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Innocent Game  作者: Liar*
12/12

月。

ちと人が多いな....。

誰かにおしつけて放置してやろうと企んでいます。←


今回も、呼んで頂きありがとうございます。



「おはようございます、我が君。」

「おはよ、アルティ」

「さっきはごめんなさい。酷い事を....それに、勝手に精神の中に入っちゃったし。」

「....リューイ、ありがと。私、ホントに自分勝手で....ごめんね」



稚草がにこりと微笑めば、双子の女神も苦笑しながら彼女を見つめ返した


ぐるりと見渡すと、部屋自体にそんなに荒れた痕は残っていない

変わったのは、人数ぐらいだろう

王族の、特に権力(チカラ)を持った者たちと、その背後には鋭い眼光を放つ甲冑の男が5人

稚草が眠っていたベッド際には、3人の女官と7人の神官。

(ここにいるのは全員神様のはずなのに、この7人は何を祭り上げているのだろう?)


稚草がじっくりと観察していると、すぐ近くにいた女官の中で抜きん出て品の良さそうな女性が「失礼します。」と、汗で濡れた服を魔法で瞬時に着替えさせる


__清潔な服って、こんなに気持ちいいんだ。

くすぐったさと恥ずかしさに、顔を赤らめて俯きながらも素直にありがとうございます、と微笑めば、

女官は顔を赤らめて「そんな、当然の事ですわ」と言った











_____ぎゃああああああああああああああっ!!!!!!!!!



通常ならあり得ないくらいのほほんとした空間を、切り裂く赤い記憶

頭の中で(エコー)する、絶命する寸前の断末魔

そう、誰かが確実に、この場で命を落としてしまったはずなのだ

あの、銀の甲冑を着た大いなる代償(誰か)




「.....ねぇ、私の、愛しい女神達..。ここで亡くなってしまった、彼の人は、どこに?」


恐ろしさと、義務的な何かを感じながら、稚草はたどたどしく問う

怯えるような姿に、周りの者は同情の視線を向けた


「心配ありませんよ!」

「それは貴女様がこの世界から目を背けるきっかけを、自身の思い込みでつくったものですから。ただの幻想でしかありません。」

「___.....そう、」

「大丈夫ですよ、稚草様ぁ。それにここの騎士さん(・・)は凄く強いんです」


美しく気高い女神達は、少し微笑んで、彼女の肩に手を起き、背中をさすった

まるで、赤子をあやすような仕草。けれども、彼女を安心させるに十分な効果を発揮していた。

安堵の顔を見せた稚草に、女神は今度こそ麗艶な微笑みを見せた



________あれは、只の幻想だったの?それなら....よかった。

        ....誰かが、自分の為に死んでいなくて、良かった。






『はっ』



嘲るような微笑みが、稚草の目の前に迫っていた。

ほんの少しでも体が前に傾けば、唇と唇が重なってしまうという程、すぐ近くに猫は居た。

さっきまでは、甲冑の兵士の腕の中に捕われていたハズなのに。

これが、彼の特殊な能力というのだろうか、と再び1人思案する。



銃口を向けられ、......否、米神にグリリと押し当てられている状況で、よくもまぁとぼけた事を考える脳味噌だ

と、自分自身を褒めたくなる衝動に駆られた稚草は、その思いをなんとか耐えつつ、

今は心の中にそっとしまっておく事に留めた



猫が、痺れを切らした様に舌打ちをする

舐めるような吐息がゆっっくりと、稚草の耳に吹きかけられる

びくりと、稚草が肩を揺らした事に、アルティが怒気を包み隠さず放つが、猫はにんまりと笑っただけだった



『___あんたが麗しの愛子様って事...ね.。そりゃみんな、率先しておこぼれ頂こうと湧いてくるかぁー』

「お、こ....ぼれ?」

『あれー何ぃ?もっしかしてぇ、なーんにも知らないの?この娘!!』



言われた事に戸惑いを隠せずに目で皆を見たが、誰1人としてその視線を絡ませる事は無かった

いや、双子だけはちゃんと見つめ返してくれたが



『親切な僕が教えてあげるよ。この国の醜い事全て、ね.....。』

「チェイサー。」




よく知った低く澄んだ声が、部屋に染み渡る

咄嗟に飛び退く猫と、稚草が起き上がってその声の主に駆け寄るのは、ほぼ同時だった




ガンッガゥンッ!!!!!



銃声が響く

それは、猫.....多分、チェイサーという名のそれがぶちかました音では無かった

稚草はその胸に顔を埋め、すぐに顔を上げると、満面の笑みで声の主の名を呼んだ




「せんせぇ!!!!!」

「っせーよ馬鹿。それより、耳大丈夫か。結構な距離でかましたから、痛ぇだろ」

「ん、大丈夫。それより名前、簡単に教えちゃダメって何で言ってくれなかったの!!」

「面倒くせぇ。その話は長っったるいから後でな。」



先生(ノワール)が稚草の頭をぽんぽん、と叩けば、あっさりとそれに従う稚草

まるで家族のようなやりとりに、立っていた者たちが困惑していると、再びノワールが構えた



ガゥンッ!!!      キィイン!!!!






確実に心臓を狙った弾は、ノワールが打ち返した弾に当って粉々に砕けた

勿論ノワールの銃弾もだが。




「戯れるのも大概にしな、物語を失った猫(チェイサー)。」




ノワールが今までに無い殺気を放つ

それに呼応するように、持っていた大型の銃が変形し、やがては鋭い刃となった

淡く紫色のオーラに似たものが、じわりじわりと剣から溢れ出ている。

どういう仕組みかは全くもって理解しがたいが、きっとこの世界の魔法、という奴なのだろう。

と、稚草の小さな脳味噌は考える



ノワールの威嚇(売った喧嘩)に、チェイサーも殺る気満々で乗って来た

いささか皮肉めいた言い方なのは、彼の生来のものなのだろう。




『っはーん、あんたにゃぁ言われたくないね、混沌を呼ぶ悪鬼(ノワール)さ〜ん』


そして、彼の使用していた銃も、形状を変え始め、やがては棍棒のようになった

鋼のごとき輝きは、ノワールと同じく、溢れ出た赤いオーラによって覆われている







「や、やめんか2人とも!!!」

「そうですわよ、ここには愛子様もおわすのですし......」

「「「愛子様、こちらへ....。」」」

「「「「「「ひ、ひぃいいいいいいいい」」」」」」」




「『一々うるっせえんだよ、ハゲ!!!』」







見事にはもった事により、喧嘩の火ぶたは切って落とされた。




































「ねーぇー、グラ〜ス様ぁー。ねぇー、ねぇーってばぁ!」



甲高い、子供のような幼さを宿した声が響く

頭に痛い、耳障りな機会音を思わせるそれは、聞くもの全てが不快感を味わうだろう



「なんだ。」



それに返答した声は、落ち着いてはいる者の、さめざめとしていて、

まるで声帯から冷気が溢れ出ている様にも思える程、恐ろしげなものだった

子供の声は、嬉しそうに弾んだ



「妹君、何時迎えに行くのぉー?僕、早くみたいなぁー」


「機会が生まれたら。そして俺の妹をお前に見せる気は毛頭ない。」



ぴしゃりと言い放つ男。

そんな時、丁度いい頃合いに月が雲の合間から姿を現す


そこにいたのは、2人組のでこぼこコンビ



小さな方は、赤いクセッ毛をそよ風に揺らしながら、幼い顔に似つかない程座った目をする可愛らしい男の子。

瞳は深い深い森を思わせる翠緑で、尖った耳にじゃらじゃらとつけられた装飾品が目につく



対する大きなほうは、黒髪に金と、銀のオッドアイをもつ、こちらも文句無しの美しい顔立ちをした男だ。

ただ、乾ききったような瞳の奥に、何が揺れているのかは見当もつかない。



「ちぇーっ。つーめたいのー」


子供は、つまらない、と言った風に口を尖らせた



「少し黙れ。......アト、もうすぐだ....もうすぐで会えるんだよ、君に....」





先程と打って変わって、優しく、慈しむような声が、男から紡がれる

待ちわびた恋しい人でもいるのか、男は誰もいない夜空を見上げて、1人ほくそ笑んだ。


それを見て、赤い子供がにたりと笑った事など、雲に隠れてしまった月以外、








誰も知らない。



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