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第14話 私のことは、マツリカと

 ダダダダン、ダダダダンと小気味いい銃撃音がダンジョン内に響く。


 目くらましがわりの至近距離からサブマシンガン。


 間髪入れず飛び込んだ紺のセーラー服が、まだら熊(モノ・ベア)の眉間に小刀(こがたな)を突き立てた。


 彼女はそのまま熊を蹴ってひらり宙返り。スカートをひるがえしスタッと着地してみせる。そして、どや? といった顔で俺をみた。


「お師匠(ししょう)さん、どうですか? こんな感じですか?」


『「おおーーー」』


 俺とアースの声が重なる。軽い身のこなしには素直に称賛。

 いけてるいけてる。ばっちりだ。


『すごいですね、忍者のようです。銃には身体操作系コードだけの搭載ですか?』


「はい。お師匠さんのアドバイスを参考にしました。銃撃は威力が安定して誰にでも扱いやすいけど、意力(いりょく)が乗りにくい。大型を狩るときは殺傷力不足になる……なら、銃器はけん制のサブウェポンにしてトドメは近接武器も良い……、ですよね?」


 光になって消えていく途中の熊型の迷宮魔物(クリーチャー)の額。そこには小刀が突き立っている。橘製作所製の刀身に高純度ジオード結晶を使用した一振り。さっきのは、じゅうぶんに意力(いりょく)の乗った一撃だった。


「良かったよ。迷宮宝具を構成するジオード結晶は、人間の意思の力、すなわち意力(いりょく)に作用するからね。庭さんみたいに思い切りよく突っ込める人なら、重火器よりも近接武器の方が向いてる」


「ふへへ……、頑張って新装備調達した甲斐がありました」


 にへらと顔を崩す庭さんをしり目に、ドスドスと足音を響かせるヤツがいた。

 二匹目のまだら熊(モノ・ベア)だ。


 迷宮魔物ダンジョン・クリーチャーのデザインは本当に節操がない。オークやスケルトン、ケルベロスみたいな伝説上の怪物を模したかと思えば、こいつらみたいな野生動物じみたヤツもいる。


 身の丈は3メートルほど。さっき庭さんが狩った奴よりも大きいか。


「意力とは、ぶっちゃければ気合だ。強い意思の力が、ジオード結晶を通じて現実に作用を及ぼす。精神感応性物質だからね。だから――」


 俺はアースを水平に構え、足を引き、狙いを定める。

 攻撃に付け加えるのは、貫くという意思。イメージはドリル。大きく一歩踏み込んで、突き込む!


 飛び掛かろうとした熊は、見えない掘削機をくらい、ごっそりと胴体を失い崩れ落ちた。


「得物の形状にかかわらずある程度の応用が利く。そして、近接武器の方がイメージが込めやすい」


「おお……、すごい、です!」


 庭さんは目をキラキラと輝かせていた。


 ――――――――――――――――――――――――

 -マツリカちゃんの空中殺法ええな

 -元々映える戦い方してたけどさらに華やかになった

 -サブマシンガン型と、小刀型の迷宮宝具、二基持ちかー、テクニカルやけどええね

 -かっこよ、かわいい…………

 -アサヒニキの一撃、めっちゃ重くてワロ

 -探索者の強さは、結局のところ気合って言われるの、これの所為なんだよなぁ

 -脳筋が勝つ優しい世界

 ――――――――――――――――――――――――


「それに、深淵(アビス)層には、精神攻撃してくる奴が多いからな。普段から強メンタルを心がける方がいいよ、なぁアース?」


『精神に弱さが出ると、すぐ発狂しますからね。奴らは怖いです。まず折れない心が必要です。庭さんはその点で適正高そうです』


 ―――――――――――――――――――――――

 -またニキとアースちゃんがありもしない深淵層の思い出を語ってる

 -深淵層の解放は史上初だって言われてたのに

 -いや、ニキの事だから、まじで行ってたんじゃね

 -アサヒの事は信用しないけど、アースちゃんは信じるわ俺

 -ひどすぎワロタwww ハル・リカちゃんねるから流れてきた?

 -アンチと信者が入り混じったカオスな配信だからここ

 -うるせぇ、マツリカちゃんから離れろボケ

 ―――――――――――――――――――――――


「いや、まじで行ってたっての。そろそろ信じてくれよ」


 でも、国が史上初だって言っちゃってるしなぁ。公式記録も残ってなくて、あんたの記憶の中だけの深淵層だしなぁ、なんてコメントが並ぶ。


 現在、DDDMが調査している深淵層。解放は数日後らしい。

 一般開放さえされたら俺の言う事が嘘じゃなかった事をみんなわかるはずなのだが、イマイチ信じてもらえてない現状だ。


 黄衣の王を倒したの、みんなも見てただろうに……。

 あんなのこっちには居ないだろ? 


「私は信じてますよ。お師匠さんは嘘つく人じゃないと思うから」


 いつのまにか、すぐそばに来ていた庭さんが、じぃと俺をみた。その無垢な視線にちょっとたじろぐ。


「あ、ありがとう庭さん」


「お師匠さんは私とハルちゃんを命の恩人ですから、たとえ大ウソつきの虚言癖でも、大丈夫です」


「……それは暗に信じてないって事にならないか?」


「ふふ、冗談です。それよりも……」


 庭さんがぐいっと顔を寄せる


「私のことは、マツリカ、と。毎日お家にも行きますのに、他人行儀は嫌ですよ」


「お、おう……」


 ――――――――――――――――――――――

 -あ、なんか尊い……

 -尊死……、師弟ラブ……、しんどいムリ……

 -いや、何受け入れてるんだよ! 俺のマツリカちゃんが! アサヒタヒね タヒね タヒね!!!!

 -マツリカ限界ファンはもう諦めろって、あの子が思い込み激しいって知ってるだろうが

 -そうなん?

 -ハル・リカちゃんねるは、どっちかって言うとハルカちゃんの方が常識人枠

 -暴走機関車・庭マツリカっていや、有名よ

 -アサヒニキ、めっちゃたじろいでるカワイイ

 -なんかここ数日カップルチャンネルじみてきたな

 -アサヒ タヒね タヒね タヒね……


 -なんかマツリカちゃん、自分の世界入ってんね

 -推しの探索者が出来て、弟子入り(押しかけ)出来てうれしいんだろ

 -デビュー配信と違って平和だよなー

 -たまにはこういう配信も良い

 -毎回バズってたら、ニキも大変だからな


 -ん?

 -あれ


 -おい、アサヒニキじゃれとる場合じゃないぞ

 -なんか変なの来てる

 -スライム……?

 -何あれ、黒いし光ってる、けど……

 ―――――――――――――――――――――――


読んでくださりありがとうございます。

面白いと思っていただけたなら、下の☆☆☆☆☆から、作品への評価をしていただけると励みになります。ブックマークしていただければ、更新がすぐわかりますのでぜひぜひよろしくお願いします。


楽しいお話を書いていくつもりですので、今後ともご贔屓に。

千八軒

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