27.イベント4日目 ぼろいロッジ
私は窓枠をまたいでロッジの中に音を立てないようにそっと侵入していく。
建物の中はシンと静まり返っており何かに襲撃されるという事も無い。
「アンズ大丈夫そうだから入って。」
後続のアンズに建物の中へ入ってくるように促すと私は部屋の中を確認する。
成程、窓から見えていなかった奥の部分はキッチンになっているのか。
その横に設置されている上への階段はというと、…うわー途中で壊れて床が抜けてしまっている。
あちこち穴だらけで壊れており、手すりも一切付いていない。
これは普通に上るのは無理だ。
二階を確認しようと思ったらハシゴか何か道具がいるね。
待って、ここまで壊れているという事は?
階段の床が抜けているという事で気になってしまったので建物の中を再確認してみる。
確認した結果、このロッジはかなりボロボロである。
歩いて踏むたびに床は抜けそうだし、大黒柱も押せばギシギシというぐらいに不安定…むしろ木が腐っているね。
テーブルの上も埃だらけだし、椅子も体重をかけて座ったら足が折れそうなぐらいにきしむ音がする。
これはここには長居しないほうがよさそうだ。
そう考えをまとめていたその時である。
「ふぎゃ!?」
背中で何か情けない悲鳴が聞こえて振り返る。
振り返ってみると、木の板の床が割れる音と共にアンズが頭から木の床を突き破って地面に頭を埋めてじたばたしているではないか。
…何やってんのこの子は!?
「ねえ、何で頭から飛び込んだの?普通は窓枠をまたいで入るよね?」
「女性がそのようなはしたない事はしませんわよ。それよりも土の味がしますのでここから出していただけないかしら?」
床下からあまりにも情けない返事が返ってきて私は深くため息をつく。
…いや、普通はコソ泥みたいにまたぐよね?
アンズはお嬢様基準なのかどうもおかしいようだ。
まあコントのように頭から突っ込んでくれた方が見ていて楽しいからいいかな?
どうやらいつの間にかスズムシの化け物の大合奏も始まって…何事も無く終わってくれていたようなので知らぬ間に危機は回避できたようだ。
建物の中の方も幸いなことにここまで大きな音を立てたのに何もこちらを襲ってくる気配はない。
どうやらこの建物の中は安全みたいだね。
私は苦笑するとアンズの太腿をつかむと引っ張り上げようとする。
「つ、冷めたいですわ!?」
そりゃあ水着の布越しではなく直だからね?
手が冷たいって事はあるはずだ。
そんな些細な事は一々気にはしていられない。
このおまぬけさんをさっさと引き上げてしまうとしよう。
そう決めて力を入れようとしたところで下から制止の声が入る。
「あ、ニミリ。少しだけ待ってください。もうちょっとで届く…届きました!出してください。」
何か見つけたのかな?
私は中断していた引き上げ作業を再開する。
アンズの太腿を両手で鷲掴みにして室内に引っ張り上げる。
なるべく床の割れた所にぶつけて傷付かないように丁寧に引っ張っていくと…しばらくしてアンズの頭は床から抜け出してくる。
その後から出てきたアンズの両手には何か長い棒のような物が握られている。
「あ、何か道具見つけたんだ?使えそう?」
「ええ、ホラーゲーム御用達の武器ですわ。まさか床の下に隠してあるとは思いませんでしたわ。」
武器?
よく見るとアンズの持っている棒の先には銃口が横並びに二つ付いている。
下の方は木製のストックに金属製のトリガーも確認できる。
という事は?
「水平二連式のショットガンかな?確か途中で折れてそこから銃弾を籠める奴だよね?」
「そうですわね。スライドさせたりマガジンが付いたフルオートの物と比べて装弾数は二発しかありませんけれど、即座に二連射できる優れものですわ。」
アンズが発見したショットガンにほおずりして喜んでいるけど、外の化け物の大きさや化け物達の攻撃してくる火力を考えると…焼け石に水だよね?
しかもショットガンだから反動もすごいはずだし、ストックも含めるとかなり長くて取り扱いは難しそうである。
果たしてアンズにうまく扱えるのかな?
…まあ、喜んでいるのだからそのままにしておこう。
それよりもこの先をどうするかだよね?
この建物は…二階が確認できない以上、次のスズムシの合奏の後にさっさと出たほうがいいよね?
うん、そうしよう。
自分の中で方針を決定するとアンズにそれを伝える事にする。
「とりあえずこの建物にセーフエリアは無さそうだから次にあいつ等が鳴き終わるのを見計らってここを出て次の建物に向かうよ。それまでは何か使えそうなものを探しておきたいんだけど。それでいい?」
「わかりましたわ。」
「後、また窓から出ることになるけど…頭から出ないでね?ちゃんとまたいで出てよね?化け物より先にアンズに笑い殺されるとか勘弁してね?」
「いくら何でもひどくありませんか?ニミリの中で私の扱いどうなっているのかしら?」
「常に天然で何かやらかす問題児だよ?」
アンズが後ろで何かキーキー文句を言っているけど気にしてはいけない。
さてと時間も無い事だしさくっと物色させてもらうとするかな。