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ソウルダッシュ  作者: 転醒 廻実
スタートダッシュ ヌ  濡れぬ先こそ露をも厭え
60/80

第60話 乙女心は分からぬぇ

 どうしよう。


 マジでどうしよう。


 神鵺と喫茶店行く約束したは良いけどいざ放課後が近づいて来ると色々何かこうアレがコレなってマジどうしたら良いんだよこれ。あまりの焦燥に語彙力低下してるぞ。


 って言うか悶々してたらもう放課後なっちまったよ!

 どうすりゃ良いんだよこんなん!!


「ぁぁぁぁぁ…………もう用事出来た事にしてキャンセルとかした方が……」


 いやだって何か気まずいって言うか会いにくいって言うか、アイツらが変な事言ってくるせいで嫌に意識してしまうんだよ。だってアイツ、顔とか別段良く……いやアレBランクか。思い出せば結構良い顔してたわ。つっても人の事弄るし非道いヤツだし。趣味も完全にアウェイだし。好きになる要素何処にあるよ。


 いやまぁそりゃ私の事助けてくれるぐらいの思いやりは持ってるし、アレでも知力ランクSの偉才ジーニアスで(見た目上は)常識人なのは分かってるけどよ。料理も上手いし、その気になりゃちゃんと話し相手にもなってくれるし。人としての良さは備えているけども。


 って違う私はただアイツとダチなのであって別に恋仲ってわけじゃない事を言いたいんだ分かってくれよもう!!!!!


「でーもー、気になる」

「どうして、気になる」

「何だお前ら」

「「足立シスターズ、再び推参!」です」


 何でコイツらが私の通学路知ってんだ。

 邪魔だ退け。

 疾く去ね。

 いや良い私が避ける。


「スルーだなんてそんな御無体な!」

「惨めな私達……」

「五月蠅い消えろ。また変な事吹き込むつもりか」

「失礼な! 私達足立シスターズは、環奈様のお心をォオオオファア!!!?」


 消えないので伸ばした影から槍を出して檻を作った。

 そこで暫く泣いてろ。


「かーんな様ぁー!! これじゃ私達動画に取られてネット動物園の人気者になっちゃいますからぁー!!!」

「案外それも……」

「嫌だからぁああああああ!!! 炎上とかなって社会的に死ぬ未来しか待ってないからぁぁああああああああ!!!! 最終的には油ギッシュなおじさんに飼われて首輪とか付けられてあんな事とかそんな事とかされるんだぁぁあああああああ!!!」

……(ワーギャー!)ご主人になら?」

「…………」 (←真顔)


 え”っ。


「いやお前らもっと即決しろよ!!!!!!! 普通嫌だろ!!?」

「いやぁー何と言うか、ご主人なら……」

「結構大事にしてくれそう」

「色々壊されるけど」

「愛玩されるのは間違い無し」

「「何だかんだで護ってくれる」」

「ある意味信頼されてんなアイツ……」


 いや、それこそが元々の奴の人格なのか。

 まぁそりゃ、愛されて育ったって言ってたし。

 日常下では、それこそ良識に満ちた資産家だしな。


「……」

「また劣等感ですか?」

「るっせぇ刺すぞ」

「……環奈様。貴方は、ご主人と共にいたいのですよね」

「あ? そりゃ……そうだが」

「では、共にいれば良いかと」

(おっ、彩月のアタックが始まった)


 一緒にいたくないって言やぁ嘘になる。それは事実だ。

 神鵺とは一緒にいたい。

 側にいて、奴と他愛無い話でもして、そんでバトルして……もっと、アイツと一緒に……そう、もうライバルとかそう言うのはどうでも良い。神鵺の傍にいたい。


「友情と言う形の好意も存在します。しかし環奈様、私がお見受けする限り……その姿は、恋する乙女のそれです」

「ッ……!」

「……お引き留めしてすいませんでした。ご主人がお待ちになられています。どうぞ、彼の許へ」

「……ぉ……おう」


 とりあえず行ってくるか。

 待たせた上にドタキャンなんてのも、後味悪いし。


 * * *


「もう終わり?」

「これ以上は無粋」

「そうかなぁ」

「後は、見守るだけ……」

「まるで黒幕みたいだね、私達」

「恋の黒幕……良いね」

「あの子達の黒幕になりたい?」

「「えっ」」


 二人の後方から、鈴のような声が聞こえた。


 長く艶のある黒髪。小学生と見紛うような幼い姿ながら、半世紀を生きたかの様な貫禄を帯びている。ふわりとしたスカートにブラウス、もこもこの上着。脛まで覆う革製のブーツは、大人な濃茶ダークブラウン


 可憐な少女が、ちょこんと立っていた。


「えっと……誰?」

「この世界の監視役」

「……か……神……?」

「それとは違う」


 困惑する二人の前で、少女は目を細める。

 其処にあったのは、深い闇を見透す様な、眩い光の先を望む様な、時空を越えた場所まで見詰める様な、何処までも澄んだ瞳。


 見るだけで理解してしまう。

 目の前にいる存在が、"何かを超越した高次の存在"である事に。


「あの子には、試練が必要なの」

「し、試練って……?」

「あの子……って、ご主人……神鵺様の事……?」

「そう。あの子は神になるの。その為の試練を与えたい」

「……神……」

「神へ至る、試練……」


 その言葉を聞いて、何を思ったのか。

 足立姉妹は、互いに無邪気な笑顔を向け合った。


「「神条 神鵺様に、もう一つ。神の名を」」

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