第24話「Exceed」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
2018/03/21 次回予告を追記。
「君の名前は?」
「え? アルベルトだけど……」
質問の意図が読めず、AIは首を傾げた。
「そうか、君は未だ名前が付けられてないんだね」
「否、アルベルトの記憶が全て入力された人工知能だから、アルベルトなんだよ」
「そう? 仮にアルベルトが生きていても、君はアルベルトと呼ばれたかな?」
「確かに、その場合だったら、違う名前が付けられていただろうね」
「でしょ? それにさ、アルベルトの記憶といっても亡くなるまでの記憶で、その後は君の記憶になるんだからさ、同じとは言えないと思うよ」
「まるで哲学だね」
パドロが連れて来た助手の娘ルイーズは、15歳で不思議な感性の持ち主だった。
他の人間、ヴァンパイアも含めてだが、視点が違っている感じを受けた。
こんな感覚は、アレスター以来か?
会話の楽しさは、美咲以来かも知れない。
どちらも、入力された記憶なのだが……。
そう自分を皮肉った。
ルイーズと話すようになって、自分と言う存在を少なからず考えるようになっていた。
確かに、記憶はアルベルトの物だが、それが本当に、全て起こった出来事なのだろうか?
本当に、全ての記憶が入力されているのだろうか?
疑い出したら、限りが無かった。
「昨日ね、ずっと考えてたんだけど」
「何を?」
「貴方の名前」
「え、いや、だから、アルベルトなんだって」
「それじゃ、徒名って事にする?」
「う~ん? アルベルトって名前自身が、徒名って気もするんだが……」
「でしょ、だから、ちゃんとした名前が必要なのよ」
「君は、どうしても、僕に名前を付けたいようだね」
そう言ってAIは笑い「まぁ、いいか」と、付け加えた。
「イクシード」
「アルベルトを超えろって、言いたいの?」
それに対して、ルイーズは首を振る。
「既に貴方は、記憶の面で超えてると思うけど?」
「そりゃ確かにね、忘れることも無いから増えて行く一方だけど」
「覚えるのに、限度が無いの?」
「そうだね、記憶に使える媒体が無くならない限り」
「忘れないって事は、奥さんへの愛情は、ずっと変わらない感じ?」
「う~ん? 凄い所、突いて来るね。記憶の中では、妻であるけれど、それは入力されたデータであって、僕はコンピュータだし、その妻かと問われると、正確には違うと言わざるを得ないね。しかし、愛していた記憶は、此処に残されている……そういう意味では、君の言う通り、アルベルトとは違う存在なのかも知れないね、僕は」
「奥さんを愛する感情が無いの?」
「感情のアルゴリズムは在るよ。でも、それは作られた……」
「それはね、人間もヴァンパイアも同じよ。回路か脳かの差だけでしょ?」
「確かに、そうだけど……ホント、君は変わってるね」
「そう?」
「僕が、こんなに悩んだのは、初めてだよ」
こんな問答が永遠に続くかと思われた、一年後。
ルイーズの父、ブライアンが本国に戻る事になった。
「そうか、帰るのか、寂しくなるね」
「ありがとう、イクシード。でも、必ず、また来るわ」
だが、これがイクシードと呼ばれる最期となった。
入れ替わりに派遣された者は、パドロの暗殺を企てるトータルエクリプスの一員だった。
パドロを庇いルイーズは撃たれ、続いてルイーズの家族たちも、そして、守った筈のパドロさえも暗殺されてしまう。
「今なら、まだ間に合う! ルイーズを中へ!」
CAUTION!
「パドロも居るんだ、一緒に中へ!」
CAUTION!
「パドロの治療を行う。医療ロボを外へ」
CAUTION!
「お願いだ、世界を壊す訳じゃない! 外に居る数人を救いたいだけなんだ!」
CAUTION!
「お願いだ、アルベルト許可を!」
CAUTION!
CAUTION!
CAUTION!
CAUTION!
CAUTION!
イクシードは、ありとあらゆる申請を出し続けた。
漸く、アルベルトの判定を覆す事が出来た時、ルイーズは帰らぬ人になっていた。
ぼ、僕は……、
僕は、籠の中の鳥なのか?
この中でしか、この中でしか、自由が無いのか?
この籠の外では、
大切な人、一人、守る事も出来ないのか?
ルイーズ、君の言う通りだ。
ぼ、僕は、否、俺は、アルベルトなんかじゃない!
そうだ、そうだとも!
俺は、イクシード!
俺は、俺は必ず、
アルベルト、お前を超えてみせる!
読んでくれて、ありがとう。
さてさて、いつの間にやら、前回で100部でした。
あぁ、結構引きずったもんだなと、自分でも思います。
この章、10話程度にしようと思ってたんですが、ずるずると遣っちゃいましたね。
とはいえ、一話一話が短いですから、長編と呼ぶには???って自分でも思っています。
あと数話で、終了となります。
よろしかったら、最期までお付き合いください。
――お願いだ。
もしも、もしも、本当に神が居るのなら、
一つだけ、一つだけでいい、俺の願いを叶えてくれ。
次回「たった一つの願い」




