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【書籍化決定】やり込んだゲームのエンディングを変えるために奮闘して死んだら、続編でヒロインが闇堕ちしてた  作者: かませ犬


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25/29

24.槍

 カーチス⋯⋯なにがあった?


 お前の身に、お前の心境に、どういった変化があった? 人の世のために共に世界と良くしたいと言っていたお前が⋯⋯。


「⋯⋯っ!」


 いや、分かっている。


 俺だ。俺の死が⋯⋯カーチスをまた孤独に追いやったんだ。あいつにとって、俺が唯一の理解者だった。親友だった。それは俺自身が一番よく分かってる。


 軽視してはいけないことだ。


 俺が死ねば、カーチスはまた孤独になる。理解者がいなくなれば⋯⋯その心をまた孤独という毒が蝕む。カーチスが原作のように道を誤るのもおかしな話ではない。




 ───俺の責任だ。




「助けてくれぇ!!!」


 悲鳴が聞こえた。


 自分を責めている場合じゃないな。


 声のする方へ視線を向ければカーチスが生み出した生物兵器Armaが村の人間に襲いかかっているのが見えた。


 このままArmaが人を殺せば、カーチスが殺したのと同義だ。あのバカに罪を重ねさせるわけにはいかない。


 アイテムポーチから投げナイフを取り出しながら、Armaに襲われている村の人を助けるために走り寄る。幸いなことに村の人が抵抗しているお陰で、何とか間に合いそうだ。


「ぐっ───」


 目の前で年老いた男性がArmaに押し倒された。


 斧を片手に抵抗していたが、騎士でも傭兵でもない村人が戦争のために生み出された兵器に勝てるわけもない。だが、その抵抗が生み出した数秒で、俺が間に合った。


「離れろ!」


 Armaが押し倒した老人の喉元を食いちぎらないように、ナイフを投げて牽制する。所詮は店売りの投げナイフだ。当たったところで大した威力はないが、俺が殺気を向けたことで脅威を感じたのか老人の上から飛び退いて距離を取った。


 空を切ったナイフが地面に突き刺さった。


「大丈夫ですか?」


「う、うむ」


 老人の元に駆け寄って声をかける。見たところ命に別状はなさそうだが、Armaに装備されていた鉄の爪で押さえつけられたせいで傷を負っている。


「あいつの相手は俺がします。逃げれますか?」


「⋯⋯良いのか?」


 俺と老人の視線の先にいるのは、見知った獣(オオカミ)よりも遥かに逞しい肉体を持つ生物兵器。僅かな間とはいえ、Armaと戦った老人にはどれだけ脅威か分かったはすだ。


「俺もそれなりに強いから安心してください」


 親友そうな老人を安心させるために笑顔を向けるが、第三者には見えていないんだったな。失敗した。


「そうか⋯⋯確かに強そうじゃな」


 けど、多少なりとも安心させることはできたらしい。俺を見る目には不安の色はない。


 一応こう見えて、この世界では指折りの実力者だと自負している。後期個体であるxyzならともかく、初期シリーズに負けるようなことはないだろう。


 ただ一つ問題があるとすれば、武器がないことだ。ラブリナのように拳一つで戦えないことはないが、俺の得意とするのは剣術だ。獲物がなければ本来の戦い方はできない。


 ん?ちょうどいいところに斧が転がってるな。


「けど、見ての通り武器を持っていないんでこの斧借りていいですか?」


 近くに落ちていた斧を拾って老人に確認を取る。剣とは違うが、投げナイフよりは使いやすいだろう。


「構わん!その斧でぶっ倒してくれ!」


 傷を負っているというのに、思いのほか元気な老人に思わず笑ってしまう。大丈夫そうだな。


 Armaに視線を向ければ、距離を保ちながら警戒するような俺を見据えている。今のやり取りの間、隙だらけだったと思うが襲いかかってこなかったな。そういう調教をされているのか?こちらとしては好都合だが。


 老人に目配せすると『すまん!』と一言残してこの場から離れていく。Armaが動くなら俺も、と思っていたがやはりピクリともせず俺を見据えている。


 Armaが脅威と認識したのは俺らしい。


 さて、どうしたものか


 安心させるために粋がったはいいが、この世界に転生してからArmaシリーズとは一度も戦ったことはない。ゲームの知識としてモーションなんかは知っているが、所詮はゲーム。


 現実であるこの世界でどんな動きをしてくるか。それでいて、この世界じゃちょっとした一撃も命取りだ。油断はするな。動き一つ一つに目を配らせろ。


「こい!」


 斧を構えて殺気を向けるとArmaが反応して飛びかかってきた。思っていたより素早いが、動きは単調。何より見知ったモーション!Armaの突進に合わせて躱し、そのまま斧を振り下ろす。


「っ───!」


 かっっった!!


 振り下ろした斧はArmaの首を切り落としてその命まで断ったが、思っていたよりもArmaの毛皮が硬かった。まるで鉄か何かだな。


 こんなのを相手にしてたんだな、ゲームの主人公たちは。初期個体でこれだ。後期にはそれこそゴーレムみたいなやつもいる。俺の剣がしっかりと通じたらいいんだけどな。


「まぁ、やるしかないだろ」


 一先ず、目の前の脅威を排除することは出来たが、これだけで終わりじゃない筈だ。


 アデルを殺すためにArmaシリーズを差し向けたなら、今の一体だけでは少なすぎる。当然、もっと多くの個体が送られているはず。


「きゃあああ!!!」


 悲鳴が響き渡った。距離はさほど離れていない。直ぐに声がした場所へと向かう。


「⋯⋯うわ」


 悲鳴のした場所にたどり着くと、思っていたよりもArmaがいた。ざっくり数えてみても50は超えるな。ゲームだとこんなにいっぺんにいなかったろ、おい。


 あまりの数にドン引きしながら周囲を窺う。悲鳴の主と思われる女性は⋯⋯残念ながら手遅れだな。Armaに押し倒されて、喉を噛まれている。駆け付けるのが少し遅かった。


 他にも数名、Armaにやられている。


「───っ!くそ」


 カーチスが生み出した生物兵器で人が死んでいる。その事実があまりに辛い。だが、今は落ち飲んでる場合じゃないのも事実。少しでも被害を減らすために俺がすべきことをしろ。


 最も近くにいたArmaに肉壁し、そのまま斧を振り下ろす。油断していた個体だったため、反応する前に殺すことができた。


 だが、今の一体を殺したことで俺を驚異と認識したらしく全ての個体が俺に敵意を向けている。


「これでいい」


 Armaは弱い獲物を優先的に狙う獣とは違う。命令を実行するために邪魔と判断した者を積極的に狙う傾向がある。俺に攻撃が集中するのなら、その分村の人が安全になる。


「こいつらの相手は俺がします!この場から離れてください!」


 そんなことをわざわざ言わなくても、死にたくない村人たちは一目散に離れていく。その場から動かない者は既に事切れた者か、まともに動けない重傷人だけ。


 なら、生きている者のためにも素早く終わらせよう。


「さて、やるか」


 










 飛びかかってきたArmaを蹴り飛ばし、背後から襲ってきた個体の動きに合わせて斧を振るう。最初はあまりの硬さに驚いたが、流石に慣れた。俺が振るった斧はArmaの頭をかち割り命を奪う。


 ナイフよりはマシだが、普段使っている剣と間合いやら重さが違うので戦いづらくて仕方ない。


「それにしても、多いな」


 30体くらいは倒したと思うが、数は減るどころか増えているようにも思える。相当の数を今回の作戦に持ってきたようだ。


 本気でアデルを殺そうとしているんだな。


 カーチスが命令したとは思いたくはない。カーチスを利用している者が、アデルを殺そうとしていると⋯⋯あくまでも利用されているだけと信じたい。


「お爺さんに謝らないとな」


 武器として使っている斧を見ると、刃こぼれしているのが視認できる。木や丸太ならともかく、鉄のように硬いArmaを何体も切っていればこうなるのは分かりきっていた。


 途中から斧の切れ味で殺すことが難しくなり、鈍器のように鉄の塊でぶん殴って殺していた。そのため頭がぐちゃぐちゃに潰れたArmaのそこらじゅうに転がっている。なかなかにグロテスクだな。


「武器さえあれば、これくらいどうってことはないんだが」


 Armaの強さは知れた。数は多いが正直、敵ではない。だが、それは武器があっての話。今は壊れかけの斧があるが、それすらもなくなって素手となるとかなり苦戦を強いられる。


 武器さえ、あれば⋯⋯。


「あっ⋯⋯」


 ふと、頭に浮かび上がったのはアデルとのやり取り。壁に飾った軍刀を見て辛そうな顔をしていたな。


 アデル本人が話題にして欲しくなさそうだったので、俺からは指摘しなかったが⋯⋯あの壁に飾られていた軍刀は俺の愛剣じゃなかったか?


 似たような物が売られているので手に取って確認しなければ確信は持てないが、自分と関係ない武器を壁に飾るとは思えない。アデルなら、俺の形見として大事にしてくれていた可能性が高い。


 武器はある。


 だが、俺を取り囲むArmaが武器を取りに行くのを許してくれるとは思えない。正面から戦わず逃げながら近寄るにしてもアデルの家まで距離がある。


 なにより、彼女を危険な目に合わすわけにはいかない。


 どうする? ジリ貧だが、このまま斧で戦うしかないか?


 ジリジリと詰め寄ってくるArmaを警戒しながら思考を巡らせていると空がキラッと光った。何かが、飛んできている?


 ───それは白銀の槍だった。


 一目で業物と分かる美しさと、危うさを併せ持つ破壊の一撃。


「っ───」


 認識した瞬間に槍は地面に着弾し、周囲にいたArmaを弾き飛ばす。


 まるでミサイルのような攻撃だった。


 俺はこの攻撃を知っている。


 俺はこの槍を知っている。




「なんだぁ!獣ごときに苦戦してるじゃねぇか!」




 声がした方へ視線を向ければ、やはり知っている男がいた。


「なんで、お前が⋯⋯」


 だが、なぜ此処にいる?


 なぜ、俺を助けるような真似をする?


 状況を理解しても、疑問ばかりが浮かび上がってくる。そんな俺の様子が面白かったのか、俺の気も知らないで笑っていやがる。











「オレ様の力が必要なんだろ?来てやったぞ、感謝しろ」


 ───武器を投げたせいで対抗手段がないのか、Armaの攻撃から逃げながら言い放つロビン(バカ)がいた。

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