【29】入手と撤退
「そこは……」
「ペ?」
「そこは口からでしょ!!」
「そこですか!?」
僕の叫びに驚いて、ペェちゃんがポッと甲羅の中に引きこもる。
さすがはパンケーキミシミシガメ、名前にあるだけあって、手足首を引っ込めるとホットケーキそのものである。
それはそれとして、ほとばしる怒りをそのままに、叫びにそのまま感情を乗せる。
「お口の中に光球生成したならそのまま口からビームドーン!が様式美じゃないの!?」
「どこの様式美ですかそれは!?」
「ポケットな怪物たち」
「初めて耳にするのですが」
「破壊光線はロマンだから……」
ポケットなモンスターで焼き付けられた様式美というのはなかなか強烈なものである。
破壊光線はこうであれ、という僕の持論を聞いたペェちゃんは、そろそろと甲羅から出てきて再度光球を展開しだした。
「パ……パォ……??」
何度かトライしているもののうまくいかないらしく、ボシュ、ポピュ、というどこか気の抜ける音が響き渡る。
そして繰り返したあと、ポロポロと目から涙がこぼれ始めた。
「アッごめん良いよやりやすい形で。ありがとうペェちゃん気持ちが嬉しい」
人差し指の背で零れた涙を延々拭うと、落ち着いてきたらしいペェちゃんに甘噛みを返される。
そして切り替えたらしいペェちゃんは、もちもちと先程撃ち抜いた敵の方に向かって歩き出した。
「ペーーーッ!!」
「え?あ、倒れて……」
「倒せてます!?」
「お亡くなりになってますね」
ペェちゃんのビームでぶち抜かれたゴーレムは、こぽ、ごぽ、と鈍い音を立てながら倒れ込む形になっていた。
そしてあれやこれやとワチャワチャしていて気が付かなかったが、そのまま動いていないのである。
スタンとしても長すぎるその時間を疑問に思ってゴーレムの方に近寄ってみれば、とっくに絶命していた。
なお致命傷は言うまでもなく、胸部分をぶち抜いたビームである。
「わー!さすがペェちゃん!!」
感極まったらしいアーネリカは、ペェちゃんを抱き上げた状態でそのままくるくると回りだす。
そう。ペェちゃんを抱えあげているのである。
なお忘れている人がいたら思い出してほしい。
『Small』は外見が変わっているだけであり、重量はそのままである。
「…………そうだね!」
僕は考えるのをやめて肯定し、マグマゴーレムの下まで歩いていく。
そしてスライム状の溶岩に腕を突っ込んだ。
「えーとコア、コア」
「ぴょっ!?」
アーネリカの声が聞こえた気もしたが、気にせず中を探り回す。
すると球場のなにかに行き当たったので、それを掴んで引きずり出した。
「これかぁ」
「あのリツヤさん」
「はぁい?」
呼ばれたので振り向けば、ドン引き一歩手前のような真っ青な顔をしたアーネリカと目があった。
彼女は珍しく震える指で突っ込んだ方の腕を指し示す。
「手、盛大に火傷してます」
「あら」
「いやあらではなく」
言われて見れば、確かに火傷で爛れている。
天ぷら油(高温)はいけたのでこれも行けるだろうと踏んでいたのだが、耐性が足りなかったか、はたまた別の要因か。まあどのみち溶岩は許容不可だったらしい。
「あ、ほら。コア」
「それはわかりましたから」
一応回収したコアを見せてみたが、反応はとても鈍かった。虹色キノコ並みに喜んでくれると思っていたのだが。
彼女はふるふると震える手で僕の腕をそっと包み、そして穴が空きそうなほど見つめたあとに…………
「…………ぺぇちゃん撤退!!」
「ペモーーーーっ」
何故か僕を抱えてダンジョン入口までロッククライミングを始めた。




