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アンノウンディザスターオンライン  作者: レンフリー
6日目 normalワールド探索(学校編)
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13.下水道を行く

「いやぁーー…やっちゃいましたっすか?」


…水に両足を突っ込みきょろきょろと苦笑いしながら様子をうかがうワズンさん。

まあこれで近寄ってくるのがいなかったり、音反応しなかったりすれば試金石として役に立ったと言えるのではないだろうか?


しかしそのような甘い予想はすぐさま覆されることになる。

右側から何かが視界を横切って行く。

その後に聞こえるのは煙をあげて何かが溶ける音と悲鳴である。


「う…うぐぎぃぁあーー!?腕が?腕が!」


標的になったのは声にならない悲鳴を上げているワズンさん。

飛ばされたのは何か得体のしれない飛び道具。

そして飛んできた方角にはいつの間にやらのっそりと二足で立っているふっくらとした人の姿が。


『vaxaaa--』


うん、しっかりと水分を含んだゾンビみたいですね。

環境のせいか何か進化したのかそれとも特技を覚えたのだろうか?

そんなとりとめのない事を考えていたけどそういった考察をしている場合ではないようだ。

その一体だけではなく次から次へと水の中から立ち上がろうとしている姿が目に入った。

とりあえずこっちの方角はダメという事は確信できる。


「アンズ!そっち先頭で走って!全員全速駆け足!」


大声を上げた以上こちらも危ない。

慌てて駆けだすと私のいた場所にも同様の飛び道具が使われたのか背中からコンクリートが溶ける音が聞こえてくる。

襲われている事を認識したのかアンズも吸い殻さんもゆっくりとだが移動を開始する。

…一名わめいているだけで動こうとしていないのがいるね。


「ワズンさん動かないと死にますよ?」


「けど腕が…。」


「足はちゃんと付いているんでしょ!?とっとと走りなさい!」


お尻に蹴りでも入れようとしたけど見えない壁に阻まれてそれはできなかった。

…そう言えば面倒なプレイヤーの接触制限がついていたっけ?

ではこれ以上は無駄だね。


「人間やれる時にはベストを尽くしなさい!そうしないとできる事もできないで終わるわよ?」


発破はかけた。

後は本人次第だろう。


…まあのろのろと動いているみたいだし間に合わなかったら最後尾で餌食かな?

そんなことよりもまずは全体の計算をしないとまずい。

とりあえず私達が走る足音にあわせて水の中からるぶくぶく太った死体が次々と立ち上がってくるのである。

止まるとあっという間に数に任せて袋たたきにあう事は明らかである。

際限なく立ち上がってくる死体を横目に私達は走り続けた。








「ぜぇっはぁ。ねえニミリ!?何で私が先頭なの?」


「さっき背中に字を書いていたでしょ?その分。」


「全然割りにあいませんわ!?」


「冗談。反対がダメだったからそっち先頭になってもらってるだけだよ?」


走りながら会話とか余計に息が切れてきた。

どこかで息を整えたいけど、水の中から立ち上がる死体はまだまだ増え続けている。

見えなければ見えない恐怖もあるだろうけど、チカチカと断片的に着いたり消えたりする灯りというのもこれまた危機感が煽られて困りものである。

一瞬消える視界に恐怖が常に認識できず、一瞬着く灯りに明らかに恐怖が前にある事を視覚にたたきつけてくるのだからたまったものではない。


今までの情報を整理すると、音に反応しているのは間違いない。

止まればこの立ち上がる死体も反応しなくなるかもしれないけどその後は結局追い付かれておしまいだろう。

ならば走り続けるしかないね。


「ど…どこまで走ればいいんだ?」


「ひとまずどこかに上がれるはしごを見つけるかそれともどこか別の所への通路でもあればそこへ…。」


だめだ。

しゃべってたらまた息が苦しくなってきた。

流石にこれも長くは持たない。

そう考えていると先頭から苦しそうな声が聞こえてくる。


「前に何か扉がありますわ。そこか…。」


何か言おうとしていたアンズがチカチカと灯りが消えている間にふっと走っている姿が目の前から消える。


「な!?消えた?どうやって?」


吸い殻さんがあわてているがこの際どうやってというのは意味がない。

消えたという結果があってその原因が近くにあるはずだ。


正面には鉄扉。

これがアンズの言っていた扉であり、そこから左右に下水道がまた延びている。

それでもって私たち以外の物音がするのは後ろと…左か!?


自分の呼吸音を極力除けて、わずかな水音を聞き取るとすぐさまそちらに向けて駆けだす。

何か丸っこくて太っちょな男がたたずんでおり、上下に体をたぷたぷと動かしているようである。

これが一番有力な容疑者、ならば手荒に行くしかない。

外れてもアンズが犠牲になるだけで問題も無いしね。

そうと決まれば太っちょに向かってトップスピードのままコンクリートの地面を蹴る。


「どっせーい!」


「Gecoooo---!?」


私の両足での蹴りは太っちょの男の腹に見事にきまったようである。

しかし男が倒れこむことは無く、私はそのままぼよんとはじかれてそのままどぼんと全身下水の中へ着水してしまう。


…完全にきまったよね?

頑丈だなと思って見ていると男は苦しそうになり何かを吐き出した。

また溶かす物を吐き出したのかと思ったけど違った。

吐瀉物は私の頭上を越えてコンクリートに叩きつけられる。


「げふぉ!けふぉ!いたた…ねちょねちょして気味が悪いですわ。」


何かねっとりとした物に漬けられたアンズでした。


…?

なんで溶けてないのかな。

まあ結果オーライという事でいいとしよう。


私はその姿を確認すると水の中から出ようと立ち上がろうとする。

しかしそれはかなわなかった。


ボギン!


「痛っつぅ!?」


私の右足に痛みが走る。

何か重たい物を乗せられ潰されたような…そんな痛みである。


アンズの方から男の方へと振り向くと自前の巨体で私の右足を踏み潰しているのだった。

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