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9 お化け屋敷で

お化け屋敷は児童館の二階にあった。


体操教室が行われたりする、小さな体育館みたいな場所が全部お化け屋敷になっているらしい。


私達が受付に行くと、ドラキュラの恰好をしたおじさんがいた。


「ふっふっふ。悪い子の血を吸ってやろうか」


ニヤリと口元に血糊が着いたおじさんが、マントを翻して私達を入り口のドアの前に立たせた。


「さあ、この懐中電灯を持って。一番奥、呪いの棺の中にある十字架を持ち帰って来るんだ。ふっふっふ」


シリウス君が懐中電灯を受け取り、私はちょっと怖くなってしまっていた。あんなに楽しみにしてたお化け屋敷だけど、やっぱり怖そう……。


「シ、シリウス君、先に行かないでね。一緒にいてね?」


「うん。大丈夫だよ」


私はシリウスの手をぎゅっと握ると不気味なお化けが手招きするお化け屋敷へと、足を踏み入れた。





「ぎゃあああああ!!」


「マオちゃん!」


「なんかいるううう!!」


「マオちゃん、猫だよ。猫のおもちゃみたい。あれ?首が回ってる?」


「いやあああ!!!、なんか冷たいのが顔にいいい!!ひいいいいい!!!!」


「うん、水だね。なんだろう、風も流れているね」


騒ぐ私をシリウスは優しく引っ張ってくれながら、私達は奥へ奥へと進んだ。


「はあ、はあ、なんだか凄く疲れた」


へとへとになった私を支えながらシリウス君はずっとそばにいてくれた。よかった。シリウス君と一緒で。お化け屋敷って想像以上に怖い所だったもの。


「あんなに叫んだら疲れるよ。マオちゃん、呪いの棺ってあれじゃない?」


「あ、そうだ!やった!!」


私は棺に駆け寄って中にあると言う十字架をとろうとした。


「マオちゃん、待って」


シリウスは懐中電灯で私の方を照らしながら急いで側に走り寄って棺の中を照らしてくれた。


ピカ。


すると棺の中にはウェディングドレスを着た骸骨が寝ていて、その手元に十字架が置いてあったのだ。


「ひいいい!!!嫌な予感しかしないいい!!」


骸骨だ。棺の中には骸骨がいる。


十字架が置いてあるって言うから、勝手に棺の中は空っぽで、十字架だけが置いてあるのかと思ったのに。あの、ドラキュラおじさんめ!!!ちゃんと詳しく教えてよ!!そりゃ、棺だから、死んだ人がいるのは当然なのかもしれないのだけれど。


「どうしよう……。骸骨だああああああ」


シリウス君も、「ああ。十字架を取ったらどうなるんだろう。素直に取らせてくれるのかな?」と言って、二人で考えこんでしまった。


「シリウス君、怖い事言わないで。十字架取ったとたん、起き上がったりするかな?」


「うん、可能性はあるよね。こう、ムクって起き上がるかも」


「ひいい。どうしよう」


骸骨は胸の所で手を組んでいる。そのすぐそばに十字架があるのだ。


「でも、取らないと終わらないし、頑張って取って、走って逃げたらいいんじゃないかな」


私がそう言うと、シリウスは首を傾げた。


「マオちゃん、暗いから走って逃げるのは危ないよ。ゆっくり逃げるようにしよう。帰りの順路は行きよりも、すぐに終わるはずだから」


「わ、分かった。うん、早足で、逃げれば大丈夫だよね。よ、よし。じゃあ、取るね」


恐る恐る私は手を伸ばして十字架を取ろうとした。


「バン!!!!!!」


「ぎゃあああああああ!!!!」


「マオちゃん!」


すぐ後ろで声がして私は大声を出してしりもちをついてしまった。


慌ててシリウス君が抱き起してくれ、後ろを振り返ると、懐中電灯を持ったケントが笑っていた。


「ひー。おかしー。ぎゃあだって!!あははははは!!!」


「!!!!ケント!!」


「弱虫マオ、バーカ!バーカ!」


「うううう!!!!!」


私がケントに向かって行こうとすると、シリウス君が私の手を握って止めた。


「マオちゃん」


「うううううう!!!!ふん!ケントなんて大っ嫌い!!!シリウス君、行こう」


私はゆっくりと十字架を取り、シリウス君と出口に向かって歩き出した。


「お、おい、待てよ!」


「ふん!知らない!」


ケントも慌てて十字架を拾ってついて来ていたので、私はシリウス君から懐中電灯を奪うと電気を消して、お墓の裏にシリウス君と座って隠れた。


「マオちゃん?」


「しー」


私達が隠れてすぐに、ケントが慌てて走って出口に向かうのが分かった。


「ふん。いっつも意地悪ばかりするの。だからケントは嫌い」


「そうなんだ。でも、あの子、マオちゃんと仲良くしたいみたいだけど」


「え?仲良くしたいなら、なんで意地悪するの?そういうのも大っ嫌い!」


暫くして、もう大丈夫かなと思って立ち上がると、目の前にヒラヒラと紙が落ちてきた。


パシっと取ると、あの白い紙だった。


「シリウス君、これ」


「あ。魔法書だね」


「外に出てからかな。マオちゃん、持っててくれる?」


「うん」


私達はそれから出口に向かい、ケントにも会わずに、ドラキュラのおじさんに十字架を見せた。


「うおおお。これは伝説の十字架!ああ、力が奪われるーーーー」


ドラキュラおじさんはよろよろとたおれながら、私達にお菓子の詰め合わせをくれた。私達はお菓子を持って「疲れたねー」なんて言いながら、児童館の屋上に行く事にした。


「いつもは解放されて無いけど、今日は夜に星を見るんだって。ヨーヨーすくいや、スーパーボールすくいもあるって」


「へえ。楽しいの?」


「うん、楽しいよ、やってみようか」


わたしがスーパーボールすくいをして、私は大きなボールを一つ。シリウス君は小さなボールを五つも掬った。


「すごい」


「たまたまだよ」


その後ヨーヨーすくいでは私は取れず、残念賞の小さなヨーヨーを選ばせて貰って、シリウス君は二ついっぺんにすくって私に一つくれた。


やった事ある私よりも初めてのシリウス君の方が上手なのが不思議でたまらない。




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