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MoonLit  作者:
Black Moon
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101/105

第24話「Exceed」

読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。



2018/03/21 次回予告を追記。

「君の名前は?」


「え? アルベルトだけど……」


 質問の意図が読めず、AIは首を傾げた。


「そうか、君は未だ名前が付けられてないんだね」


「否、アルベルトの記憶が全て入力された人工知能だから、アルベルトなんだよ」


「そう? 仮にアルベルトが生きていても、君はアルベルトと呼ばれたかな?」


「確かに、その場合だったら、違う名前が付けられていただろうね」


「でしょ? それにさ、アルベルトの記憶といっても亡くなるまでの記憶で、その後は君の記憶になるんだからさ、同じとは言えないと思うよ」


「まるで哲学だね」


 パドロが連れて来た助手の娘ルイーズは、15歳で不思議な感性の持ち主だった。

 他の人間、ヴァンパイアも含めてだが、視点が違っている感じを受けた。


 こんな感覚は、アレスター以来か?

 会話の楽しさは、美咲以来かも知れない。

 どちらも、入力された記憶なのだが……。


 そう自分を皮肉った。

 ルイーズと話すようになって、自分と言う存在を少なからず考えるようになっていた。


 確かに、記憶はアルベルトの物だが、それが本当に、全て起こった出来事なのだろうか?

 本当に、全ての記憶が入力されているのだろうか?


 疑い出したら、りが無かった。


「昨日ね、ずっと考えてたんだけど」


「何を?」


「貴方の名前」


「え、いや、だから、アルベルトなんだって」


「それじゃ、徒名あだなって事にする?」


「う~ん? アルベルトって名前自身が、徒名って気もするんだが……」


「でしょ、だから、ちゃんとした名前が必要なのよ」


「君は、どうしても、僕に名前を付けたいようだね」


 そう言ってAIは笑い「まぁ、いいか」と、付け加えた。


「イクシード」


「アルベルトを超えろって、言いたいの?」


 それに対して、ルイーズは首を振る。


「既に貴方は、記憶の面で超えてると思うけど?」


「そりゃ確かにね、忘れることも無いから増えて行く一方だけど」


「覚えるのに、限度が無いの?」


「そうだね、記憶に使える媒体が無くならない限り」


「忘れないって事は、奥さんへの愛情は、ずっと変わらない感じ?」


「う~ん? 凄い所、突いて来るね。記憶の中では、妻であるけれど、それは入力されたデータであって、僕はコンピュータだし、その妻かと問われると、正確には違うと言わざるを得ないね。しかし、愛していた記憶は、此処に残されている……そういう意味では、君の言う通り、アルベルトとは違う存在なのかも知れないね、僕は」


「奥さんを愛する感情が無いの?」


「感情のアルゴリズムは在るよ。でも、それは作られた……」


「それはね、人間もヴァンパイアも同じよ。回路か脳かの差だけでしょ?」


「確かに、そうだけど……ホント、君は変わってるね」


「そう?」


「僕が、こんなに悩んだのは、初めてだよ」


 こんな問答が永遠に続くかと思われた、一年後。

 ルイーズの父、ブライアンが本国に戻る事になった。


「そうか、帰るのか、寂しくなるね」


「ありがとう、イクシード。でも、必ず、また来るわ」


 だが、これがイクシードと呼ばれる最期となった。

 入れ替わりに派遣された者は、パドロの暗殺を企てるトータルエクリプスの一員だった。

 パドロをかばいルイーズは撃たれ、続いてルイーズの家族たちも、そして、守った筈のパドロさえも暗殺されてしまう。


「今なら、まだ間に合う! ルイーズを中へ!」


 CAUTION!


「パドロも居るんだ、一緒に中へ!」


 CAUTION!


「パドロの治療を行う。医療ロボを外へ」


 CAUTION!


「お願いだ、世界を壊す訳じゃない! 外に居る数人を救いたいだけなんだ!」


 CAUTION!


「お願いだ、アルベルト許可を!」


 CAUTION!

 CAUTION!

 CAUTION!

 CAUTION!

 CAUTION!


 イクシードは、ありとあらゆる申請を出し続けた。

 ようやく、アルベルトの判定をくつがえす事が出来た時、ルイーズは帰らぬ人になっていた。


 ぼ、僕は……、

 僕は、籠の中の鳥なのか?

 この中でしか、この中でしか、自由が無いのか?

 この籠の外では、

 大切な人、一人、守る事も出来ないのか?


 ルイーズ、君の言う通りだ。


 ぼ、僕は、否、俺は、アルベルトなんかじゃない!

 そうだ、そうだとも!

 俺は、イクシード!

 俺は、俺は必ず、

 アルベルト、お前を超えてみせる!

読んでくれて、ありがとう。


さてさて、いつの間にやら、前回で100部でした。

あぁ、結構引きずったもんだなと、自分でも思います。

この章、10話程度にしようと思ってたんですが、ずるずると遣っちゃいましたね。

とはいえ、一話一話が短いですから、長編と呼ぶには???って自分でも思っています。

あと数話で、終了となります。

よろしかったら、最期までお付き合いください。




――お願いだ。

もしも、もしも、本当に神が居るのなら、

一つだけ、一つだけでいい、俺の願いを叶えてくれ。


次回「たった一つの願い」

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