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4,買い取り。

 


 予想外に注目を受けたため、ルクは気絶しかけた。


 それでも意識を保てたのは、ここで気絶したら、余計にひと目を引くからである。あと気絶して《王頭蓋》を取られたら、身許がバレるから。


 別に悪いことはしていないが、こうなったら身許バレだけは避けたい。とはいえルクの顔を知っている冒険者がいるかは疑問だ(これまでは姿を隠して行動してきたので)。


 だがここで《王頭蓋》を取られたら、顔を覚えられることは必至。これから先、『変な被りものをしていた冒険者』、として噂になってしまう。

 それは恥ずかしくて死ぬ。みずから内臓えぐりだして死ねる。


 というわけで、意志力で気絶をこらえる。

 さらに回れ右せず、受付へと進めたのも、『入ってきたのにすぐに回れ右して出ていった変な奴』と思われないためである。


 受付まで到着。

 アイテムボックスから、〈闇黒城砦〉とその付近で採取した複数の素材を取り出す。鑑定用のカウンターにのせる。


 受付係は、素材群を見たとたん凍り付いた。


 買い取りを頼んだのだが──理解してもらえなかったのだろうか。こちらとしては、この意志表示で了解して欲しいものだ。


 ここまで来たら、なんとしても買い取ってもらわなければ。家賃のために。

 そこでルクは精神力を搔き集め、《王頭蓋》を被っている強みを生かして、なんとか言った。


「換金」


 吐き気をこらえながら発したせいか、地獄の底から響くような声になった。

 受付係の顔色が悪くなる。


「も、申し訳ございません。Sランクの素材を、これほどの数、一度に見たのは初めてでして。鑑定を終えるまで、お時間がかかりますが、よろしいでしょうか?」


「……」


 絶句していたところ、肯定と受け取られたらしい。

 というより、『とっとと始めろ』という無言のプレッシャーに誤解されたらしい。


「た、ただちに始めます!」


 と、受付係が焦って、鑑定をはじめたので(ギルドの受付係は、鑑定眼レベル3以上が必須)。


 実のところルクは、これまで素材をギルドに売りに来たことがない。

 ギルドはひと目がありすぎて死ぬので、闇市で売っていた(もちろん匿名で)。そのときは二束三文で売っていたのだが。


 思ったより高く売れそうだ。というより喜びよりも、ルクは当惑していた。


(時間がかかる……時間がかかる……)


 周囲の冒険者たちが、ルクを囲むようにして人垣をつくっていた。カウンターの素材群を見ながら、ひそひそと話す声が聞こえてくる。


「見ろ、あれは阿修羅象(ム・エレファント)の皮膚じゃないか」

「あっちのは火龍(ドラゴン)の装甲皮だ」

「10人構成の上位パーティだって、採取できるか疑問だぜ」

「あの鉱物は、ロマイド鉱石か。はじめてモノホンを見たな」

「どうすれば、あれらすべてをソロで採取できるんだ?」

「100回死んでも無理だろ」

「化け物だな」

「あの男は、地獄をかいくぐってきたに違いねぇ」


(この状況で、時間がかかる……)


 これらの素材を採取したときより、いまのほうが至極、難易度が高いのだが。



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