メイリラルド歴522年 (2)
あれから数ヶ月、季節は春から夏に変わりそして今日、私が召喚されて一年が経った。
一年を記念して王宮でパーティーを開いていた。かなりの人数で帰りたい気分だ…。
「…帰りたい」
「主役が帰ったら意味ないからな」
帰ろうと思っても絶対にルドが隣に居るから無理でしょうけど。そう思っていたらステージの王座に座っていた王様が私たちを呼んだ瞬間会場が静かになった。
「今日は時の神子ユーリが召喚された日から一年が経った。こういう場は初めてになる…ユーリから一言」
はい?一言?何いきなり話を振っているんですか王様!
「がんばれ」
「アランに嫌われてしまえばいいのに…」
そう言ったら顔が引き攣っていた、ざまぁみろ。
「皆様初めまして、時の神子ユーリでございます。若輩ながら、日々活動を行っております…第二の故郷としてこの世界を守っていきたいと思っておりますのでこれからもよろしくお願いします」
そう言ってお辞儀をした私に会場内が拍手で盛り上がった。
今回招待されたのはこの国の貴族たち、全員が王様と仲がよく私にも優しく接してくれた。
「ようやく全員挨拶したわね」
「お疲れ様」
バルコニーから見える月は地球と違い二つある、片方が月の女神メイリでもう片方が太陽の神ラルドだとのこと…今頃地球ではどうなってるのかしら、行方不明になっているか存在自体が消えているか。
「疲れた?」
「もうクタクタよ」
クスクスと笑いながらルドは手を差し出した、何する気?
「最後の曲になったから、最後に主役が踊らないとね」
「…分かった」
それからは早かった。一応向こうの世界でダンスを習っていたしこっちのと踊りも同じだったからあった言う間に曲も終わり、パーティーもお開きになった。
私はヘトヘトになって部屋に戻り、即刻ベットに行って寝た。
* * *
夏も終わり秋になった。
「ゆーいー」
窓を見ると紅葉が綺麗。
「ゆーりー」
外もだんだん寒くなってきたから風邪には気をつけないと。
「ゆぅーりー」
にしても今日はいい天気。
「ゆぅーりーあうぅ」
「はぁ」
現実逃避をやめよう。私の目の前にはメルゼルク王国王子アランシスがいる…ちなみにここは王宮内の私の部屋で部屋には私とアラン以外は誰も居ない。
説明すると王様とレイフィアは今日どうしても出席しないといけない用事があり王宮には居ない、乳母のサリーさんは体調が良くないため今日はお休み、お義母様も今日は地方へ出かけている。安心して預けられる人物は私しか居なかったということで私のところへ強制的に押し付けられた、アランは私の代わりに仕事をしてくれている。
「ゆーりー」
「私の名前を言っているの?」
ハイハイが出来るようなり、ついには歩けるようになったと話す王様は親馬鹿だったのを思い出す。この世界でも子供の成長はよく分からない。
「…どうしたいの?」
とりあえず屈んでみるとアランが抱きついてきた。
「何したいの?」
「あしぉぶー」
…遊ぶ?何をすればいいのかしら、うーん…あ、いいこと思いついた。魔法で水の風船を作って飛ばす、それだけのことよ。
「おー!」
好評みたいね。
気づいたら時刻は昼、メリアが昼食を持ってきたので手伝ってもらいながらアランに食べさせた。
「おいひ」
「今おいしいって言いましたね」
「そうね」
メリアが部屋を出てまた二人になった。
「まうー」
「ん?眠いの?」
「んー」
眠そうな顔をして抱きついてくる。
「お昼寝ね」
「んぁー」
ベットに寝かせ私も隣に寝る、ポンポンとあやしながら寝そうになるのをこらえる。
「すー…」
寝てくれた…今日は本当に大変だった、王様達何時帰ってくるっけ?
そう思いながら私は瞼を閉じた。
「あうー」
アランの声がする、誰かが私の頭を撫でてる?
「あうあ」
「…アラン?」
「あ、起きた?」
目を開けたらアランを抱っこしているルドがいた。
「…夕方?」
「うん、今日は仕事全部終わらせておいたよ」
「ありがとう」
私はベットから降りた。
「よく寝た…子守って大変ね」
「はは…でも、メリアがちゃんと母親やれてたって言ってたよ」
良い母親か、私は自分の母親の愛情なんて知らないからよくわからない。
「陛下たちが帰ってきたみたいだよ」
「あう!」
「じゃあ行きましょうか」
場所が変わって王宮入り口。
「アラン!いい子にしていたかしら?」
「うー」
「ユーリ、ありがとうね」
「いえ」
こうして初めての子守が終わった。
* * *
季節は冬、メルゼルク王国も雪が降り辺り一面銀世界になっている。
一年はあっという間に過ぎていった、いつもの様に神子としての役目をやって様々な人と出会い別れたりした。
こうやって何もない時間にふと思うのは地球のこと。ホームシックでは無いけど気になることは気になる…優希今どうしてるかな?当主になるためにがんばってるのかしら…ごめんね、押し付けてしまって…ごめんなさい。
空に向かって手を伸ばす、雪が冷たい…時々、どうして私はどうしてここにいるのかと思う。私は本当にいるのか…不思議な気持ちになる。
「優莉」
伸ばした手を誰かが握ってくれた。
「ルド?」
「こんなところにいると風邪引くよ」
「大丈夫よ」
「手が冷たい」
「外にいて雪に触れているから」
冷たい手からルドの手のぬくもりを感じる。
「向こうの世界に帰りたい?」
「…どうだろう、でも不思議と帰りたいとは思わないの…この世界にきてまだ一年と少ししか経ってないけど、いつのまにかこの世界が好きになってたみたい」
この世界を好きになってほしい、そうリリアさんは言っていた。それでも私は向こうの世界が忘れられなくてどこか一線を引いていた…でもあっという間に私はこの世界が好きになっていたのね。
まだまだ私には時間がある。ルドと一緒なら何でもできる、そう思いながら私とルドは室内へと入った。
それからあっという間に4年の年月が経ち、私にとって一番幸せな時がやってきた。




