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思い込みは程々に―悪役令嬢とゲロイン呼ばわりされてしまったヒロイン  作者: 北森八雲


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1 ネイプルズ王国第23代聖女ローズ

30000字を超えてしまったので連載に。

最初に3話を投稿し、その後は1日ごとに毎日16時に投稿予定。

全11話、完結済みです。

 ローズはネイプルズ王国の聖女だ。


 ローズはの生みの親は誰かはわかっていない。彼女は赤子の頃に教会の前に捨てられており、彼女は教会併設の孤児院で育った。幸いその孤児院は穏やかなところであり、慎ましい暮らしではあったがローズは健やかに育った。そして8歳の時に聖女の資質が見いだされ、聖女としての修行を開始すると、めきめきとその才能を伸ばし、弱冠11歳で第23代聖女を襲名した。以来、王都の教会で聖女として活動しており、現在15歳である。


 ローズは多少身体が弱いこともあり、王都の教会から出てくることは少ないが、王都の教会に行けば彼女を見ることができる。

 週一回の礼拝の時には聖女として皆の前で祈りを捧げている。歴代聖女と同じであり、礼拝に参列すれば誰でも今代の聖女であるローズの姿が見られるのだ。礼拝のない日に教会に立ち寄った者は、奥の中庭でローズの姿を見ることがあるかもしれない。彼女は自ら中庭で花々を育て、咲いた花を摘んでは教会の各所に飾っている。おかげでローズが聖女になってからは教会が華やかになったと参拝者からは好評だ。特に彼女が花を育てている中庭は、年中色とりどりの花々が咲き誇っており、『聖女の花園』と呼ばれるようになった。


 ローズ自身も愛らしく美しい少女だと評判だ。さらさらと流れるような薄桃色の髪は春に咲く花のよう、明るい青色の瞳は曇りなく澄んだ秋空を思わせる。まなじりがやや下がり気味だが、それが儚さと愛らしさを倍加させている。肌は白く透き通り、汚れなき新雪のようだ。そんな美しい少女が色とりどりの花々が咲き乱れる庭で花を摘んでいる様は、巨匠が生み出した一枚の絵画のよう。運良くその姿を見られれば幸運が訪れるなどと囁かれるほどだ。


 ローズが若干身体が弱く、儚げな印象を漂わせていることもあり、今代の聖女は絵に描いたような理想の聖女様だと言われるようになるまでさほど時間はかからなかった。酒から神聖力を得ていると周りから揶揄されるどころか、本人もそう豪語して憚らなかった大酒飲みの第21代聖女、歴代最強の浄化能力を持つがその浄化能力で魔物を狩りその肉を食べることが趣味だといって、頻繁に狩りのために教会から脱走して関係者を困らせていた第22代聖女と、癖の強い聖女が続いていたこともあって、なおのことローズは誰もが思い描く理想の聖女として人々の目に映ったのである。ちなみに、癖の強い第21代聖女と第22代聖女はどちらも存命で、ローズが第23代聖女を襲名すると、これ幸いと今まで以上に好き放題しながら元気よく暮らしている。


 第23代聖女ローズの評判はネイプルズ王国の貴族たちにも広まっていた。そして王国有数の大貴族、フローレンス公爵の耳にも届いた。フローレンス公爵は独自に聖女ローズについて調べ上げた。今代の聖女がどのような人物か、どれほどの力を持っているかで、国の運営戦略が変わってくるからだ。聖女は悪しき外敵から国を守護し、湧き出る瘴気や魔物を浄化し、民が餓えや病に苦しむことなきよう祝福を与える存在だ。聖女の力が弱ければ相応の対策が必要となる。守護の力が弱ければ兵力による辺境の守りを強固にする必要があるし、浄化の力が弱ければ魔物討伐に向けて部隊や装備を強化する必要がある、祝福の力が弱ければ災害や飢饉への対策をよりいっそう万全にしなければならない。


 そしてフローレンス公爵が第23代聖女ローズに下した評価は

『非常に優秀』

 年若いながら国全体を覆う守護結界の維持は難なく熟しており、外からの脅威の心配はない。祝福の力は歴代5本の指に入るほどで、ローズが聖女に就任してからはどの領地も豊作が続き、その恵みを享受している。浄化の力については、もう少し見極めたいところではあるが、先日教会に運び込まれた悪魔付きの少女の浄化を無事成功させたとあるから、並以上の力はあると見ていい。強いて彼女の難点をあげるなら、身体がやや弱く、遠征に耐えられないことだが、王国は平和が続いており、聖女の遠征が要求される場面は少なくなっている。国内に出る並の魔物程度ならば訓練もかねて各地の騎士団に討伐させた方が良く、どうしても聖女の手が必要ならば今も国中を飛び回って魔物を狩っている先代聖女に依頼すればいい。聖女自身の人となりも花を愛する穏やかな少女といったもので、問題点は見つからなかった。


 これならば王国の平和と繁栄はまだまだ続きそうだ、とフローレンス公爵は結論づけ、絶対の安心とともに聖女ローズの調査を終了とした。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

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