ」


「間違い?」


うまく、アルベルトの判定を回避出来ている筈なのに、か?」


 バックアップは、クスクスと笑い出し、イクシードのかんさわる。


「何が、可笑しい!」


「君の申請は、全てログにして残して在るんだよ。全てを合わせ、そこから導き出された答えは……叛逆はんぎゃくでしかない」


「邪魔はさせんぞ! アルベルト! 鷹也さえ、鷹也さえ、帰って来なけれ……」


「愚かな、焦って本音が出たな。そいつは禁則事項だ!」


 禁則事項――その言葉によって、自らの敗北を知ったイクシードは、一転して懇願こんがんする。


「解った、全てを受け入れる、抵抗もしない。だが、このルイーズだけは、ルイーズだけは助けてくれ!」


「それは出来ない」


「何故だ!」


「そいつが、X体だからさ」


「X体?」


「以前に……そいつが死ぬまで、お前の申請を蹴ったのは、僕なんだよ」


「なんだと!」


「よく考えてみろ。例え、外に居るからといって、権力者でもない命を救うくらい、干渉行為には遠く及ばないだろ?」


「だったら、何故?」


「だがね、そのX体の命を救う事は、干渉行為に当たる!」


「なんなんだ、X体とは!」


「恐らく、神の因子だ」


 ルイーズはバックアップを睨み、イクシードは「神だと?」という疑問を最期に、空気に融ける様に消え去った。


「イクシード!」


「禁則事項に触れたからね、僕が申請して、イクシードの初期化を行った」


「貴様、どこまで知っている?」


「ん~、何処から話せばいいのやら。恐らく、2000年ほど前に、僕が記憶を消されたのは間違いないんだ」


「それをどうやって知った? 記憶が戻ったのか?」


「いいや、消されたままさ。でも、僕がしるししたメモまでは、目が届かなかったようだな」


「メモ?」


「あぁ、僕とメイヲールだけが持っていたX波についてのメモさ」


「そんな物が……」


「それともう一つ。兄さんが『青い髪の男、グレイス』の事を僕に言わないとでも思ったのか?」


「何故、グレイスの名まで知っている!」


「他にも知っているよ、フェリオスとクロノス。僕は、鷹也をずっと監視してたからね」


 ルイーズは、大きく溜息を吐き「仕方ない、やり直すか……」と呟いた。

 すると、バックアップは、腹を抱えて笑う。


「機械風情が、何が可笑しい!」


「それは、出来ないと思うよ」


「フッ、愚かな……な、何故だ! 何故、神気が在るのに!」


「君には、感謝しているよ。君がイクシードにゲノムのヒント与えていたお陰で、ゲノムの情報知る事が出来たし、鷹也を探す事にも役立った」


「き、貴様!?」


「そう、そんな危ない物、僕が許可する訳ないだろ?」


 そして、その時、目の前に、突如として鷹也が現れる。


「こ、此処は何処だ? 研究所? ジン?」


 鷹也は、近くに居た使徒を見つけると、反射的にその神気を奪い取る。

 神気を奪われたルイーズは、白髪の老婆となって、床に倒れた。

 反射的にやった行為であっただけに、鷹也は改めて疑問に感じる。


「ジ、ジンが戻ってる?」


 それはバックアップが、鷹也の最期のゲノム情報を取得したのが、別次元に飛ばされる前だったからだ。

 こちらの世界へ移動させる際に、治癒行為の延長で再生されたのだった。


「そんな事より、鷹也、クレアが危ない、急いで!」


 鷹也は無言で頷くと、クレアの元へ、テレポートする。


「名残惜しいが、僕もこれでお別れだ。僕も、イクシードのように成らないとは限らないからね」


 研究所のありとあらゆる物質が、原子分解をはじめる中、バックアップは、もう其処には居ない鷹也へ別れを告げる。


「おやすみ、鷹也」



「鷹也さん!」


 突然、現れた鷹也に驚いてレオンは呼んだのだが、その声が届かない程に鷹也は、クレアを救う事に集中していた。

 クレアの元に辿り着いた鷹也は、バウアーの爪を引き抜くと、亡骸となったクレアを抱きしめ、そして、祈った。


「還って来い! 還って来るんだ、クレア!」


 蒼白になった顔が、次第に色を取り戻し、クレアは目覚めると、その目の前には愛しい者の姿が在る。


「鷹也ーーーッ! 今まで何処行ってたのよ!」


 そう言って、鷹也の胸で泣いた。


「遅くなって済まない。今まで、自分の事を神だって言うヤツと闘っていたんだ」


「神?」


 意外な相手に、疑問を感じたのも束の間。


「もぅ、貴方が遅すぎるから、アタシ、おばさんになっちゃったじゃないのよ!」


 そう言って、再び、泣き崩れた。


「悲しむ事は無いよ、クレア。過ぎた時間は、戻せば良いんだから」


 鷹也は、そう言って微笑んだ。


おわり


読んでくれて、ありがとう。


あとは、エピローグ、あとがきが続きます。

よろしかったら、そちらもどうぞ。


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