14 八枚目の紙
「ケント君、変な事言うけど、大丈夫?」
「ああ?変な事?お前ら、変な事してたんだから、変な事言うにきまってるだろう?シリウスは頭悪いんだな?」
「ケント!失礼!」
「なんだよ。じゃあ、めんどくさい言い方せずに、はっきり分かりやすく言えばいいだろ」
「そうだね、ケント君、その通りだ」
ケントがほらみろ、と威張って私を見て、シリウス君は頷いて、ケントに向かうと話し出した。
「僕はね、本の精霊なんだ。だからケント君は僕のこと、変な奴って思ったんだよね?」
「は?」
「でね、この紙は魔法の紙なんだ。僕は見つける事が出来ないけど、マオちゃんが見つける事が出来る」
「ん?」
「魔法書の一部が壊れてしまって、散らばってしまったんだ。それで魔法書は力を失ってしまった。この紙は魔法書の一部。夏休みの間にマオちゃんが沢山見つけてくれてね。あと二枚で魔法書は元に戻るんだ」
「?」
「僕は、弱ってて、マオちゃんは僕を助けてくれたんだ」
シリウス君が説明すると、ケントは腕を組んで、「うーん」と言って目を瞑った。
「シリウス。お前、やばい奴なのか?」
「?やばいって何かな?」
「兄ちゃんが兄ちゃんの友達と時々言ってるんだよ。『左手に宿りし、なんとかかんとか』とか『滅びの時が来る』とか。まあ、兄ちゃんは頭いいから、他の話もしてるけど、変な事がすきなんだよ。で、まあ、俺は好きにすればいいって思うけどさ。お前はそんなタイプってこと?」
「うーん。どうかな?僕はケント君のお兄ちゃんの意味は分からないかな。滅びの時も分からないし、滅びない様にするしか出来ないかな。それに僕は左手に何も宿ってないよ?」
「そうか。じゃあ、シリウスはマジでやばい奴か、全然やばくない奴のどっちかって事か」
うんうん、と頷いてケントは納得していた。
「ケント君のお兄さんは魔法使いなのかな?」
「ああ。多分な。魔法を使う事が出来ないけど、魔法使いになりたいはずだ。でも、兄ちゃんは魔法を使えていると思っているかもしれないし、俺には見えないだけかもしれない。まあ、俺から見たら、兄ちゃんは結構やばい奴だな」
「そうなんだ。でも、お兄さんのこと、好きなんだね」
「は?いや、別に好きじゃねえし」
「シリウス君、ケントに話してもよかったの?」
お兄さんの事を言われて、口をとがらせているケントを無視して、私はシリウス君に話し掛けた。
「うん。ケント君は僕を不思議に思っていたからね。何か、僕と縁があるんだと思うんだ。黙っているよりも、ちゃんと話した方がいいと思うんだよ」
「そっか。シリウス君がそう思うならいいのかな」
「なんだよ、とにかく、マオがシリウスを助けて、で、その紙が必要ってことか?シリウスは人間じゃないってこと?よく分からねえな」
シリウス君は頷いた。
「うん、ケント君、見てて。お願い、静かにね」
「な、なんだよ。分かったよ」
「うん」
シリウス君がケントが落ち着いたのを見て、紙を自分の顔の前に向け、ゆっくりと息を吹きかけた。すると、キラキラと紙から不思議な靄が飛び出していった。
何度見ても綺麗だ。ケントはびっくりした顔をしているが、約束通り黙っている。
『フォーマルハウト』
シリウスが呟くと、その不思議な靄は綺麗な白っぽい青色になって空に吸い込まれていった。
「もう、喋ってもいいよ」
「こ、これか。前、俺が見たの。確かにこんな感じだったな」
真っ白な紙に目を向けるとは不思議な文字が前の紙と同じように浮かび上がっていた。手のひらを振って飲み込むように魔法の紙をシリウス君が消した。
「シリウスにも手に力が宿ってんじゃねえの?なんか今、消したじゃん。本物だな」
「あー、コレは送っただけだから。僕は魔法書の精霊だから魔法書が凄いんだよ。魔法書の力を借りているだけだから」
「うーん。つまり?どういうことだ?」
ケントは首を傾げて考えていたけど、答えは出ないようだった。
「ケントはやっぱりあの時見たんだね。シリウス君は本の精霊だよ。こうやって魔法書を集めているの。で、あと二枚まで集めたんだ、もうすぐ魔法書は元通りになるの」
「そ、そうか。とにかくシリウスは本物なんだな」
ケントはうんうんと頷いた。
「マオー?」
そうやって話していると、おばあちゃんの私を呼ぶ声がした。
「あ、何も言わずに出て来ちゃったから。はーい!じゃあ、私は帰る、二人も気をつけてね」
「おう」
「うん、マオちゃん、またね」
「うん」
私は二人に手を振って家に帰った。




