【24】ひと悶着
作者が感染症にかかったため、更新が一週空きました。
すみません。
今回から更新ペースが戻ります、宜しくお願いします。
「準備は万端!」
「そう見える?」
「見えますね」
「見えちゃうかぁ……」
現在地、マグマゴーレムが発生する灼熱洞窟前。
人員、元気溌剌アーネリカ。歯医者前の子供状態隼律也。そして後方呆れ面のペェちゃんにてお送りしています。
なお装備はほぼ揃いませんでした。灼熱洞窟って行き先を告げた途端に『じゃあ無理ですね』の手のひら返しのオンパレードであった。この世は無情である。
「ご飯もありますしね。じゃあペェちゃん、行ってきま……」
アーネリカがイキイキと洞窟に向き直った瞬間に、僕の脚が地面から浮いた。
そしてそのままグルングルンと振り回される。
三半規管を殺しにかかっているのはペェちゃんらしく、アーネリカは僕の背後に向けて声をかける。
「どうしたの?」
「助けて」
「まさか引き止めてるの?」
「とりあえず助けて」
アーネリカになにか訴えたいことがあるのだろう、必死に頭をブンブン振っているペェちゃんは大変可愛らしいが、一般的三半規管の成人男性を殺しにかかっていると言っては過言どころか不十分な動きである
「どうして……」
「どうして引き止める方法が僕の首根っこなのかなぁペェちゃん」
「むむむむむ」
「アーネリカ、アーネリカさんや」
「はい?どうされ……わあ顔から血の気が抹消」
「オロシテ……」
そのまま美少女と不思議生物のお涙頂戴シリアスシーンが展開されそうだったので必死に命乞いをする。
顔の血液の大半を喪失し、ようやくアーネリカに気づいてもらえた。片手間に外されたが良しとしよう。
「ペーーーームッ」
「とりあえず不満があることはよく分かりました」
「僕を不満の発露にはしないでほしかったなぁ」
「問題はそれが何かわからない」
「ペモォ……」
「今すごいため息つきましたね?」
この亀さん、実は結構感情表現豊かである。
目は口ほどに物を言うと言うが、この亀さん目も口もガッツリ物を言うので割と言語の壁を超えてくるのである。
「アーネリカ。多分僕わかった」
「と、いうと」
「置いていかれるのが嫌なんじゃない?」
「ムッ!!」
視界がパンケーキの生地色に染まった。
鼻からは焼き立てのパンケーキのようないい匂いがする。
不快感はないし経験済みの感覚だ。
ズバリ、ペェちゃんの口の中。
なるほど喜び余ったらこう表現してくるらしい……いやなんでだよ。
「当たりですね!!」
「うん良かった。でも肯定の表現の仕方に異を唱えたい」
否定と訴えに僕を使うだけでは飽き足らず、肯定ですら僕を表現の一環に使うとは恐れ入った。
たしかにまず間違いなくアーネリカの気は引けるけど、僕への負担が結構甚大である。主に三半規管。
「でもペェちゃん。あなた大きいんですよ」
「ペ?」
「だから、ペェちゃんは大きいんです!!」
「ペ????」
無理やり頭を口内から引っこ抜き、ざばざばと頭を洗いながら目の前の光景を鑑賞する。
ペェちゃんは良くできたチョコレートボンボンを彷彿とさせるツヤツヤした目で、真っ直ぐにアーネリカを見つめていた。
そこにはショックというものはない。なんなら疑念というものすらない。
「すっごい純真無垢な瞳だけど」
「ペェちゃんの自認はまだ角がある時期で止まってるんです……」
亀の角。卵の殻を突き破るときに必要になるものである。しばらくすると成長に伴い吸収されて消える、幼少期を見たものの特権とも言える期間限定部位である。
「ああ自認パピーの大型犬的な」
「あの頃はまだ3メートルで」
「いやデカいな」
「まだ私が背負えたので……」
「その絵面もはやホラー」
ペェちゃんの幼体期、勝手に大型犬のサモエドやゴールデンレドリバー成犬サイズで勝手に想像していたが、その想像をゆうに超えてきた。
……いやおかしい。なんで僕は最初から成犬サイズで想像しているんだ。合ってるけど。
毒されてきているこの世界に。合ってたけど!!何なら超えてきたけども!!
「……末期だなぁ」




