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検察官

 私は昔から正義感が強かった。曲がったことが嫌いで、筋の通っていない人間を見ると無性に腹が立つ。そういう意味で言うと、あの男を全力で嫌いになることはできないのかもしれない。


 ある男を起訴しようとしている。その男は三人の人間を殺害した極悪人。私は今からそんな男の取り調べを行う。時には高圧的に、時には情に訴えかけるように行われる警察の取り調べと違い、検察の取り調べは事実確認や個人的な生い立ちや反省の状況を聴く。この男は警察の取り調べの際、最初から全ての罪を認めており、今もつらつらと私に自らの生い立ちを話している。


 取り調べを終えた私と記録を取っていた事務官は少しお茶を飲んで休憩する。

「やっぱりあいつ…」

「何も言うな、我々はやるべきことをしっかりやるだけなんだよ」


 やつは自分が警察に証言したことを全て認め、刑を受けることも受け入れていた。警察の取り調べの際に話していたことと、今回私に話したことに食い違いや矛盾もなかった。私は今まで何人ものクズを相手してきた。だが、あの男だけは少し違って見えた気がした。少し、筋が通ってるのかもしれないと、そんな考えが私の頭をよぎってしまった。


 ある男が死んだ。あの男は人を三人も殺めた極悪人。だが、私はひどくあいつに同情してしまっていた。私のせいで、あいつが死んだのか。私が起訴さえしなければ、私がもし不起訴にしていれば、あの男は死ななかったのかもしれない。


 何自分らしくないことを考えているんだ。犯罪者は等しく裁く、それが私だ。こんな考え、筋が通ってないじゃないか。


 私のせいじゃない、私は正しい、私は正義の検察官なんだ。そう思うことに決めると、私は執務室の扉を開いた。

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