その1
初めまして。今回初めて投稿します。完全に素人です。拙いところも多いと思いますが、温かい目で読んでいただけるとありがたいです。
この話は何話かに分けているのでよろしければ最後までお付き合いください。
春。桜が咲き、はなびらが舞う。ただそれだけでも出会いと別れを感じさせる。
卒業式を終えたばかりのアキトは一つの思い出に別れを告げようか考えているのだろう。誰もいない教室の窓際の席で一人佇んでいる。
手元には一枚の紙。何か書いているようで横書きで一言、
「体育館裏に来て」
宛名は書いていない。アキトはその紙を、割と丁寧に折り目をつけている。
「綺麗に飛ぶと良いんだけど」
紙飛行機を折っているようだ。出来た紙飛行機を手に取り眺める。
アキトは窓を開け外の様子を見ている。
そよ風が吹き、カーテンを揺らしている。綺麗な夕日が校舎を赤く照らしている。
上の階から様々な音色が聴こえる。吹奏楽部はまだ残っているようで。
下を見ると玄関から校門まで人影はない。
アキトの見えている世界には誰もいない。
ため息を混ぜながら、言葉を吐き出す。
「まー来るわけないよな。いつか帰ってくるとは言ってたけど」
「あれから1年も経ったのか…もう卒業しちゃったよ」
時の歩く速さに感心しながら、変わらない現実に頭を悩ます。
「こんな時ぐらい連絡くれたって良いじゃないか」
アキトはちょっとふてくされている。ただこうしていても仕方ない事はわかっているので、一呼吸おき、手に持っている紙飛行機を窓の外へと放つ。溜まった感情を乗せて。
紙飛行機が無事飛んでいるのを確認したアキトは、教室を後にした。
一瞬の思い出が眠る場所別れを告げるために。
窓の外へと旅立った紙飛行機はゆらゆら前に進む。
高さを少しづつ下げ、彼の果したかった思いを代わりに届ける。
「はぁ…はぁ…もうこんな時間。」
腕時計で時間を見る。針は5時を指している。日もずいぶんと落ちた。
「こんなことなら、メールすれば良かった」
「せっかく帰ってきたのに会えないんじゃ意味ないもん」
風が吹いて長い紙が揺れる。膝に手をつき肩で息をする。落ち着いたのか、彼女は額の汗を軽くぬぐう。その時、視界には何かが飛んでくるのが見えた。
「ん? 何だろう…あっ、うそっ。紙飛行機」
紙飛行機はまっすぐ彼女のもとへ向かっている。
彼女の手元に届いた紙飛行機は手紙へと変わる。
見覚えのある文字は彼女の手を引き、導く。
「もう…ばかなんだから」
彼女は目を潤ませながら、思い出が眠る場所へと駆けていく。
教室から出たアキトは足を運びつつ一年前のあの時の事を思い返している。
僕は忘れ物を取りに学校に戻ってきていた。いつもだったら確認して下校してたのだけれど、確認したつもりでいた。しかも今日出した宿題を明日提出しろって言われたら、取りに来るしかないじゃないか。
「はー情けない。よりによって宿題持って帰るの忘れるなんて」
「…最悪だ」
うなだれていると僕の頭に何かが当たった。
「なんだ? 紙飛行機か。誰の悪戯だよ、まったく」
とりあえず校舎の上を眺めると、ちょうど眺めた先の教室に女子がいる。遠くて顔がはっきりと見えない。僕は目があまり良くないがコンタクトやメガネをするほどではなかったので裸眼である。
「あの教室は3年生かな。ずっとこっち見てるけどなんなんだ」
その女子はというと窓から腕を出して何かしてる。僕が持っている紙飛行機の事だろうか。
とりあえずそれを持っている手を挙げて叫ぶ。
「これのことー!?」
返事はないが、彼女は大きく頭を縦に振る。正解のようだ。でもこの紙飛行機が一体何だっていうのだろうか。気になるので、こいつを隅から隅まで見る。
「何もないな」
彼女は、僕の方をずっと見ているだけ。ただじっと。その姿は何かを期待しているようにも見える。
いや、そうだと良いなと僕が思っているのだろう。
女子からこんな風にして何かをもらうなんて、思ってもみなかったし。第一その子は先輩であって僕はおそらく何の接点もないはず。だから余計に、期待してしまう。
「まさか……ラブレターだったりして」
そんなわけないと思いつつもちょっと考えてしまうが、さっさと中を見ないと余計に心臓が踊って冷静になれない気がするから、開ける。
思考が止まった。鼓動の音がうるさい。身体もあつい、じわっと汗が出る。
「体育館裏に来て」
手紙に化けたそれは手汗で柔らかくなっている。
生唾を飲む。もう喉が渇いて仕方がない。僕は忘れ物を取りに来ただけで、教室に行くはずだったのに。「……どうしよう」
まずはあれだ。深呼吸、深く息を吸うそして吐く。周りには誰もいない。もう一度手紙を確認。
「体育館裏に来て」
変わらない現実だった。いやもしかすると、悪戯かもしれない。先輩の様子を見てみるのが早いと思ったので、顔を教室の方へ向けた。窓は開いていて、カーテンは揺らめいている。
「あれ、いない。じゃあまさか…ラブ…」
いやいやいや、早合点はまずい。とりあえず、先輩に聞いてみよう。きっと僕が中身を見るのを待っていたに違いない。僕は急いで体育館の裏へと走って行った。




