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旅の拠点は亀の上!怪力少女と毒スキル持ち青年の魔物ごはん  作者: 時雨笠ミコト


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23/50

【23】次なる解毒素材

  気絶して、主治医を獲得し、しばらく。

 僕がぶっ倒れたことがよほどショックだったのか、過保護になったアーネリカから熱を出した子供にするように世話を焼かれつつ、僕は彼女の行動を見守っていた。

 

「アーネリカ、何してるの?」

「手紙を書いてます」


 珍しく世話を焼く手が止まったと思えば、筆記用具を片手に何かを上に書き綴っている。

 日記の類かと思ったが、彼女曰く手紙。なおごく一般家庭出身の人間が見ても一目瞭然で高価と分かる筆記用具が用いられている。

 スタンド付きの羽ペンとか初めて見た。

 

「誰宛……かは聞いていいの?」


 不躾と分かっていながらも、好奇心に負けて呟いてみる。すると存外あっさりと答えが返ってきた。別段聞かれて困ることではなかったらしい。

 

「お父様ですね」

「あー」

「虹色茸確保を知らせておかねば、ですから」


 そう。元は魔毒を喰らったアーネリカの母親を救うための解毒薬の素材集めの旅である。

 母親の看病をアーネリカの父親が、素材をアーネリカが担当してなんとか母親を救おうと言うのだ。

 つまり現状、いつ惨事になるか分からない母親の看病を父親に丸投げしている状態なのである。

 進展があるのであれば報告するのはごく当然な流れと言えた。

 

「そうだね。で、次……は」


町中で確保してきた資料に再び手を伸ばす。

 資料と言ってもごく一般的な地図。しかしそれには、紺色のインクでこれでもかというほど書き込みがされていた。

 何かについて確認するたびにいちいち関連の情報を本を開けて探し直してはキリがない。地図に素材の場所と特徴を書き込んだお手製の一覧表である。

 

「これかな」


 トン、と指さしたのはひとつの洞窟。その横には【溶岩結晶】の文字。

 次に目指す素材の提案に、アーネリカはコクンと頷いた。

 

「そうですね。近いですし」


 一旦そう呟いてから、声のトーンを1段階落として消え入るようにこう続ける。

 

「何より幻覚とか、そういうのが報告されてませんからね」

「さては懲りたね?」


 前回の迷いの森、戦闘力自体は一切問題がなかった。

 まあアルラウネを一刀両断し、ヒュージマタンゴを素手で引き裂く剛腕娘である。信用はしていたし、彼女もそれだけの強さの自負があった。

 しかし幻覚が牙を剥いた。具体的には体力よりも精神よりも、何よりも先に食料が限界を迎えたのである。

 頼みの綱のアーネリカが空腹のあまりゾンビの如き有り様になった時はさすがに死を覚悟した。

 まあ苦し紛れにモンスターを食べたら偶然いい方向に作用して、なんとか窮地を脱したわけだが。

 

「結構懲りました」


 アーネリカはそう言いながら、書き終えたらしき手紙にペタリと封をして切手を貼る。

 郵便局でおなじみ見慣れた形状に興味を惹かれて覗いてみれば、ごっつい筆文字の達筆で『緊急』と書かれていた。

 

「なにこれ」

「お急ぎ切手ですね。指定住居にテレポートするのでとても便利」


 デザイン的にもしかしなくても制作者転生してきた日本人。わかりやすさ重視なのは良いと思うが、もっと他になかったのだろうか。

 観光地で『冷奴』と書かれたシャツを来た外国人に、「クールガイッて意味らしい!カッコいいだろ!」と言われたときとどことなく同じ気持ちになった。

 

「でもお高いんでしょう?」

「お高いです」

「高いのかぁ……」


 アーネリカが高いと言うならば結構な額である。なので聞くのをやめておく。テレビ通販ごっこは不発に終わった。


「えーと、溶岩結晶の入手方法は……」

「マグマゴーレムの討伐ですね」

「討伐以外ないんだったよね確か」

「心臓部なので……」


 マグマゴーレム。個人的にはガン◯ム的なロボット物に近いあれそれを期待したが、図鑑いわく自然発生するモンスターらしい。

 よくある『ゴーレムを召喚したゴーレムマスター魔術師!!』とかはなく。

 溶岩が長年をかけてじっくりと不思議なパワーで固まった溶岩結晶、それを心臓部として勝手に生えてくるんだそうな。

 そう、生えてくる。文字通りニョッキリと。

 それ故に、最初こそ自然のガーディアン的立ち位置ではないか……まあつまり神の使い的な存在ではないかと神聖視されていたマグマゴーレムは、ほっといたら際限なく増えていくという事実が判明してからは定期的な討伐が推奨されている。

 なんならギルドの方から専用の報奨金を出している。つまり必要に迫られた間引きである。

 普通に強い上に場所が場所なので、これくらいしないと討伐してくれないと嘆いていた。


「なので容赦なく狩り倒せますね!!」


 と笑顔でアーネリカに言われた時はどうすればいいのかかなり切実に困ったものである。

 

「とりあえず準備しよう。溶岩ってことは熱いだろうし」

「ゴム靴はやめてくださいね」

「溶ける?」

「溶けます」

「一旦町に行かせてください」


 ゴム靴しか持っていない人間の悲痛な叫びを聞き届けてか、パンケーキミシミシガメはゆっくりと行き先を変えた。

 一度町に、そして食料と必需品の調達を。

 次に狙うは溶岩結晶。

 討伐対象はマグマゴーレムである。

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