第49話 星骸ベルセフォネの顕現
一段、そしてまた一段。階段を下りるたびに、そのプレッシャーはまるで来るものを拒むかのように増していく。
そして、それとは別に何体かの別な気配。
「うう…… すみませんリント様…… セフィリア、これ以上もう――」
ベルセフォネのものと思われるプレッシャーに充てられ、セフィリアはついにしゃがみこんでしまった。
仕方がない、俺でもこのプレッシャーは結構キツイ。同時に、闇属性のものと思われる重々しいマナも精神を突き刺して来る。
なんなんだろうこれは。俺たちに警戒でもしているってのか?
「セフィリアはここで待っていてくれ、セレイナ、結界とかここで張れる?」
「はい、問題ありません」
セレイナは、セフィリアを囲むように四角い結界を張った。
「――あったかい。なんか気分も良くなった。ありがとうセレイナさん」
「さっきの魔物ではこの結界は破れません。ここで待っていてくださいね」
「はい」
俺たちは再び階下へ降り続けた。
右へ左へとうねっている階段を下りていくと下の方が鈍く光っている。また広場がありそうだ。
おそらく、そこにベルセフォネは眠っている。俺たちは階段を降り、広場の手前まで来たところで身を隠し中を確認した。
魔物がうろついている。二体か。
ダークリカントには違いないが、大きさがさっきの広場にいた群れの奴らの倍、六メートルはある。床にはこいつらが食い散らかしたであろうダークリカントの死体が散らばっている。
そしてその奥。鈍い光を発している石の玉に俺の目は向いた。間違いない、封印石だ。
「凛人さん、また私が弱体化させますので仕留めていただけますか?」
「うん、そうだね。大きいけど二体だけだし、スマートに倒そう」
俺たちは広場へと飛び出し、セレイナが先ほどの聖域魔法を展開させる。
その時だった――
封印石から闇の波動が放出され、セレイナの聖域魔法をかき消してしまった。
「こ、これは―― あっ……!! うぅ――」
さらに追撃と言わんばかりに闇のマナがセレイナを包み、ついには膝をついてしまった。
二体のダークリカントが無防備なセレイナに襲い掛かる。
「セレイナっっ!!!!」
間一髪のところで俺はセレイナを抱きかかえ攻撃を回避した。
「これはどういうこと!? セレイナ!」
「――これは、ベルセフォネが私たちの邪魔をしています」
「な、何でそんなことを!?」
「わかりません…… 本人に聞いてみないことには」
これはとんだ誤算だ。
セレイナの邪魔をするだけじゃなく、ベルセフォネは闇属性のダークリカントに闇のマナを供給し始めている。
なぜそこまで拒絶する!?まさか、この魔物たちもベルセフォネが!?
ダークリカントのマナの量が跳ね上がる。限界を超え、尚も供給され続ける闇のマナに、二体の魔物は血を吹き出しながら俺たちを威嚇して咆哮を上げている。
血走らせた目から鮮血を流し、鼻に深いしわを寄せ歯をむき出しにしているその姿は狂気すら感じる。
くそっ!セレイナはベルセフォネの闇の引力に押さえつけられていて動けない。
彼女を守りながらどう戦う。
その時、セレイナが封印石に向かって手を伸ばした。
「――主である凛人さんを害するのならば、誰であろうとも今の私は容赦いたしません……」
セレイナの掌が閃光を放ち、中型の光球を発射させた。
「ラディアントスフィア!!」
バランスボール大の光球が闇の靄を突き抜け封印石に直撃すると、悲鳴にも似た不協和音が広場に響き、セレイナを押さえつけていた闇のマナが霧散した。
すかさず、解放されたセレイナが魔法陣を展開する。
「ライトニングレイ!」
まばゆい光線が魔物たちを貫き、うめき声を上げて二体の魔物は地を揺らし転倒した。
セレイナがいつになく好戦的だ…… もしかして怒っているのか?
「凛人さん!とどめを!」
俺はオーラを纏わせた剣を、倒れている二体の魔物の胸に順に突き刺した。
魔物は断末魔を上げてこと切れたように見えたが、即座に闇のマナが魔物に流れ込み、蘇生を始めた。
しかし、セレイナはそれを許さなかった。
「させません!ホーリーサンクチュアリ!」
広場を浄化空間に変え、闇のマナを消滅させていく。
ベルセフォネも負けじと闇のマナを強めていく。
「アァ――――――――――――!!!!」
セレイナが、直視できないほどの光を発し、浄化空間を強めていく。
光と闇。相反する両者の対決は、激しくせめぎ合い、そしてセレイナの勝利で幕を閉じた。
「――淀んでいた空気が、澄んでいく」
光が収束し、そしてセレイナは静かに目を開けた。
「封印されたままで私に勝てると思ったんですか?ベルセフォネ。復活を受け入れてください」
セレイナが封印石を見つめ、広場に静寂が訪れる。
俺には、言葉ではない何かでセレイナがベルセフォネと会話をしているように見えた。
しばらくして、セレイナが口を開いた。
「――――凛人さん、復活の儀式をお願いします」
「わ、わかった」
俺は恐る恐る封印石のもとへ行き、今は闇のマナすら発していない石を注視した。
抵抗する気はもうないようだ。俺は指を噛み切り、血の滴る手の平を封印石に触れさせた。
封印石がひび割れ、衝撃波に俺は後退する。
紫、いや、バイオレットの粒子が封印石から勢いよく吹き出し、それは徐々に人の形を成していく。
バイオレットに輝く長い直毛の髪が美しくなびき、目の前に現れたのは婀娜婀娜しくも危険な香りがする美しい女性だった。
ベルセフォネは目を空け、俺を見る。その髪色と同じバイオレットに怪しさを宿した艶めかしい瞳に、思わず俺はたじろいだ。
ベルセフォネは髪をかき上げ、その優美な唇を動かした。
「――随分と騒がしい目覚めね」
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♦筆者イットより♦
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