14.イベント2日目 仕分けと出発
やけにマッチョな石像がエントランスを去っておよそ五分後、私とアンズは受付のカウンターの下で手当たり次第にかき集めた物を吟味している最中である。
警備員室をまずは確認したところ監視カメラや館内放送用の設備、さらには目的の物である各所にある扉の開閉をするようなシステムも見つけたけど…電気が死んでいて全てが動かなかった。
やはり美術館内が薄暗いという事から薄々は思っていたけど館内の電源は死んでいるようだね。
そういうわけですぐに切り替えてアイテムの探索、そして出発に向けて準備を始めた。
結果としてだけど、やけにいっぱい集まったのは流石高難易度といった所である。
特に警備員室を調べていたアンズは両手いっぱいに色々な物を抱えて持ってきた。
受付カウンターの付近を調べてた私と比べて種類も豊富である。
だがしかしここで時間を使ったりしては元も子もないし、全部持っていくなんて選択肢を取れるはずもない。
現在イベント中であり距離を稼いで生還するという目標を忘れたら本末転倒である。
よってすぐにアイテムの仕分けを始める事にする。
「じゃあ私から説明していくね」
淡々とアイテム名をあげて説明していく。
私が見つけたアイテムはまあこの通りである。
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オフィスチェア:3個
欅通り美術館パンフレット:11個
固定電話:1個
.45ACP弾:6個
輪ゴム:6個
ボールペン:3個
ボールペン(壊):1個
プラスチック製の小物入れ:3個
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まずは今から探索をするのにオフィスチェアは論外、固定電話もいらないし小物入れも整理整頓にはいいかもしれないけどコンパクトに持ち運びするにはかさばるため外す。
銃弾だけあってもと思うけど…それ以外は一点を除き選択して持って行こうと思う。
その除いた一点というのは『欅通り美術館パンフレット』であり、実はこれスキル習得のアイテムだったのである。
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【欅通り美術館パンフレット】
欅通り美術館案内のために用意された来客者用パンフレット
一般来場者向けに地図および展示内容が簡潔に記されている。
アイテム使用時間:1分
取得可能スキル1:欅通り美術館マップ Lv2
スキル1取得確率:80%
重量:不明
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今から探索する事を考えてもこれほど有用なアイテムは無いと思うのでアンズにも使用するよう促す。
ちなみにLv1は美術館の一階、二階の一般公開されている個所までをマップに表示する。
Lv2はそれに加えて施設名や展示内容が追加で表示されるようになるらしい。
残ったパンフレットについては…かさばるので元の場所に戻しておくことにする。
持ち帰れば売れそうなのにという後ろ髪ひかれるものがあるけどここは仕方ない。
「それでアンズの方はどうだったの?」
「それなのですが、ちょっと量があるのとわからないのもあるので一緒に確認してもらえないかしら?」
そしてアンズの両腕に抱えられていたアイテムはドサドサと床に落とされていくので大雑把に確認していく事にする。
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マイク:1個
携帯無線機(壊):3個
伸縮警棒:1個
栄養ドリンク(弱):2個
栄養ドリンク(強):1個
空き瓶(小):4個
煙草:3本
シールド付フルヘルメット:3個
チョッキ:1個
土管(小):1個
館内放送マニュアル:1個
警備員の業務日誌:1個
<衣装>警備員の制服:1個
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まあ色々とある物で、警備員室の他に放送、宿直の機能でも持たせていたのかな?と疑う。
さてと色々あやふやなので仕分けをして行こうと思う。
この名称も最初に触れたプレイヤーの認識情報で更新されるから本当にそれが正解とは限らない。
まずはマイク…。
…うん館内放送用の設置マイクかな。
機能も死んでいるようなのでいらない、よってポイっと横に捨て置く。
無線機も壊れているのでこれもいらない。
警棒は警備員の備品かな?
武器は無いので必須と思われる。
栄養ドリンクは…何か効果あるのかな?
まあ投げれるというだけで凶器にはなるし有用性はあると思う。
空き瓶も同じだし、こちらは何か採集に使えるかもしれないし、ガラスが割れる音を立てるから音反応する敵には陽動にも使えるしいいと思う。
私は制服の内側の胸ポケットに一個入れておこうかな?
アンズは…水着だし胸の間にでも挟んでおけばいいんじゃないかな?
そう言うとアンズにどつかれた…解せぬ。
気を取り直して…煙草?
わからないのでパス。
シールド付フルヘルメット…透明な強化プラスチックが前面についた頭全体を覆う事ができるヘルメットだね、これも警備員の備品と思われるけど私は使わないかな?
だってあんな即死レベルの攻撃をしてきそうな相手にヘルメットが役に立つ…かもしれないけど視界が極端に悪くなるのがいただけない。
チョッキは…これはケブラー素材の防弾チョッキかな?
そう判断するとアイテム名も防弾チョッキに更新される。
動きは重たさの分鈍くなるかもしれないけど…ヘルメットよりは守る面積も広そうだしこれの着用は考慮してもいいかもしれない。
後は衣装アイテムにアーカイブ用の資料アイテム。
衣装アイテムはここで着替えるなら着替えるしいらないなら捨てておこう。
かさばるし持ち歩く気はない。
資料アイテムは情報が書いてあるかもしれないけどここで熟読している時間がもったいない。
これも横にのけておく。
そして最後にこの土管…?
私は手に取って円筒状の物を確かめる。
「ニミリ、土管が気になるのですか?蓋がどちらにも付いていて使えませんよね?水筒かもしれないと思ったのですけど」
いやだってこれスイッチついているし折りたたみの照準もついてるし…。
これを何で土管と認識したのかな?
…いやむしろ変にいじられなくて作動しなかっただけ幸いなのかもしれない。
「いやアンズ、これは違うよ?」
そう言うとスイッチの部分を確認して確信する。
するとアイテム名がこちらも更新される。
「これ対戦車ロケット弾みたいだね。スイッチ押したら二倍くらいの長さになって上のこの部分押すと弾が飛んでいく奴だよ」
流石veryhardワールド、とんでもない危険物が平然と設置されている。
逆に言えばこういうのを頻繁に使用しないといけない難易度という事かもしれない。
…それはそうとしてアンズは顔を真っ赤にして俯いてしまったけど大丈夫なのかな?
時間がもったいないので早くアイテムの取捨をしないといけないのに。
持っていくアイテムも吟味が終わりパンフレットでスキルの取得も完了。
いよいよ出発の時である。
アイテム類は持っていくものは二等分できるものは分けておき、武器については警棒は私、ロケット弾はアンズが所持している。
ロケット弾についてはアンズの取り扱いについては不安が残るけど先頭を歩くのが私なのでアンズに後ろから撃ってもらう事になったというのが正しい。
前の人が撃つと危ないからね?
「さてといよいよ出発だけどとりあえず一階を回ってみようと思う。さっきの石像が行った通路とは反対にね」
地図スキルで確認したところこの博物館はループできる構造になっていない事がわかった。
階段は各所にあるけどあの図体で階段移動するだろうか?
するかもしれないけどしない場合は行き止まりで折り返して帰ってくることが予想される。
「外へ出ることが第一ですわよね?」
「そう、だから入口じゃなくても窓か非常口があって出れそうならそこから抜ける。無くても地図によるとこの先に地下への階段があるからね。その先は地図に載ってないけど…多分重たい設備とかはそういう所にあるから配電設備とか非常時の発電機とかその辺りにあるんじゃないかなと踏んでいる」
「予想が当たっていればいいですわね?」
「…当たってないと困るのはアンズなのだけど?まあ何があるかわからないし、あの石像が戻ってきても困るし、何より時間がもったいないから出発しようね?」
流石に自分の発言に幾分か責任は感じているのかアンズも顔を引き締める。
その顔を確認すると私達は一階の左側の通路に向かって進み始める事にした。
誤字報告およびとんでもな設定ミスの指摘をいただきありがとうございました。
本当抜けており申し訳ありません。