表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

1000文字小説

竜のたまごを孵した聖女は穏やかに暮らしたい

作者: 小花はな

「第5回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品です。

キーワードはたまご。よろしくお願いします。



 たまごから(かえ)った黄金に輝く竜は私にこう言った。



「我が(つがい)よ。そなたの望みはなんだ」



 そんなの決まってる。



「聖女なんてくそ重い役目捨てて、穏やかに暮らしたい」



 ☆



 確かに私はあの時(・・・)そう言った。……なのに、



「なんでこうなってるのよぉーっ!?」



 巨大で豪華絢爛(けんらん)な城。

 その玉座の間でズラリと(かしず)く家臣達。

 そして部屋の最奥にある立派な玉座に座る、黄金の髪がキラキラと眩しい美貌の男――。


 その男の膝の上に乗せられた私は、首を振って今の状況を大いに嘆いた。

 すると男は私を見て、困ったように眉を下げる。



「少々仰々しいのは仕方なかろう、我が(きさき)よ。そなたはこの(われ)の……〝竜帝王のたまご〟を孵した、運命の番なのだから」


「そんなの知らなかったぁー! たまたま巡回先の村で見つけたたまごがまさか、伝説の(・・・)竜帝王のだったなんて知らなかったぁー!!」



 幼い頃からおとぎ話として語り継がれる、天空に住む竜人族を束ねる最強の王――竜帝王の伝説。

 数千年に一度、世界のどこかに現れるらしい彼のたまごを孵すことが出来るのは、彼の唯一。運命の番だけ。


 いつものようにヘトヘトになるまで祈りの力を使い、ぐったりと宿に戻る途中、偶然見つけた両手で抱えるほど大きなたまご。興味本位で孵化させ現れた、美しい黄金の竜に望みを言ったが後の祭り。


 母国ではかの竜帝王の運命の番ということで、捨てたかった聖女よりも重い大聖女へと立場が上がり、更には天空にそびえる巨大な城に連れられ、竜帝王の后という肩書きまでついてきた。



「こんな筈じゃなかった! 私は平々凡々な田舎で穏やかなスローライフを送りたかったのにぃー!」



 私の望みを叶えるって言った癖に嘘つき! と、ポカポカ逞しい竜帝王の胸を叩いていると、美貌の男は不思議そうに首を傾げた。

 そして私の髪をサラサラともて遊び、思案する。



「嘘つき? 我が后は望み通り、聖女の役目から離れられたのではないのか?」


「う」



 確かに肩書きは大聖女ではあるけど、普段天空の城で過ごす私に祈りの力を使う機会はない。



「それに今、穏やかに暮らしてはいないのか?」


「うう」



 竜帝王の甘く(とろ)けるような表情に言葉が詰まる。

 彼の視線の先、私のお腹……。



「……ま、まぁ、嘘つきは言い過ぎたわね」



 私はまあるく膨らんだお腹を撫で、頬を赤らめた。



 ☆



 いくつかの大層な肩書きはついたものの、今私は素敵な旦那様に愛され新しい命の誕生に心待ちにし、幸せに、そして穏やかに日々を過ごしている――。



最後まで読んで頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1000文字小説

*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*

きっと今、私の頬は金魚より赤い。

*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*

― 新着の感想 ―
[良い点] 可愛いお話にほっこりさせていただきました♪(´艸`*) 確かに嘘はつかれてない…!(笑) 新しい命が健やかに育ちますように!! [一言] つまりヒロインのポテンシャル、超すごかった!!(∩…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ