エルドラ ep.2
目線は、太陽から始まった。
神社の入り口から見て、左手の廊下をまっすぐ進んでいる。目的地は今朝、方皆で後片付けに向かった場所。
先ほど三人で話しているの部屋を出て、マナの泊っている部屋のちょうど反対側の廊下。外廊下は、内側の密集している部屋をぐるりと囲うようにして作られている。左右で見える両廊下は、ちょうど半周する裏手で道がつながる。
私は廊下を歩いている。頼まれた水を取りに、裏手に向かって歩いてゆく。
彼女の声がここまでの道に足を運ばすことはここに戻ってきた私にはいつもの事だ。子供の頃ほどではないが『水をちょうだい』は、何度も聞いた要求で彼女の声を浸透させるのと同じように慣れ親しんでいた。
「だいぶ、日が上がってきたな」
顔は空を向いている。顔を日差しから隠すように手が日差しの間でカバーをかけながら時間の速さを感じ取る。そんなに時間がたっていただろうか?体感では、あまり動いていないつもりだったが日差しは高くなりつつある。
「昼頃になれば誰かが、声に出している事だろう」
先ほどまで聞いていた彼女の話は正直あまりわからない。伝えたいことが大雑把ではっきりとしていながらも隠している。いつもの事だと言えばそうなのだが、理解できている事と言えば彼女の言っているマナの力『上限の力』は一体どこまでに当たる者なのかも想像ができてはいない。
だが、私はそれを否定はできないのだろう。
彼女の力でも、その引っかかっている事が何なのか……今の私に教えてはくれるのだろうか?
視点は太陽からそれていくように、自然と影に向けて動き続けている。役割がら気を抜きながらも周囲をどうしても気にしてしまっている。
雲をそらし下へと向け、神社を囲む荒く作られた低い塀が見えてくる。手入れがほどほどにされている雑草が生えている庭。
先を見れば倉庫に廊下。日差しは自己主張が乏しくも記憶に残る屋根の影を映しながらも、廊下から濃い姿影……。
「人影?」
私は、視界の隅に一つの部屋からこちらをのぞき込む影姿に反応する。足が止まりお互いが目があった「お久しぶりです……」遠慮しがちな静かな声は、相変わらず村の誰よりも負けそうだ。
「来ていたのか。ムメイ」
彼女は部屋から肩方までを出しているが、大半は長い黒髪に身を隠しているようなものだった。
何時もであれば、恥ずかしがって彼女は山にこもっている。人前から離れるようにしてひっそりとして生きているため、人がいる村に来るのも珍しい。
本当に、久しぶりに見る。彼女の姿は少し成長している。相変わらずのようにあまり切られていない髪の毛は、地面へと垂れてなお余っている。
「珍しいな、山でゆっくりしているとばかり」
「そう、ですね。……最近、少しお酒造りにはまっていまして……それでここまで来てました」
彼女は興味があるとそれに対しても行動力が強いのか、突拍子もない行動は誰に似たのだろうか。人の動きを感じ取ったりして人から離れる事が多い彼女の事を、私もあまり知っているわけではないがここに来るほどとは本当に珍しい事があったものだ。
「ムメイも、成長しているんだな」
私の言葉に頭の上にクエスチョンを浮かべているように、不思議そうに首をかしげている。
「エルドラちゃん……」一言残して間が伸びていく「なんだ?」何か言いたそうな顔に返事すると慌てたように「お酒は好まれますか?」彼女から質問するのは珍しくないが、どうしても独特な間が私を困らせる。
「ああ、たまには飲むな。前に飲みすぎるととても怒られて以来は、あまり飲まないようにしているが」
「エルフ仕込みのお酒がやはりよいようで……」最近のお酒の中でも、身体に対する負荷の少ない製法があると聞いてはいたが、もしかしてエルフの里で飲んだあれもそうなのだろうか?
時間をさかのぼるように、私は一人で口に含んだ酒を思い出す。なめらかで嫌気が起きない感じは、緊張の中で居た私に力を与えてくれた気がする。
「そういえば、口に入れやすいものだったな」
声に頷くようにして「そうなんです。……良ければ後で差し上げます、ね?」体制がきつかったのか身体が徐々にずれて肌を多く見せ始める。
もらえるなら遠慮なくいただこう。せっかくだ、後で皆で味見ついでに集まってもいいのかもしれないな。
「主も気に入ってくれるだろうな」
「……そうかもしれませんね」
何時ものように、静かにワンテンポ遅れた会話は彼女らしさを変えはしなかった。
変わっていないところがある事は他にもある「ありがたくもらうよ。……ところでムメイ?」私は彼女の傾向を少しは知っているつもりだ「は、はい」切り替えた時の返事の良さを置いて、私は彼女の姿勢とその先に配慮を置いて会話をする。
「ところで、どうして覗き込んでるんだ?」
顔はとてもうれしそうに「ばれちゃった」そう言いたそうに崩れた姿勢を戻すように、腕が廊下に触れて身体を支える。彼女はもう片方の手を肩にかかった髪を整えるように動かしている。
「えへへ。久しぶりに感じ取れたから、会えると思って出てきたんですが……裸で」
彼女の照れた顔は少し赤く見える。
案の定と言わないばかりに「やはり、裸か」私は周りに視点を向ける「そういえば、あまり服を着たくないと言ってたな」あまり高くない塀は少し高いこの場所にあるからこそ遠巻きに見たら見える事もある。
「山ばかりにいるからあれかもしれないが、村では見えてしまうからやめておいたほうが良いぞ」
軽い返事は静かに消え「感じ取る時とか、便利な格好なので……ごめんなさい」続くようにして彼女は理由を並べている。理解しているつもりだが、それでも若い男もいる村だ。あまり良いものではないだろう。
視線を塀の向こうへとむけながら、周囲に目を配らしてゆく。眼球の動きに反応したように扉の裏に逃げるようにして「いま着替えますね」慌てて機敏に動く。
「ああ。頼む」私は閉じられた扉の横を通り抜け彼女の髪の長さを思い出す「着替えが終わったら倉庫にきたらどうだ?せっかくいるんだ髪を切るついでに、話そうか?」短い返事は勢いが良く、中で静かに布の擦れる音が聞こえながら「あの……すぐ行きます」中で散らかっているものを集めているような動きは、大きな音をたてはじめる。
彼女の騒ぎを置きながら、簡単に道具の位置を思い出してゆく。
「入り口はいって、すぐ横だったかな?」水を持っていくまでに時間をかけていても、怒りはしないだろう「それぐらいの時間はあるだろうな」彼女が途中で切り分けての話の中断だ、たぶん遅くても怒りはしないだろう。
廊下の途中にある踏み石に立てかけている、外用の藁草履に足を通す。少し降りてすぐの倉庫の入り口を開ける。
「さっきぶりだな」
この中は静かで、暗倉庫内は少し涼しい中に光が入り込む。光は物の位置をはっきりとさせ、壁にそって置かれている大小さまざまな棚が並んでいる。
棚の中でひと際小さく布にまかれている重りのある物を探す。
「確かここにあっただろうか?」
すぐ近くの棚に置かれている、布にまかれたものを何個も広げては戻す。
「おかしいな……」
上から下になぞるように、順番に繰り返しながら足元の棚へと体を縮こませる。手で持った時に小さい布は良い重さをしていた。
「これだな」
布を広げ、中身は間違いなく口の良く開くいつも使っているハサミだ。身体を戻し外に置いてある腰掛を取りに出ようとしていたが、棚脇にたてかけている槍が目に入る。
先端から全体にかけて木で外を囲んではいるが、内部は大半が鉄で作られている槍。エルフの里でもらった、この槍は手持ちの細部にまで鉄が使われており、非常に重い。
「使う事が多いだろうし。来るまでに少し慣らしておいても、いいかもしれないな」
重さに対しての体重の置き方が少し手前になる事から、長槍でありながら振り回しずらい特徴の物だ。片手で持ち上げるのはそうでもないが、振るとどうしても身体が振られやすい。
持ち上げて外で振るために一緒に持ち出した。
倉庫の外側の洗い場に掛けてあるの布と、椅子を程よい距離に持ち出しておいておく。
「さて、準備もできたし振るか」
握りなおした槍を、突き・払い・回すようにして感触を確かめなおす。自分の居やすい場所を探るように振るいながら声を出す。
「ヤッ!!」
「ハッ!!」
手に持っている槍の先端と石突を見比べ、案を一つ出してみる。
「やはり、重いな。回す時がどうも回しにくい……穴でも開けて紐で回してみるか?」
イメージするように、少しゆっくりとへっぴり腰が際立った間抜けな動きで軽く回し「いや~~」間抜けな声が後を追う。体をくねらせて、払う。
「重心に合わせるともっと引っ張られるのか?」
……自分の今のやり取りを思い出し、少し気恥ずかしさがあった。頭を少し早く振り考えを頭から抜けさせる。急がないと恥ずかしさが全身を襲いそうだった。
さて、もう一度持ち直し再度――突き
「ヤッ!!」
――払い
「ハッ!!」
――振り向き叩き落とす。
「「ヤッ!!」」
振り落とす時の声が重なると同時に、私は固まった。
私の視線の先は、重なった声の彼女を見てはいなかった。意識は視線を奪うように、先ほどの私の姿を想像して羞恥心が襲ってくる。
――――――あ、あの。ムメイ、さん……どこから、見てた?
四つ出そうとすると、あれなんだよなぁ。
スミエルフ「出せばいいだろうに。迷わず」
流れってものがあるんですよ、スミ兄様さん。
スミエルフ「まぁ。あまりどうでもいいんだが……そんなに出したいなら順番に出せないのか?」
意地とかそういったものだけど、マナストーリー→サブスト→マナスト
みたいにしたいんだよね
スミエルフ「暇なんだな、あんた」
悩むぐらいいいでしょう!?
スミエルフ「良い言葉を教えてやろうか?」
どんなの?
スミエルフ「見させたい相手は、そんなとこ気にしてないさ」
酷いなぁ……まぁ、これは個々のこだわりだからいいんだよ。
スミエルフ「難儀だねぇ」




