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結果は――外れた。

 

正確に言えば、外した。

 

予測から、ほんのわずかに。

 

だが、その“わずか”で十分だった。

 

利益は減り、評価は揺らぎ、信用に小さな傷が入る。

 

致命傷ではない。

 

だが、これまでとは明確に違う。

 

初めて、

 

“うまくいかなかった”。

 

 

「……どうだ」

 

間宮が言う。

 

笑っているが、どこかぎこちない。

 

「最悪か?」

 

「いや」

 

俺は首を振る。

 

「悪くない」

 

本心だった。

 

むしろ――

 

やっと、“手応え”があった。

 

 

ユイは、何も言わない。

 

ただ静かに、結果を見ている。

 

「ねえ」

 

やがて、口を開く。

 

「これでわかったでしょ」

 

視線はこちらに向けないまま。

 

「私たち、今まで――」

 

一瞬、言葉を区切る。

 

「ちゃんと選んでなかった」

 

 

否定は、できなかった。

 

 

今までの“選択”は、

 

可能性の中から選んでいたんじゃない。

 

 

ただ、

 

最短で“そこに行く”道をなぞっていただけだ。

 

 

「でもさ」

 

間宮が言う。

 

「これ、効率悪くね?」

 

苦笑混じりの声。

 

「わざわざ外して、損してさ」

 

「そうだな」

 

俺は答える。

 

「非効率だ、意味もないかもしれない。じゃあ、戻すか?」

 

軽く言う。

 

いつものやり方に。

 

間違えないやり方に。

 

 

少しの沈黙。

 

 

俺は、ゆっくりと首を振った。

 

「いや」

 

短く言う。

 

「新しい可能性が見えるかもしれない」

 

 

間宮が、小さく笑う。

 

「マジかよ」

 

「後悔すんなよ」

 

「しない」

 

即答だった。

 

 

ユイも、何も言わずに頷く。

 

それで決まりだった。



 

 

帰り道。

 

三人で歩く。

 

いつもと同じ夜の街。

 

だが、少しだけ違って見えた。

 

人が迷っている。

 

選んでいる。

 

間違えている。

 

遠回りしている。

 

 

――それが、ちゃんと“人間”に見えた。

 

 

「じゃあ、ここで」

 

間宮が手を上げる。

 

「また明日」

 

軽い調子で去っていく。

 

 

ユイも、逆方向に歩き出す。

 

「じゃあね」

 

それだけ言って、振り返らない。

 

 

一人になる。

 

 

ふと、足が止まる。

 

見覚えのある明かり。

 

 

コンビニだった。

 

 

自動ドアが開く。

 

冷たい空気。

 

蛍光灯の白い光。

 

 

何も変わっていない。

 

 

あの日と同じだ。

 

 

レジの前。

 

一人の老人が、小銭を数えている。

 

ゆっくりと。

 

少しだけ、不器用に。

 

 

後ろには、数人の列。

 

誰も急かさない。

 

だが、少しだけ空気が滞る。

 

 

俺は、無意識に“見て”いた。

 

 

この後の流れ。

 

レジの動き。

 

後ろの客の反応。

 

すべて、読める。

 

 

最適な行動も、わかる。

 

 

――だが。

 

 

俺は、何もしなかった。

 

 

ただ、待った。

 

 

老人が、小銭を落とす。

 

床に転がる音。

 

 

少しだけ、時間が伸びる。

 

 

しゃがんで、それを拾う。

 

 

渡す。

 

 

「……すみませんね」

 

老人が言う。

 

 

「いや」

 

俺は首を振る。

 

 

それだけだった。

 

 

会計を終えて、外に出る。

 

夜風が、少しだけ冷たい。

 

 

ふと、思う。

 

 

さっきの行動は、

 

最適じゃない。

 

 

もっと効率のいい動きは、いくらでもあった。

 

 

だが――

 

 

「……悪くないな」

 

小さく呟く。

 

 

未来は、まだ見える。

 

分岐も、結果も。

 

 

それでも――

 

 

その中から、外れることはできる。

 

 

完璧じゃなくていい。

 

 

遠回りでもいい。

 

 

間違えてもいい。

 

 

それを、“選べる”なら。

 

 

俺は歩き出す。

 

 

今度は、

 

どこにも繋がっていない道を。

 

 

自分で選ぶために。

 

 

それが――

 

俺たちの“選択”だった。

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