3,不敵に笑っている、ように聞こえるらしい。
「俺の名は、冒険者ギルド№8[剛腕の戦士]バーンだ! 貴様も名前くらいは聞いたことがあるだろう!」
なかった。
ルクは友達がいないので、ギルドの情報とかも入ってこないのだ。ただ二つ名を持っている冒険者は、ギルド上位者ということくらいは、知っている。マニュアルに載っていた。
さらに相手に名乗られると、コミ障とは『自分も名乗らなくてはいけない』というプレッシャーを感じるものだ。
プレッシャーを感じても、名乗れるわけではないが。
「貴様、いよいよ怪しい奴! 魔族アイテムをかぶり、武装してギルド本部をのぞいていたとは──まさか【露刃】からの手先か!?」
【露刃】というのは、ギルドから追放された元冒険者たちによる徒党。あちこちで悪さをしているらしい。なぜ知っているかといえば、新聞に載っていた。友達がいない身としては、新聞という情報源はありがたい。
もちろん、こちらは【露刃】とは無関係。
首を横に振ることで、否定しておこう。
ところが《王頭蓋》をかぶっているせいで、うまく首を横に振れなかった。
「やはり、そうだったか!」とバーン。
コミュ障がいちばん苦手とする相手→やたらとすぐに決めつける人。
「ならば問答無用だ、くらえ〈龍打〉!」
バーンが装備していた戦槌を振り下ろしてくる。
ルクは迷ったが、とりあえず《鋼の剣》(魔装済み)の柄頭で弾き返しておく。
仰天するバーン。
「バ、バカな! 俺の一撃必殺の攻撃が、こうもあっけなく防がれただと!! 貴様、さては【露刃】四天王の一角だな!!」
四天王などあったのか。これは初耳。
問い詰められたことで、より吐き気が増してきた。コミュ障を問い詰めるとは、この人は鬼だろうか。
とにかく、ルクはなんとか吐き気をこらえる。グッと口を結び、気合を入れると。
「くっくっくっくっくっ」
という呻き声がもれた。
すると驚き呆然とする冒険者ダーン。
「わ、わ、笑っているだと!」
どうも、ルク以外からは不敵な笑いをしているように聞こえるらしい。
(うーん。困った。これ以上、騒ぎが大きくなる前に──)
瞬間。
ルクは〈瞬速〉で限定的に敏捷性をあげ、バーンの懐内に飛び込む。
「は、速い!」「くっくっくっくっ」(←吐き気をこらえている)
みねうち──しようと思ったが、装備している《鋼の剣》は両刃だった。
(じゃ、柄頭でいいかな)
バーンの腹部に柄頭を叩き込んだ。
「……バ、バカな……」
白目をむき、どうと倒れるバーン。
「えーと。みねうちですから、ご心配なく」
気絶している相手なら、ちゃんと話しかけられるのである。
一考してから、気絶中のバーンの片足をつかんで引っ張り、柱の陰に隠した。
(これでよし)
改めてギルド内の様子をうかがう。いつまで待っても、人が減りそうな気配はない。こうなったら、勇気を出して入るしかない。いまの自分は無口キャラ。何も話す必要はないのだ。
意を決したルクは、狼骨王の《王頭蓋》をかぶったままギルド内に入った。
とたん、ギルド内のざわめきがとまり、一気に静かになる。謎の闖入者──ルクに対して、一斉に視線があつまる。
あまりに注目されたので、吐き気がMAX。死ぬ気でこらえる。自然、眼光が鋭くなり、呻き声(はたから不敵な笑い)が《王頭蓋》からもれるのだった。
「くっくっくっくっくっくっくっ」
「な、なんだコイツは!」
「不敵に笑い出したぞ!」
「あの眼光、ただ者ではない!」
「漂わせるオーラからして、常人ではないぞ!」
「まさか超越者なのか?!」




