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【書籍化決定】やり込んだゲームのエンディングを変えるために奮闘して死んだら、続編でヒロインが闇堕ちしてた  作者: かませ犬


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25.技

「おい、見てないでそこの槍を寄越せ!」


「カッコよく登場しておいて、それかよ」


 なら、最初から槍を投げるなよと思ってしまう。助けて貰っておいて苦言を呈するのもなんだが、武器は投げない方がいいぞ。


 ゲームにおいても威力は高いが次のターン攻撃できないデメリットがあったり、なかなかに使いにくい技だったな。


 ゲームをプレイしている時はどうして次のターン攻撃出来ないのか疑問に思ったが、現実で見ると理由は分かった。槍を拾う手間があるからだ。なんとも間抜けな理由だ。


「ほらっ!」


 襲いかかってくるArmaの相手をしながら地面に突き刺さった白銀の槍を手に取り、槍投げのようにロビンに投擲する。


 誤ってロビンに刺さるなんてことがないように軌道は調整してある。


「おら、邪魔だ雑魚ども!!」


 俺が投げた槍を空中でキャッチすると槍を巧みに使い周囲にいたArmaをロビンが薙ぎ払う。今の一撃で倒せてはいないが、かなりのダメージが入ったな。地面に倒れてから起き上がるのに時間がかかっている。


「助けてくれたことは感謝するが、どうしてお前がここにいる!?」


 Armaを一体一体対処しながら、当然の疑問を口にする。


 助けに来てくれたのはわかったが、何故ロビンが此処にいるかが分からない。俺がこの村にいるとこいつには伝えていないし、俺が襲われていることなんてロビンが知る由もない。


「狐の女だ!」


 槍でArmaを刺殺しながらロビンが答える


「狐?」


 パッと思い浮かんだのはタマモさまだった。


「そうだ。夢の中に出てきた狐の女がお前が危ないとオレさまに告げてきた。助けてやってくれとな」


 ロビンの夢の中にタマモさまが? それでいて、俺を助けて欲しいとロビンに伝えただと。


「当然、オレさまにお前を助けてやる義理なんてねぇ!どこで死のうとオレさまには関係ない」


 だろうな。ガイドとしての俺なら助けてくれたことにも納得できるが、今の俺とロビンの関係値は共に脱獄した奴くらいのものだ。友達でも仲間でもない。わざわざ危険を犯して助けるとは思えない。


「だが、お前は此処にきた。何か気が変わるようなことでもあったのか?」


「当然!だが、それをてめぇに教えてやる義理もねぇ。オレさまはオレさまの利益のためにてめぇを助ける!だから勘違いするなよ!」


「分かった!」


 まぁ、何にせよロビンが来てくれたお陰でこの場を切り抜けることは出来そうだ。


「おらぁ!」


 槍を巧みに使い、ロビンがArmaを圧倒している。このたった一ヶ月でここまで身体を戻したのか⋯⋯。


 俺たちと戦った時と比べればまだ本調子とは言えないが、十分すぎるほどの強さ。これだけ強ければ、俺が一瞬抜けても死ぬようなことはない。


「ロビン、一瞬だけこの場を任せていいか!」


「あん?どういうことだ!」


 Armaの相手をしながら、ロビンにお願いをする。


「武器を変えないとまともに戦えない!取りに行く間、この場を任せたい」


「ちっ!まぁいい!雑魚どもの相手をしていてやるからさっさと取ってこい!逃げるんじゃねぇぞ!」


 ロビンが槍を大きく振り回した後、石突を地面に叩きつけるとドンッと大きな音が鳴った。


 その瞬間、Armaの注意が全てロビンへと向かう。先程まで俺を狙っていた個体ですら、ロビンに敵意を向けている。


 ───『挑発』。


 ゲームでも明言はされていないがロビンの権能(ギフト)だと思う。敵の注意を一定時間自分に引きつけるというロビンの固有の力。


 この間に取って来いってことだな。


「すまない!感謝する!」


 ロビンにお礼を伝えてアデルの家へ急ぐ。ロビンは余裕そうにしていたが、流石に数が多い。素早く武器を借りて、戻ってこないといけない。急げよ俺。


 周囲を窺いながら村の中は突っ走る。


「この辺りにはいないようだな。全てのArmaがあの場所に集まっているのか」


 脅威を見つければ優先的に排除する。そういう調教を受けているんだろうな。村の人間を狙わず、俺たちだけを狙っているのがよく分かった。


 道中で村人が一箇所に集まって農具を持って備えているのが見えたが、襲われた形跡はない。だが、俺たちが死ねばArmaは彼らに襲いかかるだろう。絶対に死ぬわけにはいかないな。


 そのまましばらく走るとアデルの家に着いた。戦場となっている場所から随分と離れた位置にある。もしかしたら中にいるアデルは事態を知らないかも知れない。


「入るぞ!」


 急いでいるので、返事を待たずにアデルの家へ入る。無作法で申し訳ないが、状況が状況なので許して欲しい。後でちゃんも謝るつもりだ。


 勝手知るアデル家の中を進んで奥までいくと、アデルと目が合った。気持ちが落ち着いたらしく、泣き止んでいる。良かったと心から思った。


 時間があれば大丈夫かって声をかけるのだが、残念ながら今は一刻を争う。


「悪い、これ借りるぞ」


 壁にかけてあった軍刀を手に取って、返事を待たずにその場から離れる。呆気に取られていたアデルに、心の中で謝っておく。


「馴染みのあるこの感触⋯⋯」


 アデルの家を出て、ロビンの元へ向かってる最中にこれが俺の物かはっきりさせるため軍刀の鞘の部分を注視する。やはり、あるな。


 鞘に刻まれた刻印から自分が愛用していた軍刀であるとこれで判明した。製作者であるカーチスのトレードマークであるメガネの模様が刻まれているから、まず間違いない。


 この剣なら俺も全力で戦える。のはいいが⋯⋯。


「⋯⋯怒ってるだろうな」


 俺の剣───つまりは、ガイド・ルーカスの形見の剣ということになる。それを返事を聞かずに拝借したとなれば、俺が同じ立場なら間違いなくキレる。せっかく仲良くなった気でいたんだが、また嫌われたかもしれない。


「全て片付いたら全力で謝ろう⋯⋯うん」


 自分に言い聞かせるように呟いた後、足を早めた。









「すまない、遅れた!」


 軍刀を持って戻ってきた俺の視界に宙を舞うArmaの姿が映る。一、ニ、三、四⋯⋯六か。綺麗な放物線を描いたArmaが地面に打ち付けられ、その後動く様子はない。


 一撃で複数体を葬れるその技術に脱帽だな。


「おせぇよ、バカ」 


 槍を回しながらロビンは余裕そうな表情でArmaをいなしている。


「悪いな。⋯⋯けどお陰で武器を持ってこれた。ここからは俺も本領発揮だ。全て俺に任せてくれても構わないぞ」


「はっ!できるものならやってみろ」


 この状況を考えるとロビン一人でもどうにかなった気はするが、俺も戦った方が確実だろう。


 軍刀を構える。


「⋯⋯ふぅ」


 一息吐く。


 ───俺は凡才だ。


 漫画やアニメの主人公のように活躍できるほどの才能がなかった。何でもこなせるほど万能でもなかった。


 だからこそ一つの技術を突出させた。一つの技を極限まで極めた。


「おいっ!そっち向かったぞ!!」


 俺の背後からArmaが飛びかかってくるのが分かった。それでも動かない俺を心配したのか、ロビンが叫んだ。


「大丈夫だ」


 今の俺には自身をを中心に半透明の球体があるように映っている。


 これが、俺の剣の間合い。いつからか、こうして集中すると剣の間合いが可視化するようになった。


 俺はこの間合いに入った敵を、ただ切るだけ。




「『練磨一閃』」




 Armaが俺の間合いに入ったのを感知した瞬間に鞘から軍刀を抜き、敵を切り裂いてまた鞘に納める。


 これこそが俺が極めた技術───居合。


 強くなるために色んな技術を取り込もうとしたが、身体に一番馴染んだのがこれだった。ゲームにおいてチュートリアルお兄さんとして登場するガイドもこの技を使っていたな。


 つまりは世界が与えた技。


 なら、俺はこの技を極めるだけだ。もっと速く、もっと鋭く、一振で全てを断ち切る。


「『練磨一閃』」


 次々に間合いに入ってくるArmaを一撃の元で屠る。斧では硬いと感じたあの毛皮が、紙でも切るように容易く切り裂けた。


 やはり、この武器じゃないとな。この技じゃないとな。これこそ俺の戦い方だ。


「ん?」


 ───鋭い視線を感じた。


 殺意はない。敵意もない。だが、ジッと見つめてくるその強い視線に思わず振り返る。


「アデル?」


 そこにいたのはアデルだ。


 どうやらあの後、俺のことを追いかけてきたらしい。予想通り、ちゃんとキレていたのか武器をその手に持っていた。


 軍刀を無断で拝借した俺をぶっ飛ばしに来たのかもしれない。だが、切りかかってくる様子はない。それ以前に、アデルから怒りを感じない。


「なんで⋯⋯君がその技を」


 信じらないものを見たと、顔が物語っている。


 そうだよな⋯⋯。


 アデルからすればずっと近くで見てきた俺の技だ。俺の技術だ。『ボクもその技が使いたい』なんて言ってきて、教えたこともある。


 ただ、俺が思っていたよりも技術がいるらしくアデルの才を持ってしても実戦で多用出来るレベルまではいかなかった。


 それなのに赤の他人である筈の俺が彼女のよく知るガイド(相手)と同じように戦っていればどうしてと、思ってしまうのが普通だ。


「どうして、ガイドの技を君が使えるんだ!」

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