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弁護士
私はある男の弁護を受け持つことになった。その男は自分で弁護士を雇う金がなく、国選弁護士である私が弁護することになった。
正直に言うと、私はこの裁判にやる気はなかった。その男は三人を殺した。それも、かなり非道な犯行だ。罪状は殺人と死体遺棄。唯一減刑を仰ぐ手段は、情に訴えかける。それだけだ。
裁判の結果は有罪。検察側が求刑した死刑、これが現実になった。検察は鼻高々だろう。ニュースでも連日取り上げられているこの事件。ネットニュースでは、「幸せなの三人の家族を虐殺した殺人鬼」として取り上げられており、男に対する誹謗や中傷がインターネット上に木霊して鳴り止まない。
もう少し、私に何かできたのではないか。私がもっとしっかりしていれば、あの男は死ななかったのかもしれない。ネットでは死んで当然という声も多い。だが、私はあの男の過去を知ってしまうと、罪悪感がこころに押し寄せる。そもそも、本当に極悪人だったとしても、一人の人間の死に関わるのは少なからず罪悪感があるはずだ。私だけではないはずと信じて、私は床についた。




